京都SFフェスティバル2001 レポート

大野万紀


会場風景

 土曜の朝に家を出て10時40分ごろ会場の京都教育文化センターに到着。いつもより参加者が多いのか、会場が狭く感じる。
 さっそく「あの人は今」企画に参加。大阪市立大SF研の香月祥宏さんが司会で、加藤逸人さん、山岸真さん。香月さんのリストをもとに、ライブスキャナーという形式だ。最初に聞いた時の「あの人は今」とはだいぶ違っていたが、まあこの方が年寄り以外には面白いだろう。というわけでぼくはほとんど聞き役とちゃちゃ入れ役に終始。なお、香月さんのリストは労作だったが、近日中にWEB公開の予定とのこと(公開されました。こちら)。
 ファンジン売り場で「アンサンブル」最新号をゲット。古沢さんから「ReviewIKA」をいただく。本人は「糸納豆EXPRESS」を意識したというが、むしろ岡本俊弥「NOVA QUARTERLY」テイストを強く感じる。そういったらショック!といっていた。ロバーツ特集は素晴らしい。でもアニタは全部翻訳して本にした方がいいけどなあ。今ならハリポタ便乗で売れるかも!
 今年の京フェスは第20回。柴野拓美夫妻は初めての参加だそうだ。

堀晃さんと菊池誠さん 浅田稔さんと星野力さん

 昼一番の講演は、「SFのロボットはどこまで実現するか」。菊池誠さんの司会で、講演者は堀晃さん、筑波大名誉教授でSFの講義をしていたという星野力さん、大阪大学工学部教授の浅田稔さん。堀さんと星野さんはともかく、菊池さんと浅田さんはある種おなじ雰囲気があって(要するに大学教授らしくない)面白い。この講演は大変面白かった。堀さんが「ロボットSF」というより今は「ロボット小説」へと向かっていると現状を総括、星野さんが「記号着地」と「フレーム問題」に関してとてもわかりやすく説明され、「アトムよりガンダム」、「チューリングテストは疑えばわかるし、始めから疑ってなかったらわからない」ということで「本物かどうかなんて問うことをあきらめればよい」とまとめる。一方ロボットの専門家である浅田さんは、100ページあるパワーポイントからの抜粋として、ロボットの「心」の問題を中心に議論。「他者の内部状態を推定すること」の重要性を指摘される。記号にしても外から与えられるものではなく体験によって記号を創発しなければ理解に結びつかない、そこでは「自己の身体性」が重要とのお話。自己の外部には「自動エージェント」と「他動エージェント」があり、他者の理解はすなわち「他動エージェント」の理解であること。また研究の方法論として、人文系のようにブラックボックス化するのでも、生物系のようにマイクロスコピックになるのでもなく、そういう説明原理に対し工学系としては、作ってみて初めてわかるという設計原理による理解をめざすとする。いやあ、大変にSF心を刺激される講演だった。ロボットの知性を論ずるのはエーリアンとのファーストコンタクトと同じだとか、有名なロボットたちの裏話とか、他にも色々と面白い話がたくさん聞けた。

なぜか田中啓文な森奈津子さん 笹川さん、牧野さん、森さん(と実行委員長)

 次の森奈津子・牧野修対談は森奈津子さんが到着時間を1時間間違えるというハプニングがあり、田中啓文さんの飛び入りで牧野修さんとの雑談が盛り上がる。森さんがやっと到着し、司会の笹川さんも交えて、「バカとエロ」の話を(読者からの質問に答えるという形式で)繰り広げるというのだが、何かほのぼのとした雰囲気でやってはったなーという印象。聞いているぶんには面白くて爆笑ものだったけれど、特にレポートとして報告すべきことはないなあ。あなたにとってバカSFとはどういうものですか、どんな読者を想定していますか、という質問(だったかな?)に対して、牧野さんが「15歳くらいのすごく頭のいい美少女が、読み終わって一言「ばか」というようなものを目指している」というのが印象的だった。それってちょっとかっこいいかも。

大広間にて SFジェスチャークイズ回答者の面々 謎のジェスチャーをする人々

 さて今回は後合宿なので、本会が終わってからさわやへ(←さわやのホームページができているのだよ!)行くのだが、まだちょっと時間が早い。とりあえず水鏡子らと食事にいく。さわやへ戻ってみるともう大広間は人でいっぱい。やっぱりいつもより参加者が多いようだ。神戸大SF研も現役の若手が参加していたのでOBのおじさんたち喜ぶ。
 オープニングの後、SFクイズ。回答者として選ばれた人が、会場から指定された人数の人を選んでジェスチャーをしてもらい、当たった数で点をもらうというジェスチャークイズが面白かったけど、これが大変。ぼくも小浜くんらと11人で「万華鏡」をやった。かなり「ばか」だった。結局僅差で林さんが優勝。
 合宿企画は小林泰三さんの部屋を覗くが、ビデオの準備に手間取っている。でも何とか映画版「玩具修理者」(田中麗奈主演)の予告編や「ロケットガール」のパイロットフィルムを見ることができた。その後は結局古沢くんの酒飲み部屋で、うだうだと過ごしてしまう。水鏡子と三村美衣がいつものごとくえんえんと(ループしながら)論争を続けていた。佐脇たかやくん(小3)がハリー・ポッターを読んでいた。この部屋と大広間を行き来して、3時ごろには寝部屋を確保し、寝る。
 朝は大広間へ。SFサイトチャートというのが張り出されている。縦軸が主催者の年齢で、横軸が硬軟というよくわからない図だ。THATTAはなかったが、左上の方になるのかしら。しおしお委員長のエンディング(といっても忘れ物の案内くらいだけど)をちゃんと聞き、小浜くんや水鏡子、山本夫妻、岡本や佐脇一家、菊池一家と三条まで歩いてキャラバン・サライへ(いつものからふねやはいっぱいだった)。そこでまたうだうだ話をして10時すぎには解散。秋の京都を後にしたのだった。

小林泰三さんの「玩具修理者」を見る部屋 酒飲み部屋で水鏡子と三村美衣が激しく議論 折り紙をつくる人たち
20世紀SFについて語る山岸さんと水鏡子 深夜になっても大広間はこんな状態 SF系サイト分布図(クリックで大きく表示)

 今年もとても楽しい、充実した日が過ごせた。スタッフのみなさん、どうもありがとう。来年もよろしくね。

京都SFフェスティバル2001公式ページ
京都SFフェスティバル2000レポート (大野万紀) 岡本家記録とは別の話(Kyo-Fes篇) (岡本俊弥)
京都SFフェスティバル1999レポート (大野万紀) 岡本家記録とは別の話(京都SFフェスティバル篇) (岡本俊弥)


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