みだれめも
第277回
水鏡子
10月の購入冊数221冊。購入金額33,221円。クーポン使用11,300円。
なろう本61冊。コミック7冊、だぶりエラーと買い直し16冊。
新刊は10,339円。『SFマガジン12月号』『昭和39年の俺たち11月号』『いつかどこかにあった場所』『侵食列車』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか㉑』『ソード・オラトリア⑯』など。これにイアン・ワトスン『地球の鏡の中で』などファンジン3冊。『絶滅の牙』『ときときチャンネル②』の創元からの頂き本など。また堀晃さんからも「本の雑誌」最初期の号17冊を頂いた。多謝。
ファンジン購入は京フェス合宿で入手。ちなみに京フェス企画では、円城塔・十三不塔対談が圧巻。詳しくは大野万紀レポートを。そのまま本にしてしまえばいいのにとまで思った。
前年400冊越えが220冊まで激減したのは、なんのことはない京都知恩寺の古本市にいくのが11月にずれ込んだせい。
この月は大阪四天王寺と天満宮が何年振りかで同時期開催となった。ただ天満宮は社殿工事の関係で大幅に設置場所が縮小され、託送目的のひと箱分購入ができなかった。
それ以上に問題だったのは、期間がもろに京フェスと重なったこと。いろいろ考えた末、交通費の出費は増はあきらめて、前日金曜日に大阪往復、京フェス合宿後の日曜日は大阪で宿をとって再度四天王寺天満宮に行くスケジュールとなった。
大阪の宿は恵美須町のビジネスホテル。まんだらけやブックオフをうろうろする僕からすれば絶好の立地なのだが、万博最終日ということもあり、1泊4万円というお値段。株主優待券でぎりぎりタダ泊りになったものの、それがなければとても泊まれない値段である。京都知恩寺でも昨年2万円で泊まれた宿が今年は4万円に跳ね上がっており、こちらの宿の優待券は2万円しか使えないのでついに京都日帰りのスケジュールとなった。11月にずれ込んだ理由でもある。ちなみに夏に京都下賀茂神社の古本市に行くために優待券4万円で泊まった宿は、なんと一泊10万円になっていた。3冊500円を買いに行くのに10万円泊はないわなあ。
さてそのまんだらけであるが、以前にもぼやいたように活字本の陳列が激減している。もともと在庫の多いコミックはまだそれなりの棚は確保されて入りがそれでもコミックに詳しい人によると、いつ行っても同じ本しか並んでいないそうである。
まあ梅田のように完全撤去状態は論外として、日本橋の方はある種の在庫処分的側面が出てきているということで、買う側にとって悪い面ばかりではない。今回もすごい掘り出し物に出くわした。なんと3冊220円コーナーに状態難ありではあるがSFマガジン丸表紙が2冊あった。ほかにも状態の良いものが300円でみつかったけど、ダブり買いであるのでそちらはパスした。これに荒巻義男『メタSF全集①』宮崎淳『紅作戦を追え』と合わせたものが、2000円の株主優待券一枚で拾えてしまうのはすごい。
さてこの月最大の収穫は講談社『全集日本野鳥記』(全12巻)である。
3冊500円で合計2000円。講談社は『世界動物文学全集』(全30巻)『全集日本動物誌』(全15巻)を出しており、これでコンプリートになった。ほかにも『戸川幸夫動物文学全集』(全15巻)もあり、このジャンルについての講談社の頑張りはなかなかのもの。動物ものではほかに思索社が頑張っており、コンラート・ローレンツの諸作をはじめ、『日本動物記』(全4巻・光文社初刊)、『世界動物記シリーズ』(全23巻)などを刊行している。『世界動物記シリーズ』は全集でなく単行本扱いのためぽつりぽつりと半分くらい拾っている。残念なのは『世界動物文学全集』以外は全てノンフィクションであることで、『日本動物文学全集』が欲しいなあ。
レイ・ネイラー『絶滅の牙』は、ノヴェラで書くにはあまりに多くのものを詰め込みすぎて、意余って力足らず、分量足らずという評価だけど、書ききれなかったなりに光るものが随所にあり、もともとこの種の本を小中学時代百冊前後読んできた動物小説好きとして思いの強さに共感した。『世界動物文学全集』のなかにはロオマン・ギャリイ『自由の大地』という、乱獲されるアフリカ象を守ろうとしてどんどん行動が過激になっていく主人公の物語がある。中段を澁澤龍彦が訳しており、ゴンクール賞を受賞している。じつはまだ読んでいないのだけれども、『絶滅の牙』つながりで一度目を通しておきたいと改めて思った。
その他の収集物
300円の本が3冊。ノーベル書房『懐かしの大都映画』、YTVレポート『①テレビCM』『②アメリカのテレビ』。
残りはすべて単行本で220円以下。220円はブックオフで、古本市は100円乃至3冊500円がほとんど。
・SF関連及び小説類:『新世界遊撃隊』、『幻獣の密使』、『神器 軍艦橿原殺人事件上下』、『新装版 魔界転生 上下』、『新装版 柳生忍法帖 上下』ドイツ中世文学『司祭アーミス』、日野啓三『抱擁』など。風太郎の2作は『柳生十兵衛死す』に合わせるかたちで再刊されたハードカバー。『新世界遊撃隊』『幻獣の密使』は文庫で持っていたものの買い直し。
・美術・文芸評論系:ハンス・リヒター『ダダ』、富山太佳夫『テキストの記号論』、松田修『蔭の文化史』、『桃山江戸近代屏風逸品図録』、グラフィック社『アメリカンイラストレイターズ』など。
・自然科学系:八杉龍一『生命論と進化思想』、ジョナサン・ウエルズ『進化のイコン』、ローレンツ他『ヒトと動物』、H・ヘディガー『文明に囚われた動物たち』、C・パターソン『現代進化学入門』、渡辺久義 原田正『ダーヴィニズム150年の偽装』、フェイス・マックナルティ『滅びゆく野性のいのち』、スティーブン・J・グールド『八匹の子豚 上下』、中山茂『一戸直蔵』など。
・人文・社会科学系:デュルケム、モース『人類と論理』、ジョン・ホープ・フランクリン『人種と歴史』、R・L・ワイルダー『数学の文化人類学』、エルンスト・マッハ『認識の分析学』、フーコー『アルケオロジー宣言』、培風館『科学時代の哲学①②③』、野田又夫『哲学の三つの伝統』、東浩紀『弱いつながり』、藤沢令夫『実在と価値』、原島博、井口征士『感性情報学』、マリノフスキー『文科の科学的理論』、京都大学人類学研究会編『目で見る人類学』など。
・その他:みなもと太郎『漫画のセリフ』、野ばら社『日本のうた⑦⑧』、雑誌『HMM』8冊、『宝石』2冊『まんがアニメック』3冊『裏窓』1冊など。
『裏窓』は有名なアダルト雑誌。33年5月号で「妖異捕物特集号」となっている。200円では初めて見た。『まんがアニメック』は創刊号に和田慎二による『ジェニーの肖像』オマージュ短編が載っていたのでまとめ買い。帰ってチェックすると単行本未収録作品らしい。
毎度の愚痴になるけれど、こういう本が3冊500円で買えるというのに、ブックオフの廉価本の単行本390円文庫新書220円というのはどうなんだろうとほんとに思う。
なろう本からは紹介する意味のないかなりできのわるいものをいくつか読んだ。なかには書籍化にともない大幅にストーリーを変えたものがある。ライトノベルの定番と書籍のページ数に合わせた変更のように見え、作者の挑戦によるものか編集者の指導によるものかさだかではないが、あまりのひどさにWEBに続きを読みに行くと、可もなく不可もなくが、書籍において可がなく不可がある話に変わっていた。作者の自発性によるものならば仕方がないが、編集者の示唆が理由だとしたらレーベルへの信頼を大きく損なうものといえる。
それにしても書籍部分が出来の悪いものであっても、つい続きを読みに行ってしまうのは困ったことだと自分でも思う。追放系でざまあがないとか、一応のひきが気になり、たまに後続部分にあたりがでるのでやめられない。