みだれめも 第265回

水鏡子


○近況(10月)

 10月はイベント月。四天王寺、天満宮、知恩寺の、秋の三大古本市に今年は京フェス対面開催の復活が増えた。

 京フェスの前日10月11日には渡辺英樹氏とMUTANTS現代表梶田俊哉氏、名古屋ファンダム重鎮二人がうちの書庫を見学に来る。MUTANTS28号、大和眞也作品集を頂く。午後1時から6時まで5時間、飲まず食わず立ちっぱなしで駄弁り続ける。集める内容、並べる方法、コレクター系三人寄るとネタは尽きない。

 12日の京フェスでは、須賀しのぶ嵯峨景子対談でコバルトが電子書籍のみになったと聞いて驚く。『円城塔研究』他ファンジンを10冊買う。〆て10500円也。

 13日14日は大阪四天王寺の古本市。京フェスの帰路、宿を取ってダンボール二箱。全集系では『戸川幸夫動物文学全集』全15巻を揃いで。『第二期大航海時代叢書』を9冊。こちらは第一期、エクストラシリーズ合わせて残り8冊。『平凡社現代人の思想』(全22巻)を5冊買うが1冊がダブる。この全集はかなり先鋭的な編集で、最終巻『㉒機械と人間との共生』には「RUR」が収録されていたり、『⑦大衆の時代』ではジョージ・オーウェルの小文が4点収載されているが、そのうちの2つは「少年週刊誌」と「漫画論」だったりする。
 百円コーナーに竹本健治と山野浩一(創元版)の文庫本がひとつ10冊単位で大量に並ぶ。当然新品状態である。何なんだろうといぶかりつつ1冊づつ拾う。
 本の雑誌10号から40号までが3冊500円で並んでいる。50円100円でしか集めていないバックナンバーなのでかなり悩むがこのあたりの号がみつかるのはめったにないだろうしと3000円分購入する。しかしこれを入手すると創刊~10号の復刻版を買わなければならなくなるんだろうなあ。

 20日21日は大阪天満宮の古本市。例年の三分の二程度の出店で、先週同様、宿を取ったのだが初日でほぼ漁りつくした。角表紙期のスターログ3冊500円を7冊、大和書房『シリーズ夢の王国』を4冊、りぼん付録『一条ゆかり全集①③~⑥』、『漫画鏡』『漫画少年と赤本マンガ』『大阪漫画史』『まんがのカンヅメ』などを買う。

 31日1日は京都知恩寺。こちらも出店舗数が少し減っていて、宿を取ったのに二日目は午後から雨降り模様なのもあって散策放棄。実際帰り着くと大雨に変わっていた。3冊500円で箱なしだけど『ジンメル著作集③貨幣の哲学総合篇』を手に入れて一応コンプリートになった。その他拾い集めている叢書類では、新ちくま文学の森『②奇想天外⑦愛と憎しみ』、日本の文様『⑰青海波 格子』、17・18世紀大旅行記叢書『⑧南米諸王国紀行』、日本史小百科『⑨遊女⑮学校』、世界動物記『⑩野キツネ』、中村雄二郎著作集『⑥パトス論』など。最後のものは新刊でまとめ買いしたときこの巻だけ版元在庫切れになっていたもの。170円で拾えることに少し憮然たる思いがある。同様に新刊でまとめ買いした『金子光晴全集』もわりと3冊500円でよく見かける。今回も見かけた。

 10月の購入数409冊。購入金額69,976円。クーポン使用14,000円。
 なろう本84冊。コミック39冊、だぶりエラーと買い直し33冊。
 クーポンと合わせると80,000円越えである。ファンジンを含めて新刊本が22,754円と大幅増であるのと、まんだらけのクーポン10,000円分を無理に消化したことも大きい。まんだらけクーポンの買った主なところは国枝史郎『伝奇風俗怪奇小説集成』、野口雨情『名作童謡100選』、理不尽な孫の手『無職転生蛇足篇⓶』など。それを除くと、今回買ったものは3冊500円とか4冊1000円とか300円以下のものばかり。(なろう本については、半額クーポンを使って400円~600円のものを買っている)
 とりあえず、いつものように拾った中で前掲以外の気になる本を羅列する。単行本サイズのみ。トータル10000円弱である。

◆SF系・科学論系
小松左京『地球を考える①』、ミチオ・カク『サイエンス・インポッシブル』、「パラドックス」傑作選『SFスナイパー』、荒俣宏『奇想の20世紀』、『十二国記30周年記念ガイド』、馬場伸彦編『ロボットの文化誌』、『中国古代科学技術展覧』、高柳俊一『ユートピアと都市』他
◆文学論系
 北上次郎『情痴小説の研究』『面白本ベスト100』、新保博久『世紀末日本推理小説事情』、私市保彦『幻想物語の文法』、ボワデッフル『小説は何処へ』、尾形敏彦『詩人E・A・ポー』、鈴木健一編『千年の百冊』他
◆小説
ル・クレジオ(1)、ジャネット・ウィンターソン(1)、野坂昭如(3)、三枝和子(5)、西尾維新(4)、日野啓三(2)、金井美恵子(1)、山澤晴雄(1)他。
◆自然科学系
マーカス・デュ・ソートイ『数字の国のミステリー』、マリアン・ドーキンス『動物行動学再考』、ピエール・ガスカール『人間と動物』、スティーブン・ローズ&リサ・アビナネン編『科学と限界』他
◆人文社会科学系
樺山紘一『ゴシック世界の思想像』、エリアーデ『イメージとシンボル』、小松和彦『鬼の玉手箱』、日本思想体系『⑱おもろそうし』、梅原猛編『戦後日本思想体系③ニヒリズム』他
◆その他
小林弘忠『「金の船」ものがたり』、澁沢英雄『明治の読本』、副田義也
『現代歌謡の社会学』、『小沢昭一的流行歌昭和のころ』、ギュスターヴ・ドレ『神曲』、三浦修『囲碁の美学』、アルスカメラ臨時増刊『アメリカヌード写真集』、滝平二郎『きりえ画集②③④』他

 新刊書店で値段を見ずに文庫本を3冊レジに持って行って5,000円が飛んだのには少し驚く。ブックオフの文庫220円引き上げに怒るのは間違いかもしれない。

 株主優待で東京のホテルに無料で泊れたサムティ・ホールディングスがTOBで優待廃止になった。10年以上お世話になって東京旅行の拠点となっていただけに来年以降の旅行計画に支障をきたしている。京都大阪なら他の会社の株主優待で何とかなるが、東京方面は5000円引きくらいのものしかない。SFセミナーのあるゴールデンウィークなど単価が跳ね上がる。これまでみたいに3泊4日の古本屋古本市巡りを楽しむお大尽旅行は出来なくなる。大変である。

○WEB系読書

 総裁選、大統領選、年末に向けたSF読みといろいろかまけて、web読みが少し減速中。
 1作目の評判が良くて2作目が出版される作品がいくつもあって、そんなところを読んでいる。

 例えば小鳥屋エム『小鳥ライダーは都会で暮らしたい』、じゃがバター『プライベートダンジョン』、浅葱『準備万端異世界トリップ~森にいたイタチと一緒に旅しよう!~』、笠鳴小雨『特級探索師への覚醒 ~蜥蜴の尻尾切りに遭った少年は、地獄の王と成り無双する~』など。一応どれも途中放棄せず最終更新まで読んでいる。

 作家としては4作目あたりが一つの節目のように思える。自分の書きたかったものというより自活の手段として売れるもの受けるものへと、マーケティングした(つもりの)読み手に合わせたテンションに欠ける粗製乱造気味の量産品にシフトしていく。

 判断基準として、チートは歓迎するがハーレムを多用されると作品の出来が落ちて、ラノベ本の愚作に寄っていくように思える。多作で比較的安定しているのは発表当初からチーレム傾向の強かったY・Aほか数人にとどまるように思える。


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