およそ10か月ぶりに書きました。年齢相応とはいっても、つい面倒になってしまうのは困ったところ。
さて木下さんはめでたく星新一賞を受賞されました、おめでとうございます。日々の精進が実ったものでしょう。とにかく書き続けるのが吉ですよ。木口さんも定年退官お疲れさまでした。これからは創作が心行くまでできますね。といっても、生活ペースの変化に慣れるまでが大変でしょうけど。
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さて、今回は書籍のデジタル化について書いてみます。中野善夫さんは毎年千冊だったか(1万冊?)のペースで、蔵書の電書化を進めているとのこと、私も細々ながら電書化を続けています。ただ、長年A4サイズまでのラインセンサ型スキャナしか持っていなかったので、読み取りできない本が出てくると停滞しました。ぎりぎりA4であっても、対象の本(雑誌)は変形サイズが多い。ノド(綴じしろ側)一杯まで図表とかイラスト、場合によっては文字まで入るとどうしても切れてしまいます。裁断が難しいのですね。ようやく、A3が扱えるエリアセンサ型(要するにカメラ)のスキャナを入手したことで、当面の障害はなくなりました。これがあると、中綴じ無線綴じを問わず本を非破壊で読み取れます。最新のスキャナは湾曲したページであっても、距離センサを使ってソフト補正をしてくれます。昔のコピー機だと、分厚い本をスキャンしたときにキワの文字が歪んだりしましたが、それを修正してくれるわけです。美術書ではないので、絵や写真の類に多少歪みが残っても文字が読めれば問題ないでしょう。
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なぜ電書化を進めるのかには、いくつかの理由があります。1つは、当然ながら場所の問題。水鏡子のような収容量10万冊の古本御殿であってもいつかは満杯になります。ふつうの住宅だと、その十分の一でも入らないでしょう。
2つ目は本の劣化の問題。本は丁寧に保管していても、次第に傷んでいきます。一般家庭の本棚で、温度や湿度管理をされていることはまずないので、紙の酸化は避けがたい(茶色に焼けたようになる)。日射や蛍光灯に含まれる紫外線による色あせ、変色もあります(近年のLEDならば紫外線は出ません)。また、70年代以前の本だと製本用の針金がさび付いていて、見えないところから本を傷めていきます。
3つ目は本の死蔵化。残りの方が少ない(人による)人生で、棚の奥にあったり平積みされた下の方の本などは、たぶん二度と(一度も?)読まれることはないでしょう。生かされないということは、文字通り死んでいるわけです。考えてみると、出版業界を成り立たせている本とは、そういうストック本なのかもしれません。世の中の本が(読んだだけ払う)サブスク型になると、出版社の売り上げは大きく減るでしょうね(音楽業界で起こった現象)。
昨年の暮れにLOCUSとSTARLOGなどの大判の雑誌をスキャンしました。これらは非破壊型のスキャンです。LOCUSは1975年から10年前まで(以降、電子版しか買っていない)、STARLOGは前世紀の旧版(ツルモトルーム版)です。それだけで総重量80キロ(中綴じ本でも紙は重い)にもなって、立てられないため棚を占有していました。非破壊スキャン後、オークションにでもと思いましたが、ウォッチ数(入札通知を登録した数)を見ても売れる気配がありません。SFを扱う神保町古書店の買取価格も、一冊あたり20~30円くらいと低迷。貴重と思っても、洋古書の金銭的価値はこの程度のものです。
引き続き、イベント関係。古くは1975年のSHINCONから1995年のDAICON5が多く(関係者だったから)、参加だけでも三鈷寺のSFフェスティバルとか、COSMICONとかHINCON、ASHINOCON、TOKON6-8、DAICON3ー4、DAINACON、はまなこんやはまこん、コクラノミコンなんてのも。京フェス、星群祭、セミナー他にもいろいろの資料や、ファンジンも古くは同志社SF研のSF奇譚、谷甲州の手書きジンとかネオヌル、筒井倶楽部とか、北西航路に風の翼、新少年とか、てんぷら★さんらいず(歌ではありません)とかも。あとNOVA EXPRESS/MonthlyやNOVAQ、THATTA本誌、THATTA文庫、オービット、劣化の進む神戸大SF研の会誌すべてとSF研のノートまでをスキャン。ファンジンはずいぶん処分してしまったため、それほどありませんが、それでもLサイズ段ボール2箱分くらい残っていました。持っているのは、主に70年代から90年にかかるくらいまでです。
引き続いてプロ出版です。このミス、読みたい!のようなデータ本は電子化してこそ役に立つので優先的にスキャン。古いデータ本、石原データベースもすべてスキャンしました。『SF図書解説総目録』は私が持っている中ではもっとも高価な本の1つなのですが、ためらわずスキャン(当時の価格が4.9万円)。特に古いバージョンの劣化が進んでいるのです。ちなみに、電子版も持っています。PDFなんてない時代なのでこれはCSV形式の文字のみでした(PC9801用3.5型フロッピーで出たバージョン、これもふつうの環境ではもう読めません)。前世紀はいろんな雑誌が消長しました。NW-SF、(旧)幻想と怪奇、SFイムズ、ショートショートランド、SFの本、SFワールド、BALOON、SF Eyeもありましたね。多くはオイルショックによる紙の高騰か、バブル初期に(株と不動産にお金が偏在したため)終刊しています。ユリイカや國文學までSF特集があり、一冊まとめて特集する号もありました。最近だと分野や作家に絞った特集ですが、当時はSFとは何かから始めるので幅が広くなります。都会の流行を伝えるPOPEYEのSF特集、ちょっといかがわしいMAZARとかも。パソコン雑誌にもSF作家が登場、そういったところをまとめてスキャン。段ボール6箱分くらいにはなるか。まだSFマガジンやSFアドベンチャー、奇想天外など数のあるものには手が付けられていません。これからの楽しみです。
いや、本とは手触りだフォントだ重みだ匂いだ目の前に存在することだ、とおっしゃる。でも、そういう価値を持つ工芸品のような本はごく少数でしょう。量産型の紙と一般的なフォント、規格化されたサイズ、何より劣化/老化していく。それよりデジタル化ですよ、永遠の若さを保つのです。何だか、肉体を失ってデジタル化されても人なのかという、意識アップロード問題みたいですね。デジタル化すれば、自分の死後の心配(処分問題)もありません。死んだら消せばよい、一瞬です。死んだ後のことなど知るものか、などと無責任なことをいう人も多いけど。
電書化すると本はいつでも取り出せます。最近のクラウドやSSD(ディスク)の容量を考えると、すべての本を電書化して持ち歩くことも可能でしょう。全文テキスト化は(手間がかかるので)難しいが、表題で検索をかけるくらいならできます。売られている電子書籍と違って、どこにでも移動でき、自由に分類できるのがメリットでしょう。これにより、埋もれていた本を見つけやすくできます。ファイルの整理は苦手だという人でも、雑に入れておいて、検索を全ディスクにかけることで探し出せます。昔のように日が暮れるほどの時間はかかりません。念のためですが、これは私的コピーであり、他者にお分けはいたしません(そりゃそうですね)。
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