第61回日本SF大会 Sci-con レポート

大野万紀


 ※このレポートは個人的なメモを元に記載していますので、不正確な場合があります。誤りや不適切な記述があれば訂正しますので、ご連絡ください。

浦和コミュニティセンター ディーラーズルーム

 今年の日本SF大会は埼玉県さいたま市浦和区で、8月5日(土)と6日(日)に開催された、「Sci-con2023」である。
 会場は浦和駅からすぐの浦和コミュニティセンター。その9階と10階を使った、比較的こじんまりした都市型大会だ。
 昼過ぎに到着し、さっそく9階のディーラーズルームへ。
 YOUCHANさんに挨拶。HAL-CONブックスでクリストファー・プリースト『落ち逝く』を買う。「宇宙気流」で森下さんに挨拶。青井美香さんから『SFファンジン2023年8月号』を買う。ぶ厚い。
 鍛冶靖子さんと会う。アシモフが星雲賞を受賞したのでその金メダルを下げていた。でもどうやって故アシモフに渡すのかと悩んでおられた。そりゃそうだ。
 Sci-Fireのブースでは甘木零さんに挨拶。ツイッターでぼくがSci-Fireを宣伝してからいきなり売上げが伸びたとお礼を言われる。さすが関東でのSF大会、色々な人の顔を見る。
 イマジニアのブースでは宮本英雄さんに挨拶。津田さんが載っていると「イマジニア14号」を買う。

 10階は企画エリア。最初に行った企画は「海外SF文学賞 中短編候補を語る」のパネル。

  もう昼の2時過ぎたから終わっていると思った東京創元社の石亀航さんと作家の勝山海百合さんのパネル、まだ後8分あるということで中に入る。岡和田晃さんがPCでスクリーンに関連資料を検索しては表示していた。今やっているのはシャーリー・ジャクスン賞の話のようだった。
 石亀さんによれば、スザンヌ・パルマーのThe Sadness Boxという、自分で自分のスイッチを切るだけのAIの話があって、最後はいい話で終わるとか。
 勝山さんによるとついに日本人(Ogawa Yukimi)が英語で書いた小説がシャーリイ・ジャクスン賞を取るかも知れない(取ったらいいな)とか。翻訳であればすでに取っている人もいるけれど創作では初めて。
 石亀さんはそのシャーリイ・ジャクスン賞では受賞作のキム・スーが面白かったと言う。全部会話で描かれ、どんなファンタジーもVRで実現できるという話だが、まるで漫才みたい。でもラストはちょっといい話になるとのこと。
 こんな調子で初めから聞いていればすごく面白かっただろうと思うったが、最後の8分だけでも面白く興味津々だった。
 石亀さんの紹介する話は、もしかするとラストはみんなちょっといい話になるのだろうか。

 次に行ったのは、「日本SF作家クラブ(SFWJ)60周年・出版・創作環境」パネル。

 この企画の公開範囲は「テキストのみ可」とのことなので、写真はありません。
 パネラーは粕谷知世、櫻木みわ、十三不塔、藍銅ツバメ、揚羽はなの各氏。作家クラブの現会長大澤さんが挨拶。作品と作者の属性をなるべく結びつけないように、男性・女性をあまり意識しないようにと話す。
 パネラーの自己紹介。揚羽さんは2019年の星新一賞でデビュー。藍銅さんは2021年の日本ファンタジーノベル大賞受賞者。十三不塔さんは2020年第8回ハヤカワSFコンテストで優秀賞を取りデビュー。櫻木さんはゲンロンの第1期生だが編集者に注目され、いきなり『美しい繭』でデビュー。粕谷さんはこの中では一番年上で第13回(2001年)の日本ファンタジーノベル大賞受賞者。
 粕谷さんが言うには、デビューしたころはSF系の賞がなかったので、ファンタジーノベル大賞が、SFやファンタジーの受け口となる賞だったとのこと。櫻木さんはゲンロンの第1期生だったが、そこから急に本が出ることになってびっくりした。十三不塔さんはもともと純文学指向で、24歳の時に群像で新人賞を取った。でもその後が続かず10年以上小説から離れていた。それまでは純文学ばかりだったが、エンタメ系を読みだして、改めてSFを書きたいと思い、カクヨムに色々と書くようになった。藍銅さんもファンタジーノベル大賞の前にはゲンロンの第4期に入って書いていた。
 揚羽さんによると、集英社の小説すばるの編集者がゲンロンの作家に注目していると言う。〈小説すばる〉にはゲンロンをはじめ、SFの若い人がよく載っている。
 VG+の井上彼方さんが取材のためカメラをもって入っていたが、短編小説を掲載する場がもっと必要だと藤井太洋さんに言われたとのこと。
 昔との大きな違いは、今はネット出版があって、短編でも世に出せる。昔は入賞したら次回作は長編を書かないといけない(本が出ない)プレッシャーがあった。今はSF作家クラブのアンソロジーがあり、SFプロトタイピングもある。〈Sci-Fire〉などの同人誌をみんなで作るという動きもある。
 会場にいた門田充宏さんも入って、「さなこん」の話。応募が50通くらい来るかと思ったら1000通超えて死ぬかと思った。初めて小説を書くような人を何とかしたいという思い。でもほとんどは1次で落ちるのだが、それでもコメントをしっかり書いて伝えたい。粕谷さん、昔は読者のコメントをハガキでもらった。ありがたかった。さなこんは審査コメントもネットでみんなが読めるようになっているので、審査員自身も試されている。
 SFプロトタイピングの話。櫻木さんはある企業の社員に未来はどうなるかというワークショップで小説を書いてもらった。企業で自分の知らない話を聞くのが面白い。十三さんは、ある自治体が自殺を考えている人への予防対策としてAIがカウンセラーになれないかやってみようとしているが、それにまつわる小説を書いているとのこと。
 昔のように部屋に一人閉じこもって小説を書くだけでなく(それもアリだけど)、若い人たちが様々なネットワークを作って互いに切磋琢磨しているのが大変たのもしかった。

 次に飯田一史さんの「ネット小説とSFのこれまでとこれから 〜メディア・ビジネスモデル・ファンダム」へ。


 これは「パソコン通信時代からのオンライン小説とSFとの関わりの歴史、ウェブ小説と紙の出版の関係の変遷を、主に日本の事例を中心に、メディア、ビジネスモデル、ファンダムという視点から飯田一史さんに語っていただきます」という企画で、もちろん水鏡子も最前列に座っていた。その隣には三村美衣の姿も。
 この企画の公開範囲は「すべて不可」ということなので、写真はもちろん詳しい内容も書くわけにはいかないのだろうが、概要だけでもレポートしておく。
 飯田さんの講演は、統計資料などをもとに、日本のネット空間における小説の変遷を、作品内容よりもマーケティングを中心に、それがどのように発展したか、そして既存の出版社がいかに失敗してきたかを示すものだった。さらにアメリカや中国、韓国の状況も含め、今の日本でプロパーSF(なろう系を代表とするWEB小説以外の、早川や創元などのSF)が、WEB上で存在感に欠けること(早川にしろ創元にしろサイトのSEOが不十分で、検索しても欲しいものが上位に出てこないなど)を指摘する。
 過去、パソコン通信の時代からプロパーSFにも(『朝のガスパール』など)積極的な動きがあった。だが継続性がなく、新しいもの好きというだけに終わっていた。SFというジャンルの価値観――その道の目利きが読んで評価したものが素人の書きっぱなしの作品より優れた物だ――が強く、広く一般読者からの投稿を受け付けるという投稿プラットフォームの成功は、その自己否定につながってしまう。量より質で、売れるかどうかよりジャンル的な価値の方を優先してしまうのだ。またタダで見せてしまうことへの忌避感がある。
 アメリカや中国、韓国も同じ問題を抱えていたが様々な取り組みで改善している。日本は危機感が足りない。作品の問題ではなくしくみの問題。
 どうするべきかの提言もある。これはここで公開していいかどうかわからないので、飯田さんのサイトを参照してください。ただ、中でもSFコミュニティの価値観を堅持したまま市場規模を維持・拡大するには、SFファンを増やすしくみが必要で、それには新作の宣伝以上にSFに関する体系的な解説や歴史,ガイドがウェブに必要。また小中学生市場への参入が重要だという指摘はぼくが思っていたことでもあり、なかなか面白く、参考になった。ただ分析には全面的に同意するが、提言には若干の疑問もある。
 その後の質疑応答で、ぼくは素晴らしい提言ではあるけれど、それはどこへ向けてのものなのか、今の日本でも若手は様々なWEBを活性化させる活動をしている(VG+、ゲンロンWEB、さなこん、などなど)が、これをどう思うかと質問した。時間がなかったこともあり、答えはそうですね、がんばって欲しいということだった。マーケティング的な視点で言えばまだまだマイナーなものだから、結果が出るのはこれからということかも知れない。
 それよりも驚いたのは水鏡子の発言だった。今は浸透と拡散でどこにでもSFがある状態であり、(飯田さんの提言のような)あえてSFを持ち上げるような活動は必要ないと言うのだ。後で三村美衣とも話をしたが、水鏡子はすっかり自己充足してしまっているので、もう「SF」(ジャンルとしてのSF)はどうでもいいのかも知れない。『日本沈没』の「何もせんでもええ」という老人の心境に達しているのかも。それはそれでもいいけれど、WEB小説に造詣が深く、かつSFのエラい人と思われている水鏡子の発言としては誤解を招くんじゃないかと思った。

次の企画「日経「星新一賞」の部屋」も情報公開範囲が「すべて不可」なので、概略のみ。

 パネラーは揚羽はな、菊池誠、関元聡、安野貴博、津久井五月、松樹凛、葦沢かもめの各氏。甘木零さんと鵜川龍史さんが司会。会場には星マリナさん、日経の滝順一さん、それに井上雅彦さんもいた。
 各氏が小説を書き始めたきっかけについて、また星新一賞やハヤカワSFコンテストの受賞歴などが話され、なぜ星新一賞に応募したかという話になった。
 そこで、審査員にSFプロパーではないがその道では有名な人(『ゾウの時間 ネズミの時間』の本川達雄さんやゲームデザイナーの小島秀夫さん)がいたことを上げたのが津久井さん。安野さんは研究室のボス(アンドロイド研究の石黒浩さん)が審査員をしていたから。大好きな藤井太洋さんが審査員をしていたのでと言うのは揚羽さん。通勤電車で広告を見てと言うのが関本さん。葦沢さんはAIが書いたものでもOKというところに惹かれ、100編書かせて応募したら怒られたとか。「理系文学」を標榜している賞であることを上げたのが菊池さんだった。菊池さんはSFというより理系小説を書こうとしたと言う。
 そこから「理系文学」というものをどう思うかという話に。壇上の人は多くが理系の出身、あるいは理系の仕事をしているという人だった。
 工学部で建築を学んだという津久井さんは、建築は理系的思考と文系的思考の両方をするので近いと思う。理系文学というどこかミスマッチな言葉に惹かれたとのこと。揚羽さんは理系文学という言葉にそれほど惹かれることはなかったが、臨床技師の仕事をしていたので何をやっても理系になると。関本さんは植物学をやっていて、野外調査が大変なので、それをテクノロジーでやればどうなるか考えたと話す。
 他にも、星新一賞の長さ制限(1万字以下)がどうして決まったかという話や、審査の話など、大変興味深い話があった。

 1日目の企画はこれで終わり。ホテルに泊まって、2日目の企画へ。

 最初に行ったのは、「赤井孝美の「DAICON W40周年」と「日本沈没の逆襲」」パネル。

 初めは日本SF作家クラブの企画に行こうかとも思ったが、ちょっと変わったものをと、「DAICON IV 40周年」の企画に行く。パネラーは赤井さんの他、武田康廣、山賀博之、小松多聞の各氏。
 第一部が「DAICON IV 40周年」だが、話はDAICON Vから始まる。武田さん、山賀さん、赤井さんの話がとにかく面白い。「詳しくは『アオイホノオ』を参照」としきりに言っていたが、いやまあ三人の皆を面白がらせようというプロ意識に脱帽だ。
 まずはDAICON V当時の、学生時代の話。武田さんや岡田さんがわりあい裕福なのに対して、赤井さんや山賀さんは貧乏学生だったという生活水準の違いの話。オープニング・アニメの参考に、本物のバニーガールを見に行った話。ダイコンアニメのバニー少女、最初は赤井さんが描いた「バニーガールの格好をしたエレキングの少女」だった。その落書きを見て、山賀さんがもっと普通にバニーガールの少女にしたのが、ダイコンIVのアニメなのだそうだ。
 80年の終わりか81年の初めに、京都のソラリスで武田さんは山賀さんらと庵野秀明さんに会う。庵野さんが計算用紙にその場でパワードスーツを書いてパラパラマンガで動かしたのにびっくりした(山賀さんによれば、数枚描いてループさせただけだったが、そのパワードスーツがスタジオぬえの宮武一貴みたいな複雑なものだったので、あれが動くかと衝撃だったとのこと)。
 大阪芸大のSF研で、山賀さんらが庵野さんにオープニングアニメを作ろうと言い、庵野さんはそんなの無理と言っていたが何とか説得する。
 DAICONVの後、山賀さんは食っていくことに執着する自分として、アニメ業界への就職をターゲットに考える。スタジオぬえがマクロスを作るので庵野さんと赤井さんに声をかけたとき、呼ばれていないのに山賀も行きますと声を上げて東京へついていった。絵が描けないのでウロウロしているといつの間にか脚本を任された。20歳で脚本を書いた。
 ダイコンVのアニメは素人の学生アニメだったが、ダイコンWのアニメはそうやって力をつけたメンバーによる、山賀さんが中心にプロデュースしたプロ仕様のアニメ。資材も本格的なものをそろえた。お金は武田さんが出してくれた。山賀さんは自分の将来のための布石としてダイコンを利用しようとしたのだ。

 第二部は小松多聞さんを加え、赤井さんが考えるアドベンチャーゲーム版「日本沈没」の話。途中、PCの調子が悪くなって資料が表示できないトラブルがあったが、話だけでも面白かった。
 今年は日本沈没50周年。これは日本列島を美少女化現象が襲う物語だ。日本人とは何か?それはオタクであること。だが文明開化で一神教のマッチョな文化が強制され、脱オタク化が進んだ。戦後はそこから富国強兵は消えたが、オタクはいかんということのみが残った。ハラリの『サピエンス全史』ではホモ・サピエンスはフィクションを信じる者と言っている。つまりオタクであるというのに。
 MOE(Moment Of Earth)物質とはマントルの沈み込みで少しずつ地上に出てくるオタク物質。プレート境界が4つも重なっている日本列島では地球上最もMOE物質の流出が多い。それが日本人がオタク民族である由来である。それをわだつみで田所博士と調査に行った小野寺。ところがMOE物質を浴びて美少女になってしまう。田所博士は行方不明に。MOE物質は機械にも作用してわだつみは12歳の黒髪美少女になる……。といったお話になるのだそうだ。良くわからないけど、何だかすごそう。
 なおタイトルは「日本沈没ですよ」とした。「日本沈没の逆襲」は画数が最悪だとわかったからとのこと。

 最後に行った企画は、SFファン交流会8月企画で、「SF入門書で「SF再入門」」

 牧眞司さん、池澤春菜さん、冬木糸一さんがSF入門を語るという企画だが、池澤さんが来ていない。何と電車を乗り間違えて桶川まで行ってしまい、戻りの電車も本数が少なくいつ来るかわからないという状況。はたしてSF大会にたどり着けるのかというハラハラドキドキの展開となった。
 牧眞司さんのSF入門書の歴史は、たくさんの入門書・ガイドブック・エッセイを画像で表示しながら、小学校のころからの自分のSF歴を語りつつ、〈ボーイズライフ〉の付録まで出てきて(ぼくも持ってます)、以下のような話題が延々と続く。
 入門書にはジャンル横断的なもの、ブックガイド的なもの、エッセイ的、評論的なものがある。入門書からではなく、巻末解説とか、SFに入るルートは色々ある。福島正実の『SF入門』が1965年。中学生のころ本屋に取り寄せてもらって読んだ。小学校にあったのが講談社の世界科学名作全集。巻末解説をSFマガジン編集長が書いていて、SFという言葉を知った。
 福島正実の『SF入門』はSFマガジンの原稿を寄せ集めたもので統一はとれていない。福島はSFとは何かを強調する。彼が仮想敵としたのは1つは権威的な純文学論者、もう1つがSFマニアだった。SFはまず小説であり、洗練された大人の読者が知的な刺激を受ける小説であるとする。『SFの世界』(福島正実)は1971年三省堂から。新版が76年に出ている。SFをテーマ別に解説しているが、今思うと、それはテーマじゃなく小道具だ。グレッグ・イーガンとE・E・スミスを同じ宇宙テーマとしてくくることはできないだろう。
 ぼくにとって石川喬司、野田昌宏が福島さんと並ぶSFジャンルのビッグ3だった。野田さんのおかげで日本ではスペース・オペラに良いものというイメージがついた。アメリカでは(今は違うが)悪いイメージしかなかった。なお、レンズマンはアメリカでは本格SFとして読まれているが、日本ではスペース・オペラとして紹介された。
 筒井康隆『SF教室』(1971)は子ども向きだが、その中で伊藤典夫さんはバラードやオールディスを紹介している。2008年のちくまライブラリーのSF入門本が(今年、冬木さんと池澤さんの2冊が出るまで)最後の入門書だった。総解説本は出ているが入門書がない。ハヤカワの『新SFハンドブック』はロングセラーになっていたが2015年の海外SFハンドブックが最後。ネットから情報を得るようになったせいかも。
 牧さんの話をいったん中断して冬木さんのSF入門の話に切り替えたところに池澤さんが到着。電車が思ったより早く来て間に合ったのだ。そこで冬木さんと池澤さんが今年出した入門書の話へ。とりわけ冬木さんの『SF超入門』はビジネスパーソンをターゲットにしたもので、アプローチの仕方が違い、興味深いものだった。
 冬木さんいわく、最近の日本SFの歴史については一切書いたものがない。そこで歴史を7万字書いたが、ビジネスパーソンにはいらないとボツになったとのこと。それも読んでみたいな。
 池澤さんの『現代SF小説ガイドブック』は以前に韓国文学ガイドブックを出したところから声がかかった。作家を50人選んで、若い人を集めて書いてもらったが、バラバラにならないようクオリティコントロールのルールを決め、それをベースにしてもらった。またベテランにコラムを頼んだ。一番しんどかったのは50人を選ぶところ。
 早川の井出さんが飛び入りし、ぼくはコレですと、宝島社の『世紀末SFキッズのためのSF入門』を見せる。大学生のころに読んで、当時35歳の大野万紀や水鏡子(鳥居定夫)の文章にしびれたとのこと。
 本の紹介をどこまでするかという話もあり、〈世界のSF総解説〉はしっかりオチまで書いていて、それで星新一が怒ったという逸話がある。
 聞いていて思ったのは、きのうの飯田一史さんの企画もそうだが、子どもや少年少女向けのプロパーSFへの動線となる入門書というか、そんなきっかけとなるアプローチが必要だなということ。ぼくらが小学校の図書館で世界科学名作全集の巻末解説からSFを知ったように、今の子どもたちはジャンルとしてのSFにどこから入って行くのだろう。やはりネット(ユーチューバーとか投稿サイトとか)からなのだろうか。水鏡子が言うように、プロパーかどうかはともかくこれだけ世間にSFが溢れている中で、そんなものはいらぬおせっかいで必要がないのかも知れない。でもジャンルの歴史や過去の名作を知って深く読み進んでいくきっかけをつくることは必要だし、そうやって自分の好きな物を見つけ、そこに過剰にとらわれない視野を持ちつつも、深みにはまっていくことはとても楽しいことなのだと思う。
 次回、9月のSFファン交流会はレイ・ブラッドベリがテーマ。中村融さん他を呼んで、9月16日(土)にzoomでオンライン開催の予定。

 閉会式は各賞の発表。ただし、時間が他の企画と重なっているのでぼくが見たのは最後の方だけだった。暗黒星雲賞の写真だけ載せておく。またまた会場のとても混雑するエレベーターが受賞していた。
 次回のSF大会は長野のやねこんだが、再来年は東京で、「鉄腕ダッシュ」でもやっている東京富士大学の構内で開催する予定なのだそうだ。

 2023年第54回星雲賞は以下の通り。

 いつものように、見たい企画が重なって見られなかったりしたけれど、素晴らしい大会でした。大勢の懐かしい人たちに久しぶりに生身で会えてお話できたこともとても嬉しかった。
 スタッフのみなさん、お疲れ様でした。良い大会をありがとう。


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