戦争は終わらず、最悪の市街戦モードに。結局、市街や建物に陣地を構える戦いでは、市民の多大な犠牲は避けられないのです。巻き添えばかりではなく、スパイとみなされ撃たれるケースもでてきます。かつて日本軍が立てこもったマニラ市街戦では、市民10万人(当時の人口の15パーセント)が亡くなりました。これは軍人の死者を上回っています。早期停戦以外に道はありません。
さて、以前お話しした『眉村卓の異世界通信』ですが、インプレス社のネクパブPODアワード2022で優秀賞を受賞しました。この賞はインプレス社(Amazonオンデマンドのフロントエンド)で出た個人出版の中から選ばれる賞です。文芸の賞とは趣が違う、さまざまな人たちが応募しているのが印象的です。
グランプリを取った方はフリーのエディターですが、類書も多いテーマであえて出して、累計1万部を売ったというもの。オンデマンド本は、一般書店に並ぶ紙本の100分の1くらいしか売れません。目に触れる機会が少ないからです。たとえ数百冊でも、書店に並ぶのとないとではだいぶ違います。そのハンデを超えた点も評価されたわけです。内容も伴っているのでAmazonでのカスタマー評価も高い。他にもプロ出版も試みたが読者がマイナーすぎて売れないと断わられた本とか、和食について世界に知って欲しい内容なので自力で英訳して出したとか、引退したグラフィックデザイナーの猫本とか、とても個性豊かで面白い本ばかりでした。
Amazonのオンデマンドは「ペーパーバック」と記載されますが、聞くところによるとアメリカの紙出版物の10パーセントは既にこのオンデマンド版が占めているらしい。出版社や編集者を経由せず、いきなり個人が出版するわけですね。アメリカでも出版点数が増えて部数が減る傾向は顕著らしく、従来スタイルの出版では採算が取れなくなっています。自ずと確実に売れる本でないと企画が通らない→出してくれないのなら個人で出す、あるいは出来高払い(印税はない)のオンデマンドで出す、という流れです。作家/出版社/編集者/書店にとって、さらには印刷/流通業にとっても、出版の自由度は増すものの、事業として成り立たせるのが厳しい時代になってきました。
第6短編集『夏の丘 ロケットの空』が出ました(左掲載)、解説者は牧眞司さん。予定よりちょっと前倒しで出すことができました。今回は本文レイアウトを変更、なかなか適切なフォントがなく試行錯誤(これまでもですが)。純粋のオフセットと違って、レーザープリントのオンデマンドは文字が少し掠れるような気がします。書籍用フォントがなじむとは限らない。また表紙の写真は無償版で良いものがなくて、有償版のGetty
Imagesに変更。最近はプロ出版でもストックフォトの利用は多いですね。有料といっても、個人が一品ごとに利用できる1000円ちょっとの安いやつです。
THATTA掲載の短編はこの6冊ですべてです。今後は書き下ろしていくことになりますかね。小説の連載は木口まこと先生に、あとをお譲りします。
ところで、大野万紀先生がめでたく退職とのこと、いよいよ終活ですね(早い?)。それにしても、アラウンド古希(アラコキ)まで勤められたわけです。わたしは2年で辞めたし、水鏡子は定年前に辞めたはず。でもぼーっとしてると、朝起きたら10年が過ぎているので注意が必要です。
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