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ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。


千の夢

 第4短編集『千の夢』は2月24日に発売開始済みです。POD版も含めていつでも購入可能。水鏡子による解説をこちらで全文公開中ですぜひお買い求めを!!

 7月です。梅雨真っ盛り(なんて言うのか)、大きな被害が出るなど毎日が梅雨末期ふう豪雨です。皆さまもお気を付けください。

 さて、高齢者向けワクチンは今月に接種完了の見込みです。わたしは6月中に済みました。夏風邪を引いたような副反応でしたが、なんとか一日で回復。世間ではワクチン不足が懸念されるものの、7月には高齢者およそ3000万人+医療関係者500万人(2回換算)の接種が終わると思われます。6月末までのファイザー輸入量からすると、まだあと1500万人分が打てて+モデルナは800万人分くらいはあるので、総接種者数は6000万人くらいにはなるでしょう。ただし、およそ5割では集団免疫には届かず、まだまだこれからですね。

眉村卓の異世界通信

 今月は『眉村卓の異世界通信』についてちょっと書きます。

 この本は制作委員会形式で出版された私家版で、わたしも委員の一人としてお手伝いをしております。まえがきにも書かれていますが、もともと本を出すために委員会ができたわけではありません。一昨年2019年に話があり、最初の会合は去年2020年1月にありました。当時わたしは参加しておらず、「偲ぶ会」というイベントを開催する目的で検討が進んでいたようです。しかし、パンデミックで会合自体が不可能、長い間棚上げ状態でした。それが、今年の初めごろに記念誌発行の概要が決まり、関西在住の(あるいは関西で眉村さんと親交があった)関係者から寄稿を募ることになったわけです。

 わたしは1月の会合(創作サポートセンター)で、村上知子インタビューを実施したときからの関わりです。分担は次のようになりました。まず、各委員が所属する団体または教室(眉村さんが教えていたカルチャースクールや大学関係)単位に原稿を依頼、原稿の取りまとめとおおよその構成までを大熊宏俊さんが担当、わたしはそれを引き継いで全体レイアウトと最終構成を決め、DTPをInDesignのプロでもある都築由浩さんが行うという体制です。また執筆者が多くなることもあり、できるだけ固定費(初期費用)を安くして、広範囲の人に届けられる形式POD(プリントオンデマンド)を使うことにしました。

 SF関係者の追悼文集は、(プロ出版や私家版を含め)これまで何冊も作られてきました。しかし、本書はそれらとはだいぶ印象が異なります。ふつう追悼文を書くのは、盟友だった友人や後輩作家、仕事上の関係者(編集者)などで、一部ファンが入ったとしてもプロ関係に偏るのですが、本書で多数を占めるのは「教え子」です。教え子といっても学校的な意味での「生徒」ではなく、アドバイスを受けた人というような意味になります。

 眉村さんの場合、大学で創作(創作小説演習)を教え、そのあとも神戸や大阪など多くのスクールで創作講座を受け持っていました。どういう講義が行われたのでしょう。本書を読むと、一つの考えを押しつけるのではなく、相手によって何が適切なのかを選びながら教えてきたことが分かります。Aの人には正しくても、Bの人には合わないものがあるのです。チャチャヤング時代からスクール時代の最後まで、当事者の語るエピソードはそれぞれが個性的ですね。

 あと、わたしが読んでいて、初めて聞いたと思う新事実もいくつかあります。意外な人が貸本屋時代から眉村さんと関係していたとか、昔のチャチャヤングや星群の会との結びつきが思った以上に広範囲にわたっていることとか、内容があとの特集記事と重層的にリンクしたりします。こういうことは当人の記憶だけにあって、文章で書く機会はなかなかないので、他人が知る機会自体が稀なのだと思います。

 今回は原稿集めこそ担当しなかったのですが、昔のファンジン編集のころを思い出しました。それもずっと前、ネオヌルを編集していたころです。ネオヌルの場合、何を載せるかは筒井康隆さんが決めて、わたしは最終的な並びとレイアウトを担当していました。半世紀近く前、生意気な大学生だったころですね。今でもやってる(左掲)と思われるかもしれません。残念ながら、自分の原稿を自分で出すという作業ではインタラクションが何もない。趣はだいぶ違うのです。

 ところで、本書の表紙と裏表紙を併せてご覧いただけたでしょうか(シオタデザインオフィス制作)。表紙の眉村さんと裏表紙の眉村さんは、同じ写真を鏡像反転させたものなのに、裏側=異世界側の眉村さんは笑みを浮かべているように見えますね。異世界は居心地がよいのでしょう、たぶん。

 こちらで購入できます。Amazon SF売れ筋ランキングで最高10位、総合509位まで行きました。店頭に並ばないオンデマンド本では異例の高順位です。


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