みだれめも 第238回

水鏡子


○近況(2月)

 例会がなくなって、古本市も少なくて、引き籠りが亢進している。この前ひさしぶりにブックオフ回りをしたところ、8㎞程度しか歩いてないのに、次の日筋肉痛になった。昨年の緊急事態宣言と同じく電車の回数券が2,000円ほど余らせてしまった。3月は18きっぷと併用になるので、回数券の購入は慎重を期す必要がある。体重が微増。血糖値が上昇。引き籠る時間が増えたせいで、電気代というかエアコン代が急上昇。11月に11,000円だったものが、12月に26,000円になった。慌てて断熱効果の薄い母屋のものを止めて、電話のつながらない書庫に籠る。それでも1月は20,000円の出費となる。
 そんなわけで2月の書籍購入は、172冊、25,000円に留まった。うち新刊購入が5,000円。クーポン使用も10%割引券を除くと0である。なろう系66冊。買い直しを含めた重複本は19冊。 雑学系の収穫はほとんどなし。
 新たにweb最終更新まで読んだ本は『オールラウンダーズ!! 転生したら幼女でした。家に居づらいのでおっさんと冒険に出ます』、『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す  ~ヘンダーソン氏の福音を~』、『壊れスキルで始める現代ダンジョン攻略』、『追い出された万能職に新しい人生が始まりました』、『異世界で上前はねて生きていく』など。

● WEB小説作家別一覧(不完全)リスト 第4回

○ 「さ行」の作家

 リストはこちら。 (※リンク先はOne Drive(Excel Online)です)

 「代表作内容」欄の追加が失敗だったなとつくづく思う。
 「読めるリスト」「楽しめるリスト」という趣旨にはあっていると思うが、労力がかかる。それでもこれがないと読んだことのない人間にはとっかかりがない気がする。せめて2か月に一度くらいのペースで連載を載せていきたいと努力目標を掲げる。
 改善点をひとつ。評価点FとGについて、これまで未読作品と同じく空白としていたが、一応読んでいるわけなので、Eに混ぜ込むことにした。評価点DとEの境目については繰り返し書いているように自分の中でも揺れ動いている。特に、FG評価作の直後に読んだ話については、リバウンドして高評価をつけた気がする。FG評価作というのはだいたい10ページも読めば、評価が定まる。あとは買った本、読みだした本ということで、とりあえず書籍版の最後まで読み進めるのだが、当初の評価が覆ることはまずない。そんな本が重版したり、そんな作家が何作も書籍化されたりするのを見ると理解に苦しむ。こちらの読み方がおかしいのか。

 さ行のお勧め品である。今回は若干辛め。

評価A 
Schuld 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す』
評価B
疎陀陽 『フレイム王国興亡記』
評価C
佐島勤 『魔法科高校の劣等生』
三度笠 『男なら一国一城の主を目指さなきゃね』(※WEB版)
飼育員B 『迷宮のスマートライフ(迷宮探索者の日常)』
椎名ほわほわ  『とあるおっさんのVRMMO活動記』
支援BIS 『辺境の老騎士』
しめさば 『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』
じゃがバター 『異世界に転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。 』
止流うず 『ソシャゲダンジョン』
Sin Guilty 『異世界娼館の支配人』
蝉川夏哉 『邪神に転生したら配下の魔王軍がさっそく滅亡しそうなんだが、どうすればいいんだろう』

 Schuld『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す』は、表題通りの内容で、文章力、世界構築、キャラ設定とも頭抜けている。TRPG未経験者であるのだが、あるいは未経験者であるからか、ストーリーと絡み合うTRPGの蘊蓄が興をそそる。パラレルな結末を挿入していく作法もTRPG絡みということで納得しやすく、なにより著者の、小説であるための前提条件の高さが嬉しい。web最終更新まで高い小説密度は維持されていて、久々の文句なしの傑作である。

 なろう系読書の最初期に見つけた疎陀陽『フレイム王国興亡記』は書籍版は6巻で頓挫している。web版もすこしだれ気味でBかCか少し迷った。

 同様に最初期に見つけたものに、三度笠『男なら一国一城の主を目指さなきゃね』支援BIS 『辺境の老騎士』Sin Guilty『異世界娼館の支配人』蝉川夏哉『邪神に転生したら配下の魔王軍がさっそく滅亡しそうなんだが、どうすればいいんだろう』がある。同じ時期に刊行されていたが人気作で古書価が高く読む時期がずれたものが、佐島勤『魔法科高校の劣等生』椎名ほわほわ『とあるおっさんのVRMMO活動記』。また『ソシャゲダンジョン』を代表作とした止流うずも『新世界†英傑殺し』がこの時期なので、今回のお勧め12人中9人が古参組となる。

 『男なら一国一城の主を目指さなきゃね』は書籍版4冊目をあまりにひどい終わらせ方をされて、WEBに続きを読みに行くきっかけとなった作品だが、いまも話は続いていて書籍換算4、50冊になるのではないか。鉄道事故で死亡した人間が一斉に異能をもって異世界に転生する話で、内政チート+ダンジョン攻略から転生者を集めた領主生活に話は進んでいる。

 『辺境の老騎士』は3巻打ち切りだったものが、最近になってコミック版が刊行され、それに合わせて第4巻が出版された。なお、同じようにエンターブレインで突然に3巻目が刊行されたものに『ラピスの心臓』がある。

 『異世界娼館の支配人』Sin Guiltyは安定して質の高い作品を発表している。『いずれ不敗の魔法遣い』『RE:ゼロ』的な死に戻りもの、『その冒険者、取り扱い注意。』『オーバーロード』的なゲームで育成した魔物軍団の異世界転移ものである。

 蝉川夏哉『異世界居酒屋「のぶ」』で一山あてたかたちだが、デビュー作であるこちらのほうが魅力的。ただし完成度に難がある。

 新規組では、飼育員B『迷宮のスマートライフ(迷宮探索者の日常)』(これもWEB版は古い)がしっかり書き込まれたダンジョンもの。ただし出版社とトラブったようで2巻目は出さないと宣言している。

 しめさば『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』サラリーマンと女子高生を配したお仕事小説。『29とJK』とかと同タイプ。

 じゃがバター『異世界に転移したら山の中だった。反動で強さよりも快適さを選びました。』は姉とその友人たちの勇者召喚に巻き込まれた主人公が、大嫌いな姉を避けながら、精霊たちと無双スローライフをする話。異世界に姉嫌いを持ち込んだものとしては、『アラフォー賢者の異世界生活日記』を彷彿させるが、web最終更新まで読んでも勇者となった姉についてはうわさが流れるだけで対面していない。

 今回の評価A、Bともにオーバーラップ文庫である。ノベルスの方も含めてこのレーベルとの相性はかなりいい。
 文庫10点、ノベルス5点の読んだベストを最後に掲げる。

オーバーラップ文庫ベスト

Schuld 『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す』
五示正司 『ひとりぼっちの異世界攻略』
疎陀陽 『フレイム王国興亡記』
Gibson 『銀河戦記の実弾兵器<アンティーク>1』
柳野かなた  『最果てのパラディン』
十文字青 『灰と幻想のグリムガル』
割内タリサ 『異世界迷宮の最深部を目指そう』
樋辻臥命 『異世界魔法は遅れてる!』
ぷぺんぱぷ  『そのエルフさんは世界樹に呪われています。』
青猫草々 『押しかけ犬耳奴隷が、ニートな大英雄のお世話をするようです。』

 他にも『ありふれた職業で世界最強』、『黒の召喚士』、『現実主義勇者の王国再建記』、『異世界混浴物語』、『聖樹の国の禁呪使い』、『絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで』など下位5点と入れ替え可能なもの多数。

オーバーラップノベルス

石和¥ 『スキル『市場』で異世界から繋がったのは地球のブラックマーケットでした』
川崎AG 『猫だってアイテムを収集すれば最強になれます』
秤猿鬼 『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』
岡沢六十四  『異世界で土地を買って農場を作ろう』
君川優樹 『壊れスキルで始める現代ダンジョン』

 


○WEB小説作家別一覧(不完全)リスト (※リンク先はOne Drive(Excel Online)です)

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