Windows8.1にバージョンアップ。それにしても懲りないMS派であることよ。ところで、今月は水鏡子による筆者のサンリオ騒動の訂正記事が載るそうですが、そこで気が付くのは、未来だけでなく過去も「蓋然的」だということです。過去は確定しているのだから真実は1つだというのは大きな間違いで、実は複数の真実がある(逆に言えば、真実などはない)。同時に生きてきたように見えても、みんなばらばら複数の時間線をたどってきて、たまたま現時点で時間が交差しているだけなのです!(とかいうアイデアで星新一賞に応募してみてはどうでしょう)。
まあ、それはさておき、
昨年準備号で出た「チャチャヤング・ショートショート・マガジン」が、1年ぶりに創刊号として正規に出版されました。メンバー的には大差はないものの、少し趣向が凝らされていて、冒頭当時の放送(MBSチャチャヤング)の一節が引用されていたりします。
プロローグ作品は雫石鉄也の「年賀状の女」で、会えぬままでいた放送当時の女性投稿者と40年ぶりに再会しようとした男の話です。結末はちょっとジャック・フィニイ風です(ただし、ここでティプトリーを引き合いに出すのは年代的に合いません)。著者はもう2作を書いています。
これ以降は、サーカスが開かれた空き地で起こる事件、服部誕「原っぱの秘密」はブラッドベリ風。和田宜久は3編を寄せていて、「僕のクローン」が少し長い宇宙SFになっています(収録作にSFは少ない)。篁はるか「さよさん」は時代小説風、ホラー掌編が12編並ぶ深田亨、柊たんぽぽのユーモア掌編3編、大熊宏俊は16編からなるコント集。最後が、西秋生のホラーショートショート「法師蝉」になります。
最後にも再録という形式で、当時の放送内容が抜粋されています。チャチャヤングは当時一世を風靡した番組ですが、今では中高年の一部の人しか知らない内容になっています。そういう意味で、本誌の成り立ちはとても特殊です。読者を選ぶものといって良いでしょう。もちろん、それ自体に問題はありません。なので、テーマアンソロジーとして、40年前への回帰(あるいは叛旗でもよい)に徹したほうが分かりやすかったと思います。
最初にも書きましたが、ジャック・フィニイ的な(過去の特定の時代を偏愛する)作品は熟年世代にとって、居心地の良い願望充足ファンタジイといえます。あのスティーヴン・キングですら、『11/22/63』で同様のファンタジイを書きました。我々くらいの世代になると、ノスタルジアは決して悪ではありません。もっと追求すべきテーマです。そういった観点からみると、冒頭の1作目、2作目までの雰囲気と、それ以降とが乖離した印象を受けます。また、掌編が多いというのが全体の特徴ですが、一度に読んでいくと印象が散漫になってしまいます。これも、もう少し統一感が出るように工夫すべきではないでしょうか。
などとエラそうに書いていますが、筆者も1作書いています。40年ぶりのショートショートなので、それなりの出来ですがまあご興味があれば。
|