5月です。相変わらず泥縄のような生活を送るこのごろ。まあいいけど。
さて、徹子の部屋にも出演する岡田斗司夫(『いつまでもデブと思うなよ』は、ヨメが読んで…実践しておりません)が書いた『オタクはすでに死んでいる』(新潮新書)を読んでいると、実証された“死んだもの”の実例にSFが出てきます。かつて隆盛を誇ったSFが分化拡散し、もっとも問題なのは拡大する意欲を失った時に死を迎えたという、意外にまともな説明が書かれています。あれだけ伝道者や啓蒙家を抱えていたSFは、当たり前になったが故に感染力を失い、もはや死んだも同然だ…という論理ですね。
あらゆる分野には寿命があり、新陳代謝を積極的に促さない限り、構成する人間が老いるに従って滅び去ってしまう。趣味の世界では、アマチュア無線のようにテクノロジーの進歩も影響して危機に瀕する分野があります。映像メディアや携帯文化に(時間を)侵食される本も同様かもしれません。SFはその出自が本のため、メディアとして出版文化に強く依存するのは仕方ありません。
1)SFが当たり前化して、啓蒙の喜びがなくなる(別に啓蒙しなくても、SFはどこにでもある。特に映像系)
2)出版業界が行き詰まり、作り手側に将来展望が見えなくなる(SFに限りませんが。アニメの将来もさほど明るくない)
さて、そんな時こそ温故知新、過去を整理して成果を再利用するときです。資源は活用すべし。ということで、『日本SF全集・総解説』を再整理しました。ちょっと強引な展開でしょうか、まあいいけど。下記は、全集で言及された作品をグラフ化したものです。字が小さいですが、図をクリックするとPDFが開きます。ここでは、ざっと概観が見えれば良いでしょう。
オレンジ色は第1世代の作家、赤い矢印がデビュー年、オレンジの領域はデビューから没年までを示します(以下同様)。ハッチングがかかっている領域は全集に収められた作品の範囲です。同様にブルーは第2世代作家、イエローが第3世代作家になります。日下三蔵のセレクション方針は明快で、デビュー時重視、見るべき主要作品は(処女出版から)原則15年のレンジです。
SFにこだわった第1世代作家は60-80年の20年から選ばれていますが、第2世代は75-85年、第3世代は80年代の10年と、後になるほど作品が選ばれる範囲が短くなっています。集中的にデビューした第3世代の力が弱く、1990年から21世紀の作家は、実はこの世代ではありません。第2世代は10年が過ぎると、SF外の分野で活躍を始めます。第3世代は沈黙している作家が目立ちます。そうしてみると、60年代にデビューした作家に比べて、第2、第3世代を包含する70年代デビュー作家はかなり手薄な感じがします。
ここから先の作家は、今ならばハヤカワJコレクションで予想できる範囲で、ファンタジー大賞/ホラー大賞/ライト・ノベルズ系(というそれだけでもバラバラですね)の作家になります。SFで育った外部の血がSFをどう変えてきたかを、この全集で位置づけ可能なのかが重要な課題のように思えます。
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