がんばれドラゴンシチー 第4回
苑田卓
「お正月競馬からスタートして、3連闘とよく頑張りました。少しずつですがレース慣れし、着順も良くなっています。2月2回京都競馬以降。」 (友駿オーナー新聞2月号)
「3連闘の疲れもなく順調に調整されていますが、前脚に骨瘤が出ている為、あまり無理をさせれませんが様子を見て調教をします。3月2回阪神競馬以降。」 (友駿オーナー新聞3月号)
というオーナー側の発表のように、3月2回阪神競馬4日目までは出走していません。一口馬主にとってはつらい日々が続くようです。
この連載にもつらい日々が続きそうです。
そこで、お休みの間を利用して、血統について少し書きます。
競馬の血統と言えぱ山野浩一先生が有名ですが、最近はくめひろし(久米裕)という人も目立ってきたようです。
遺伝に関しては父も母も同程度の影響があるはずですが、おおざっぱに血統と言うと牡馬(父系)を中心に書かれたものが多く、色々な種牡馬事典が巷には出回っています。
そんな中から、山野先生の御本を買おうと思ったのですが高かったです。久米先生はその理論が種牡馬を論じるというものではなく競走馬自身を論じるものなので種牡馬辞典のような本は出していないようです。それで、たまたま店頭に並んでいた飯田正美という人の『種牡馬血統データブック』を買ったので、そこから引用します。
父スルーザドラゴン(Slew the Dragon)九五年ランキング三八位
産駒の特徴 「産駒はバワー十分で、ダートもまったく苦にしない。湿って脚抜きのよいダートは、むしろ巧者といえるほど。大跳びの産駒が多いわりに、芝の重馬場もうまいほう。仕上がりは早く、3歳戦、新馬戦いずれにも良績がある。そのぶん、古馬になっての成長力はいまひとつ。底力も、とくに強調できるほどではない。」
母の父サウンドトラックは掲載されていない。もう種牡馬ではないのだろう。
父の父はシアトルスルー。アメリカ三冠馬。
ということですが、仕上がりは早いと言われても4才になって新馬戦にやっと出走したのだし、しかも良績は残せなかったのだし、不肖の子なのかもしれない。
馬の力が血統で決まるかという問題もともかく、遺伝的には半分しか影響しない父を中心に血統が論じられるのは非科学的であると思う人は少ないようで、この手の種牡馬事典は結構売れているようです。
もう少し詳しくなると母方の祖父も考慮に入れるのですが、それでもまだ四分の三です。なぜ牡馬が血統論の中心になるかというと、牝馬は特徴が分からないからです。
一頭の種牡馬で多いときには一年に一〇〇頭以上の子ができますが、一つには牝馬の場合は多くて一年に二頭(双生児)です。一〇年続けて子が出来たとして、牡馬では一〇〇〇頭近くになるのに対し、牝馬では一〇頭そこそこ。これだけの数のサンプルではそれらしい特徴はつかめません。牡馬ならば一〇〇頭も競走馬になった子がいれば、一見統計学的な尤もらしい事が言えます。
それともう一つの理由は、牝馬の特徴を知ったところで、子は年に一頭ぐらいですが、人気のある牡馬なら、年に五〇頭ぐらいはデビューする子がいます。はるかに効率的です。
そんなわけで、血統と言うと牡馬の血を論じるようです。
ちなみにサラブレッドの三大始祖と言われる、バイアリー・ターク、ダーレー・アラビアン、ゴドルフィン・バルブの三頭は、いずれも牡馬です。その子たちの母馬は、という事は、カインの妻は、という事と同様謎です。
父系をたどれば、ドラゴンシチーはダーレー・アラビアンの二七代目です。
あとは全くの余談。
ディクタスの産駒で種牡馬になっている馬にはメジロデリー、ナスノタイザン、スクラムダイナ(すでに廃用)などがいますが、トレポロの産駒で種牡馬になった馬はまだいません。
という事で、単勝、複勝、連勝の成績。(三月三十一日まで)
ドラゴンシチー 0.0 0.0 0.0
武 56.3 76.7 52.7
宝来 76.9 82.4 57.4