みだれめも
第285回
水鏡子
3月初頭のトランプのイラン攻撃で、大きな損を出した株式。5ヶ月かけてなんとか旧に復した。売り買いほとんどなにもしなかったのだが。半導体主導の日経平均と優待中心の保有株との乖離が甚だしく、なにを基準にしたらいいか謎の相場が続いている。熊本地震の翌日に大幅爆上げするなどほんとにわけがわからない。
株主優待に関しては、デジタルギフトへの変更が増え、スマホを持たない身には不便この上ない時代になった。なんたらペイとか役に立たない。唯一パソコンでも使えるギフトとして、Amazonギフトカードを選んでいるのだが、この半年で15万円を越えてしまった。本以外に使う気がないのだが、ふだん220円で買っているなろう本を新刊1500円で買うことに、微妙に抵抗感がある。貧乏性極まれりというところだが、現金で220円払うのと貰ったギフトカードで1500円使うのと、どっちが節約であるのかと、わりとしょうもないところで考え込んでいる。ちなみにひたすら新刊の購入のみに充てているクオカードも20万の大台まで積みあがってしまっている。生計支出を概ね月平均10万円でやりくりしているバランス上、書籍購入に充てる費用は現金で30万前後、クーポン、クオカードを含めても原則年間40万台にとどめるようにしているとどうしても、Amazonギフトカードもクオカードも積みあがってしまうのだ。今年については基本、従来どおりの運用、やや贅沢というところで収めるとして、来年の書籍購入費は、クーポンとの合算で60万の大台を目指そう。
7月の購入冊数179冊。購入金額45,821円。クーポン使用14,700円。
なろう本86冊。コミック5冊、だぶりエラーと買い直しは31冊。
新刊は、ロバート・ジャクソン・ベネット『記銘師ディンの事件録』、韓松『悪夢航路』、矢野アロウ『マイボディ・オン・ザ・ムーン』、浅井ラボ『されど罪人は竜と踊る0.9』、Schuld『TRPGプレイヤーが異世界で⑪下』、白鳥士郎『りゅうおうのおしごと㉑』、依依恋恋『王者の盤狂わせ①』、リュート『目覚めると最強装備と宇宙船⑦⑧⑩⑫⑬⑭⑯⑰』の16冊17,865+クーポン12,000円。頂き本に『SFファンジン26年7月号』『Anchor KLL 26年第3号』のファンジン2冊。多謝。
『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』はカドカワの株主優待12,000円分で一挙購入したもの。
今月は高額購入本が多数。大阪古書会館で洋画集Gillian Naylor ed.『William Morris by himself』(2000円)という重たい本を買ったので、箱詰め託送するため300円本を多数購入。すべて単行本で、小松左京『模型の時代』『ウィンク』(各500円)、久野四郎『夢判断』(500円)、ナオミ・オルダーマン『未来』(390円)、筒井康隆『ジーザスクライストトリックスター』『不良老人の文学論』、ユートピア旅行記叢書①『日月両世界の諸国諸帝国』、ジェラルド・ダレル『積みすぎた箱舟』、エドワード・H・シェーファー『神女』、直良信夫『釣針』、フロリス・ドラットル『妖精の世界』、真弓常忠『神道祭祀』、アシモフ『六本脚戦争』、福島正実『SFの世界』(買い直し)、小松左京『大震災95』(各300円)など。
文庫でしか持ってなかった第一世代の作家の単行本については、財布のひもがゆるむ昨今。それでも500円というのが今のところの上限額ではある。
242円以下の主な単行本。
ラマーン・セルデン『ガイドブック現代文学理論』、高橋源一郎『ニッポンの小説③』、佐藤亜紀『黄金列車』、谷川俊太郎・長谷川宏『魂のみなもとへ』、岸田秀『希望の原理』『ものぐさ日本論』、岸田秀・三枝充悳『仏教と精神分析』、J・チャールズ・ウォール『悪魔学入門』、大河直躬『番匠』、網野善彦・鶴見俊輔『歴史の話』など。
| ◎ | 藤原ゴンザレス『羅刹の銀河〜物語冒頭で即死するモブ貴族に転生したので、生き延びるために好き放題したら英雄になってた〜』(オーバーラップ文庫) |
| ○ | リュート『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』(カドカワBOOKS) |
| ○ | リュート『フェイスレス・ドロップアウト』(カドカワBOOKS) |
| △ | リュート『ご主人様とゆく異世界サバイバル!』(GCノベルズ) |
| ○ | しけもく『剣聖悪役令嬢、異世界から追放される 勇者や聖女より皆様のほうが、わたくしの強さをわかっていますわね!』(カドカワBOOKS) |
| ○ | 御峰。『不遇な前世を持つ辺境伯家三男は、家族と優しさで異世界を救済する』(ツギクルブックス) |
| ○ | 星野純三『大賢者の弟子だったおっさん、最強の実力を隠して魔術講師になる〜静かに暮らしていたいのに、世界中が俺を探し求めている件〜』(オーバーラップノベルス) |
| ▲ | 仁香荷カニ『大迷宮のあとしまつ 〜ダンジョン清掃員のおじさん、強すぎて知らないうちにバズってしまう〜』(電撃の新文芸) |
| ▲ | 井橋太陽『ガチャと俺のプライベートプラネット 番狂わせの召喚王』 (カドカワBOOKS) |
| △ | ナガワヒイロ『捨てられ王子が最前線で敵国の兵士を治療したら実は第七皇女だった件』(エンターブレイン) |
スぺオペ系SRPGゲーム世界にキャラアバターとして転生する良作が二つ。どちらもハーレム仕様になっているのは仕方がないか。
藤原ゴンザレスは、『ドラゴンは寂しいと死んじゃいます レベッカたんのにいたんは人類最強の傭兵』(アーススターノベル)という心優しい無自覚無双の元傭兵がドラゴンの子供を拾い育てるなか、ふたりに惹かれて善性の仲間が集ってくる物語。ハートウォーミングなヒューマンコメディの寓話っぽい体裁で心地いい。記憶に残る作品である。
『羅刹の銀河』はそんな作者の久しぶりの書籍化作品。設定はまあ、副題通りで、異星生物の軍団にゲーム冒頭で殺されるはずだった学生士官に転生した主人公がどうせ死ぬならと頑張って抵抗した結果、なんとか生き延びることに成功し、英雄に祭り上げられる。元のゲームは銀河帝国が異星生物の侵攻でどんどん悲惨な状況に追い込まれていく展開なのだが、人類には彼らの天敵である異能の持ち主がいて、じつは主人公こそその持ち主であることから優先的に排除されるはずだったのに、彼が生き延びることでゲーム展開が激変するという裏設定。前作のほのぼのタッチと真逆で、臨場感あふれるバトルシーンに破壊的ギャグと反骨精神が横溢し、読み応え充分。ハーレム仕様も一応抑制が効いている。24年6月に執筆が開始され、ほぼ毎日更新がなされ、すでに連載は800話に達している。
リュートは、なろう読みの初期に△『29歳独身は異世界で自由に生きた・・・かった』(富士見書房ノベルス→カドカワBOOKS)を読んだのだが、印象は薄い。軽く目を通し直したのだが、異世界転生成り上がりハーレム仕様の話である。事件がひとつ起きるたび嫁がひとり増えていくという展開は今月読んだ3作と同一基調で、こういう物語展開が持ち味なのだろう。ハーレム指向の強いテンプレ展開。ただ、テンプレ展開とはいえ、マーケットを意識した、設定、キャラ、ストーリー展開などの造り物めいた嘘臭さ、安っぽさがなく、自然体で書かれているところに好感が持てる。『29歳独身』は後半雑駁になるところがあったが、その倍近い長さの『目覚めたら最強装備と』は18巻になる現段階まで冗長気味ながら小説として崩れずにいる。
こちらはスぺオペ系ゲームで自作構築した戦闘宇宙船とともに、ゲーム世界と酷似した宇宙に転移させられる物語。『螺旋の銀河』はモブキャラだったが、こちらはチート系主人公キャラである。
『フェイスレス・ドロップアウト』は『目覚めたら最強装備と』と同一宇宙における元傭兵の惑星開拓物語で、小ネタ満載でぼくの評価としては一番高いのだが、『目覚めたら』を先に読んどく方がよさそうである。
『ご主人様とゆく異世界サバイバル!』は4作中ハーレム指向がいちばん強いので、個人的には読み疲れする。
全体に傑作を書きあげようとする志とは無縁であるが、自然体でマーケットより自分(たち)に向けて物語を楽しみながら紡いでいく姿勢に感じられ嫌いではない。『フェイスレス』『目覚めたら』は、ストレスフリーな上質のスペースオペラとして楽しめる。