みだれめも 第281回

水鏡子


○近況(2月)

 久しぶりに株の話を少々。2月の末に3つ持っている証券会社の株がすべて合計額での含み損を解消した。個別にはコロプラはじめ高額の塩漬け株はいくつもあるがとりあえずそれぞれの証券会社のトータルではマイナスが消えた。
 何年ぶりだろうと感慨にふけるまもなくアメリカのイラン攻撃で元の木阿弥になる。

 オーバーラップ、TOブックスとなろう系の会社があいついで上場する。どちらも公募割れ状態で、株主優待で本の入手ができる可能性があるので、下げ基調の様子見しながら100株購入を予定する。
 ちなみに、カドカワ500株、アルファポリス100株を優待狙いで所有中。カドカワはここしばらく下落気味で買値を割っているけれど、掲示板とかを覗くとエプスタイン文書が関連しているとのこと。スターツ出版は優待を書籍から宿泊割引に切り替えたところで売却した、
 ブックオフ、まんだらけ、テイツー(古本市場)は買値より高値を維持し続けている。

 東京で10万円分の宿泊割引ができるというので奮発したTKPが改悪。6月1日から5月末までの一年間有効だったものを有効期間が9か月間に短縮される。金額が変わらないから、ほかの人には影響が少ないのだろうが、僕の場合、SFセミナーで使えないという決定的デメリットが発生する。またほかの会社を探さなければ。

 前回触れた詰め放題1,000円の店に、この月も2度行く。ハヤカワ創元のきれいな文庫がたくさんあったのでまとめて買い直し。文庫ばかりなので1冊あたり35円くらいになる。その他の文庫本では『ビーグル号航海記上中下』、『赤毛布外遊記上中下』、松尾尊兊『大正デモクラシー』『大正デモクラシーの群像』、ベイジル・ホール『朝鮮琉球航海記』などを、単行本では田中美知太郎『プラトンⅠ 生涯と著作』、ギデンス『先進社会の階級構造』、トーマス・マン『ファウスト博士①②』、ジャン=マリ・ブノワ『構造革命』、村上元三『思い出の時代作家たち』などを買う。岩波本が多い。

 2月の購入冊数162冊。購入金額30,738円。クーポン使用3,400円。
 なろう本41冊。コミック11冊、だぶりエラーと買い直しは前記の事情で42冊。

 新刊は「昭和39年の俺たち3月号」、「SFマガジン4月号」、「時空旅人 特集北方謙三水滸伝」の雑誌3冊と『男たちの知らない女 上下』で11,615円。頂き本にプリースト『不死の島へ』多謝。

 高額購入本は5冊。小学館『漫画大博物館』、『現代漫画博物館』(各2000円)、会津信吾編『バビロンの吸血鬼』(561円)、エリック・S・ラブキン『幻想と文学』、根本圭助『異能の画家小松崎茂』(各500円)。
 『漫画大博物館』『現代漫画博物館』は2冊並んで置いてあって、同じ小学館でビニール封がしてあったので中身が見れず、改名増補の出し直しかもと恐れつつ購入したが幸い異なる内容だった。『漫画大博物館』は松本零士のコレクションを中心に日高敏が年代順に整理したもので、サンデーマガジンの創刊までを扱っている。『現代漫画博物館』はその好評に誘われたか、1945年から2005年までの作品700点を同じく年代順に紹介している。レイアウト的には『漫画大博物館』を踏襲している。編集委員に米沢嘉博が入っているが、700点に三原順が含まれていないことに不満。

 220円以下の単行本の主なところ。
 山田稔『言葉・物語・歴史』、ノサック『影の法廷 ドロテーア』、山口昌男『笑いと逸脱』、近藤勝彦『歴史の神学の行方』、副田義也『現代マンガ論』、五歩一勇『シャボン玉ホリデー』、中山茂『20・21世紀科学史』、宮崎市定『アジア史論考 上中下』など。

○なろう本から

らむなべ 『魔術漁りは選び取る』 (MFブックス) 〇 

 魔法使いの使った魔法の完成度が低いときに出現する魔術滓。傭兵部隊の雑事係として戦場での武器拾いの仕事についていた孤児のカナタはその輝きに魅せられてなんの役にも立たないその魔術滓を拾い眺めることを無上の楽しみとしていた。そんな魔術滓を眺めることで知らず知らずに身につけた魔術式の断片を視る目と知識の蓄積が、敵対した魔術師との命を賭けた死闘の中で開眼する。本来なら初級中級上級と順を追って身につけるはずの魔術を、読み取った魔術式から行使を可能とする異能へと。
 高度な魔術を駆使する貴族たちの世界に放り込まれた少年は、仲間を害そうとする邪悪な上級魔術師たちをその異能をもって次々撃破し、その生き方で信頼を勝ち得ていく。
 しっかりとしたメリハリのついた物語で、『このライトノベルがすごい2026年版』の単行本新作部門で3位を獲得している。

らむなべ『白の平民魔法使い~無属性の異端児~』(カドカワ読書タイム)〇

 『白の平民魔法使い』は同じ作者の手によるもので、貴族しか魔法が使えない世界で、魔法以前の形状とされる無属性魔法を使う平民の少年が、膨大な魔力量だけを武器に魔法学園に入学を許されるところから物語は始まる。
 小説的には拙さが目につき、とくに最初のあたりはテンプレートをそのままなぞったような印象がある。さらに全体に、大量に登場する人物すべてに見せ場と、コンプレックス、モチベーションなど内面描写を書き綴るので、かなり間延びする。魔法の存在設定はかなり工夫が凝らされていて、魔法戦の描写は、ジャンプ系バトルアクションだとは思うけど、山田風太郎に近いところに到達している。
 なにより書くことへの熱量がある。『魔術漁り』は基本的に本書の焼き直しで、魔法学園ものから仲間とともに世界の敵と戦うという基本設定はほぼ同じものであり、熱量的にはやや弱い。
 それより非常に不満なのは、出版社の対応である。本書の刊行が決まったのは執筆が500話前後になったあたりと思われるのだが、第一部の3分の1、25話までの1冊のみで打ち切られていることである。少なくとも編集は2乃至300話程度は読んでいると思うのだが、1000話を越える全部を出せとは言わないが、せめて話の区切りがつく第一部70話までは本にするのが著者に対する誠意でないかと思う。
 カドカワの編集については基本、他社より評価は高めだが、この「カドカワ読書タイム」については悪い意味でカドカワらしさが感じられないのである。


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