みだれめも 第254回
水鏡子
第一土日、青心社、関大SF研OBによる高齢恒例浜松探検隊が4年ぶりに復活。浜松在住の関大OB初村氏のお世話による浜松名所めぐりで40年くらい続いている。最初に中止になった理由は、コロナ禍で他県ナンバーの車が嫌がられたり時には投石などの被害にあうという報道がなされたことだったと思う。ここまで関係者のコロナ被害はゼロだったのだが、直前になって、解禁されたライブコンサートに参加した運転手役のひとりがコロナをもらってきたため、少しバタつく。
浜松では1軒ブックオフに寄ったが、ここではなろう単行本110円の値付けのものがあり、ほくほくしながら数冊買う。
6月の購入冊数は228冊。35,157円。クーポン使用7,200円
なろう119冊。コミック11冊。エラーと買い直し22冊。
最近はレトロ系のCD、DVDに手を出し始めていて、この月もCD『昭和洋画劇場 和声洋楽コレクション』4,950円を購入。「ララミー牧場」や「ライフルマン」に惹かれて買ったのだが5枚組CDの大半が、TV映画ではなく映画版の主題歌挿入歌ですこし失望。
新刊は『オーグメンテッド・スカイ』『若者の読書離れというウソ』SFマガジン8月号の3冊4,488円。
400円前後(半額分クーポン使用)のなろう本を除いた主な高額本は、マリオ・プラーツ『肉体と死と悪魔』500円、『少年小説体系 ⑨海野十三⑰佐藤紅緑』各400円、吉野裕子『蛇』、『講座現象学 ④現象学と人間諸科学』各300円など。『少年小説体系』は残り2冊になった。
先月の412冊から228冊と激減しているにも関わらず、ダブり本は1割弱と同じ比率で推移している。好ましくない傾向である。
アルファポリス系列は、正直、低評価率が高い。編集がどうというよりもランク付けするweb読者層の問題ではないかと、最近考えるようになってきたのだが、たぶんそういう作品の方が売れるのであれば商売として間違ってはいないのだろう。220円で並んでいれば一応拾っているわけだが、女性向けのレジーナブックスになると、その値段でも買う気にならない。それでもたまに古本市場で80円だと拾ったりする。
アーエル『私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。』もそんな感じで入手して定番丸出しのタイトルに軽く流して読んでみた。
「平凡な日々を過ごしていたアラサーOL…のはずが、突然、異世界に「聖女」として召喚されてしまった!?それなのに、呼び出した張本人である王子とやらには、「お前は聖女ではない」と一方的に決めつけられる始末。すぐさま城から追い出された上に、元の世界には帰れないらしい。そこで自分に「エア」と新しく名付け、冒険者として好き勝手に生きてやろうと決意してーチートな魔法とスキルで人生を切り開く!痛快冒険ファンタジー開幕!」とまあ、粗筋紹介を見ても、ああそうですかのレベル。ただ、目を通してみると、小説はあまりうまくないし、テンプレだよりの展開だし、独りよがりであるのだけれど、なんか変。気持ちの悪さがちらちらある。(褒め言葉!)webに続きを読みに行くとテンプレに収めきれない気持ち悪さがどんどん増していく。万人にお勧めできるひとではないが、嵌る人がいてもおかしくはない。とりあえず700話まで読んだ。
ダブり本をどうすれば減らせるか。大きな課題である。
現在、最大のダブり対象は①がなろう本、②がラノベ文庫本である
なろう本については、本をもっているかどうか8割程度は把握できているものの、古本で目につくものを買っているので抜けているのが第何巻かがかなり心許ない。さらにはweb版を読みに行っているので、読んでいても持っているかどうかがかなり怪しくなっている。web版で読んだものも100円200円で拾えたらとりあえず揃えにいくからなおさらだ。読書主体がなろうに偏ってきているぶん、とりあえずで拾ってくるラノベ文庫本については余計に持っているかどうかが把握できなくなっている。同じ本が3冊集まることはざらにあり、ときには4冊並ぶことさえある。
なにぶんどちらも似たような表紙似たような題名似たような話だらけであるので。巻数の多い早川のミリタリーSFも同様の理由で重なることがままある。さらに何度か触れたことがある管理の失敗でしけったりカビを生えさせた本の買い直しについても買い直したもののダブりがたくさん発生している。
文庫本で持っているものの単行本の買い直しも、意外と買い直したことを忘れていたりする。さらには美本であったり帯がついていると持っている気がしなくもないけどまあいいかと拾ったりする。この前も、西村寿行の帯付き単行本を3冊と山田風太郎を買って帰ったらすべてダブり本だった。
それにしても、なろうやラノベはともかくとして、たかだか二千冊程度しか持っていない日本作家の単行本で100冊近いダブり本が出来ているのはどうしたものか。それだけダブった作家たちへのこだわりが強いと考えるべきか。いやこだわりが強ければダブらないのではないか。
7月の購入冊数は263冊。28,316円。クーポン使用4,100円
なろう78冊。コミック68冊。エラーと買い直し29冊。今回は買い直し本が11冊あるのでダブり本の量としてはまずまず。
コミックが増えたのは前にも触れた5冊100円の店で、『怪物事変』『アルスラーン戦記』などを買ったため。同じ店で竹河聖『風の大陸』32冊もまとめ買い。
新刊は『石川賢マンガ大全』『前略、山暮らし始めました②③』『ひとりぼっちの異世界攻略⑫』『創 23年7月号』など7,601円。
高額本は少ない。
『手塚富雄著作集』(全8巻2,980円)、クレージーケンバンド『青山246深夜族の夜』(CD 800円)、開高健・島地勝彦『水の上を歩く』(300円)
『青山246深夜族の夜』はゲスト出演した野坂昭如が歌と語りを披露しているものである。
浅葱『前略、山暮らし始めました』はカドカワ、アルファポリスの株主優待で貰った10冊の本の中でいちばん楽しんだ本で、続刊2冊を衝動買い。
男女関係のトラブルで会社を辞め山を買って移り住んだ主人公だったが、夏祭りの縁日で買ったヒヨコ3匹が2mを越えるニワトリに成長し、彼らを契機に村人たちと交流を深めていく。両隣の山に住む住民もじつは彼と異なる男女問題から移り住んでいて、いずれも夏祭りで買った蛇と蜥蜴が尋常ならざる成長を遂げていた。
最近ちょくちょくみかけるようになった現代スローライフファンタジーである。えんじゅ『神の庭付き楠木邸』も似たタイプだが、少しテンプレに寄りすぎている。コミックだが落合さより『ぎんぎつね』などに近いか。
8月第1週はSF大会。前回前々回と欠席したので、このまま参加を取りやめようかと思っていたのだが、企画のお声がかかって参加となった。内容は5月のファン交で20分弱で駆け足で喋った「なろうお勧め100人」についてじっくりやりませんかということで、少し手直しして話をした。
スケジュール表を見てびっくり。初日は、ぼくの「なろうお勧め100人」を露払いに、ベテラン作家の二日市とふろう、蝉川夏哉両氏の企画があり、飯田一史氏「web小説とSF」で締め、翌日にはFUNA氏の作品紹介を行うという、このようななろう系についての系統だった連続企画は初めてではないかと思う。
なろうの作者名については、性別不明の人が少なくない。今回も、企画の中で、大橋和代、FUNAの両氏が男性であるとの教授をいただく。ああそうなのかとあきらめまじりに記憶する。ティプトリーが女性であることに衝撃を受けた過去はなんだったのか。
ちなみに二回同じリストを介して喋ってみたことで、わりと長めのまとまりのあるコンセプトが浮かんできたので、リストの内容解説のかたちで、しばらく連載してみようと思う。
第一回は「なろうお勧め100人」の趣旨と凡例ということで。
8月第2週は京都下鴨神社古本市。いつもは投げ売りの出る最終日にいくのだが、近畿直撃の台風にぶつかるため初日に行く。うだる猛暑の中、歩きづらいすごい人出に驚く。とりあえず、京都まで足を運んだ以上、託送限界の段ボールひと箱は買い集めるのが至上命題となる。基本は3冊500円、高いものでも300円までに絞り込んだ。主な収穫は、すべて単行本で、東京大学出版会『講座日本思想①~⑤』、新ちくま文学の森『③⑧⑩⑫⑭⑯』、植草甚一『スクラップブック①⑤⑥⑧⑰㉛』、マルクス・エンゲルス『芸術・文学論①~③』、村上陽一郎他編『宗教 その原初とあらわれ』、イシドール・I・ラビ『文化の中心としての科学』、フランス世紀末文学叢書『⑬詞華集』、倉橋由美子3冊、野坂昭如2冊、林不亡2冊などである。
8月の購入冊数は271冊。35,091円。クーポン使用5,000円
なろう95冊。コミック73冊。エラーと買い直し19冊。
新刊は少なく、『SFマガジン10月号』『チクタク』『わたしたちの怪獣』3冊4,785円のみ。
コミック5冊100円(500円で100円割引)の店が10冊100円(500円で100円割引)のセールをしていたので、『絶対可憐チルドレン⑥~㉛』『七つの大罪①~㉑』などを買う。
ここ10年以上頓挫していた菊地秀行だが、『魔界都市ブルース』中心にノンノベルが古本市場で80円でまとめて出ていたので16冊購入。精査したつもりなのに1冊ダブる。
今月の最大の収穫は、『シートン動物誌』である。『動物記』の成功のあと30年かけて完成させた大著で、全12巻のうち6冊を各500円で購入。以前に入手していた2冊と合わせて8冊になった。残りは『③キツネの家族論』『④グリズリーの知性』『⑨バッファローの大移動』『⑫ウサギの足跡学』の4冊である。それにしてもちょっとググってみて驚いたのは、英米ではシートンが忘れられた作家であるとのこと。心の原点の作家の一人であるだけに衝撃だった。
その他の硬め、教養系の収穫には次のようなものがある。
水之江有一『キーツとロマン派の伝統』、ギゼラ・ホーン『ロマンを生きた女たち』、アンドレ・カストロ『中世ロワール河吟遊』、ゴルドマン『人間科学の弁証法』、ニーチェ『全集①』、亀井俊介他編『アメリカンドリーム』、高橋宗也編『歌舞伎絵百態』など。
てんてんこ『腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox』は定番に則った気楽に読めるゲーム世界からの異世界転生もの。ファンタジイな異世界をSFで蹂躙していく爽快小説。お勧めである。
「気がつくと、SFゲームの拠点要塞ごと転生していた。しかも、ゲームで使っていた女アバターの姿で。周りは見渡す限りの大海原、鉄がない、燃料がない、エネルギーもない、なにもない!いくらSF技術があっても、資源が無ければ何も作れない。だと言うのに、先住民は魔法なんてよく分からない技術を使っているし、科学のかの字も見当たらない。それに何より、栄養補給は点滴じゃなく、食事でしたい!これは、超性能なのに甘えん坊な統括AIと共に、TS少女がファンタジー世界を生き抜く物語」
TSということで少し警戒したけれど、ゲームの女アバターということならまあ許容範囲。しっかりした物語づくりで好感度高し。
少し前に読んだ、とても短くじつはそれなり濃い内容でつぼを抑えた林トモアキの新作『メルヘンザッパーデストロイヤー 英雄になり損ねた男、最底辺スラムで掃除する』同様、ちゃんとしたスペースオペラ背景の冒険譚で、こういう心地よさも忘れちゃいけないなあと、十文字青の『いのちの食べ方』のあいかわらずのこじれっぷりを楽しみながら考えたりする。