みだれめも・出納記録
水鏡子
年初の目標:
① | 生活費230万(収入:年金等200万、持ち出し生計費30万) | ◎ |
② | 書籍購入額 2400冊、40万円以内 | ◎ |
③ | WEB小説不完全リストの二巡り目 | × |
④ | 書庫 建設資金回収計画 | △ |
⑤ | 健康管理計画 | △ |
支出総額1,865,946 円と、3年連続200万円を割り込んだ。食費・光熱水費が世情に合わせてそれなりに伸びているが、本代・交通費がかなり減った。つまりは出不精、引き籠りがひどくなったということである。12月には何十年ぶりかで18きっぷを買わなかったし。体力の衰えを実感しているところもある。
年金生活に入ってまる10年、じつは毎年ほぼ黒字を計上している。
税金や生命保険も含めた生活費が年金の枠内に収まり、株の配当や売買益、コロナ関連助成金やらわずかばかりの原稿料を合わせると、毎年100万前後の収入が資産として積みあがっている。つまりは10年で1千万ほど資産が増えていることになる。その間の大口支出は、第二書庫・第三書庫建設の3千万だが、退職時の将来設計構想においてじつは存在を失念していた退職金と相殺すると1千万弱の赤字でしかない。これに書庫建設費用の補填捻出に失敗した株運用での含み損1千万があるが、含み損は清算しない限りマイナス査定の対象外である。
親の介護のない一人暮らしのメリットは、残す嫁子供の生活を考えず、資産を使い切ることが可能であるということで、残して国に没収されるくらいなら、マージンをとった100歳までの寿命を想定し、75歳まで80万、その後は医療介護費用を主体に320万の資産を毎年使い潰していく計算でいたのだが、現実には毎年上下200万づつ残余金が発生している。
さらに同世代の友人知人と引き比べ老化速度が増した気配もあり、下手すると寿命85歳あたりで終わる可能性が視野に入ってきた。松本零士もこの年齢で亡くなったし、全体に有名人の訃報も多くがこの年齢に前後している。
寿命を短めに設定し直すとすると、もっと無駄遣いをしなければ。書籍代を増やさなければ。でも安物買いが身についているので、書籍代20万増やすと購入冊数4千冊にもなるわけで、それはつまり…
購入冊数3,850冊→3,499冊→2,899冊→2,530冊である。支出額390,358円と予定枠内に収まった。このうち新刊を購入した69,516円はすべて株主優待のクオカードなので、これをクーポン扱いと考えると現金は32万円に収まる。ちなみにクオカードを除くまんだらけ、古本市場、ブックオフ及び店舗固有のクーポンは合計102,200円分である。
順調に冊数が減っているのは、①なろうとライトノベルの保有本の掌握が困難になってダブりが増えて買い込むことに怯えがでてきたことと、②京都大阪以外の古書店巡りの遠征をまるでしなくなったこと、③そろそろ書庫のスペースの限界が見えだしたことが理由である。
なろう本が900冊。久しぶりに1,000冊を割り込む。それでも、ダブり本は増加している。間違って買ったもの、買い直したもの、これに文庫本の単行本版などを含めたダブり本は254冊でほぼ前年並み。購入総量が減ったなかなので全体の1割を越えた。コミックは316冊。本宮ひろしを文庫版で揃え始めた他、あらたに『海皇紀』『弱虫ペダル』を大量買い。
断念。
直接の原因は飯田一史『ウェブ小説30年史』を読んだこと。
なろう系を個別作品ではなく、ジャンルとして認知掌握に取りかかったのはヒーロー文庫創刊から少し遅れての時期であったわけだが、気になっていたのは、そこに至る歴史的経緯。携帯小説、ボカロ小説、二次創作、個人サイトなどなど。ぼんやりとは見えている気はしていたけれど、内容的に興味が薄いこともあり概略だけわかればいいと思っていた。ただ、まさか『もしドラ』や『空の境界』『氷菓』、原田マハなどまで見渡さねばならないとは思わなかった。エブリスタとか野いちごとか肌合いの合わないところもあって、とりあえず、なろうとカクヨム以外は知識として抑えておけばいいとは思うのだが、抑えるべき知識の幅に、ついていく体力が持たない。『はたらく魔王様』がウェブ小説だったなんてほんとかい。
ベストセラー作品を基に、ジャンルという作者読者からなる文化共同体を幻視する手法は、客観データにより著者の主観を排する社会学的方法論として高く評価したい。ただしそこで生まれるのは、共同体が生み出した文化(文学)の精髄や可能性への筆者の主観に染まったジャンル論ではなく、ジャンルを生み出すに至った小集団の分析であること、書籍のベストセラーのデータに基づく抽出方法が、活字としての作品も評価ではなく、アニメ化コミック化メディアミックスの結果に基づかざるをを得ないという弱点を持つ。小説として発表された時点の読者とアニメ視聴からの購読者層は必ずしも、否、むしろ一致しない方が多いのだから。
著者もその点は自覚しており、『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(2012年)の中で『ハルヒ』の小説発表時とアニメ化時点の読者層の変化を指摘している。この本は人気作品がどうして同系統の作品の中で突出したのかという小説指南と、ライトノベルはこのような多様な傑作を生んでいるのだという世間一般への啓蒙といった相反する方向性を持ち、一方的な結論が随所に見られる。『ウェブ小説の衝撃』(2016年)は本人的には前著の続篇的な性格があるとのことだが、むしろ前著の一方的な断定が通用しない新たなジャンルの出現に、とまどいつつまとめている雑然とした現場報告という印象がある。この2冊については今更読まなくてもいい。
ただ興味を持ったジャンルについてデータを収集し、整理し、系統立てていく技術が蓄積されていくすごさを感じたのがその後の3冊である。
『いま、子どもの本が売れる理由』(2020年)は長篇評論としての著者のターニングポイントとなった気がする。もともとライトノベルが主戦場であった著者にとって、一応の周辺領域とはいえ、直接的な興味の対象でなかった児童書に子供が生まれたことで初めて足を向けた思い入れのなさが、培ってきた方法論の実践に見事に作用し、完成に導いたように思える。一言でいえば、データを集めて、ジャンルの歴史と地理を俯瞰して立体図型を作り上げる手法であり、実数を通じたメディア文化論である。
それはある意味誰もがやっている普遍的な手法であると云えるのだが、そのジャンルの現状と本質的な可能性を踏まえた上で、ここに売れ行きという量的要素とそれを受容する読者集団に関する社会学的考察が展開される。このあたり、どうしても本質的な可能性みたいなものの、ありうべき、あってほしい方向性に引っ張られがちなぼくなどには難しい、社会学的にはより純粋な方向性であると思える。
こうして完成した方法論で仕上げられた作品が『ライトノベル・クロニクル2010-2021』(2021年)と『ウェブ小説30年史』(2022年)である。
基本的にこの2冊は二つで一つとみなすべきものである。どちらも著者がwebに連載していた文章を整理整頓して作り出した作品であり、『ウェブ小説30年史』については、恐るべきことに作品紹介がほとんど成されていない。『ライトノベル・クロニクル』は作品から入っていくものの背景をなすパースペクティヴへの言及は多々あり、両者の内容的な重複は少なくないがそれも著者の重点的主張の復習と見れば理解の大きな助けとなる。
もちろん不満はある。売れ行きによる評価に基くため、『ライトノベル・クロニクル』ではアニメ化による読者急増で、『八男ってそれはないでしょう!』が2020年、『蜘蛛ですが、なにか』が2021年の章立てで取り上げられるといった目次の配列は、書籍もしくはweb掲載にこだわる立場からすると違和感が残る。もちろん文中ではそのあたりのデータもきちんと付記されてはいるのだが。
『ウェブ小説30年史』に関しては、SF界に対する評価が高すぎる。誉と褒ばかりで、毀と貶が皆無である。SF大会はともかく、この種の一般書でSFセミナーや京フェスに言及されるのは初めてではないか。
実のところ、ひたすら読みまくったWeb小説について、不完全リストをもう少し整理して、それを基になんか書いてみるのもありかなと思ってみたりしていたのだが、『ライトノベル・クロニクル』『ウェブ小説30年史』を読んで、あまりに自分の知識の過少と脆弱さに絶望した。なにより『ウェブ小説の衝撃』からわずか5年ほどでの莫大なデータ集積量に、これは太刀打ちできない、ネットでデータを集積できる人間しか今の時代にはついていけないと確信した。とりあえずこれまで通り、本の収集と読み専に徹っして引き籠ろう。70歳に到達し、読解力、記憶力に疑念が生じていることもあり。
とりあえず、「不完全リスト」に代えて『なろう作家お勧め100人リスト』を提供する予定である。
株の含み損はなんとか1千万を割り込んだ。本当は、売買益を損切して七百万程度に圧縮するはずだったのだが、失敗して400万近い益を出し、含み損はそのまま残ってしまった。問題はまんだらけである。5万円の株主優待券を手に入れるため5千株を買っていたのだが、業績好調のため98万円で4000株を売り払いほくほくしていた。100万を越えることはないだろうと98万で売ったのだが、あにはからんや現在180万円である。買い戻すには700万円が必要になる。さすがに3万円のクーポン入手の目的に700万はないだろう。となると、来年の古本用クーポンは大幅減である。困った。
とりあえず、動き回ることに支障がないので、一応の△。
血糖値:ついに10.1と大台に乗る。年末年始に食べ癖がついて胃が広がったり間食が増えたり外歩きが減ったりと心当たりがありすぎる。
体調全般、以前より微妙に倦怠感や肩や腰など軽い痛みがみられる。
眼:パソコン前から動かないので、白内障、疲れ目は改善せず現状維持だが、これに右眼の緑内障が発生した。
これらを踏まえて
① | 生活費250万(収入:年金200万、株益、配当金50万) |
② | 書籍購入額 3000冊、50万円以内 |
③ | 書庫大移動 |
④ | 書庫 建設資金回収計画 |
⑤ | 健康管理計画 |
① は、これまでとは逆に、使い切ることを目標とする。2022年の支出額より60万円の増加である。これでも資産は目減りしない。場合によっては300万まで許容する。主な使用先は、①人間ドック②物価高③イベント参加経費。④本代増加。
② については、古本市での上限300円(例外あり)を500円に引き上げる。問題はそろそろ限界が見えてきた書庫の問題。
③ 現在大問題となっているのがなろう本があふれだしていること。3年前になろうと時代歴史小説を第一書庫に移動したのだが、これがもう限界にきている。現在、ダブり本の置き場にしている第2書庫を活用しかないのだが、作った後に気がついたのだが、台所隣接書庫は料理の油が霧状になって流れてくるのだ。ある程度油にまみれても許容できるのはどういう本かといろいろ検討中である。
④ は例年通り。書庫 建設資金回収計画は、株の含み損を今年中にゼロにする。たぶん無理。
⑤ 健康管理
人間ドック、癌ドック、脳ドック。
節食、散歩。
すこし本気で考えている。