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ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。



 4月です。今月は木下充矢さん(ちょっと歳は離れていますが、大学SF研の後輩)が第14回創元SF短編賞のファイナリストに入っています。今頃は編集部指摘の手直しの最中で忙しいでしょう。ご健闘を祈ります。

 前回の続きです。OpenAIがGPT-4の使える有料(最低20ドル/月)のchatGPT Plusをリリースし、もう使ってみた人も多いのではないでしょうか。開始直後とはいえ、ネットの帯域をユーザで分け合うベストエフォートみたいに、利用者が増えるほど使えるリソース(質問数)が落ちていくという詐欺まがいのサービス!! まあ、予想外の殺到なのでしょうけど。AIフィーバーはカリフォルニアやスペインの山火事のごとく燃え広がり、各所に(流行に乗り遅れるなの)焦りと(AI支配による監視と失業の)恐怖をもたらしています。とはいえ、まだその先、来るべき未来が見える段階とは言えません。日々状況が変わっています。しかもGPT-4は私企業の製品なので、それがどういう原理で動いているのか公表されていません(商用フェーズに移行したため情報がクローズされています。性能のみを公表している)。少なくともGTP-3時代のような、物量的スケールアップで性能を上げるという、力まかせの手段だけではなさそうです。

 さて、今回はMS Bingのチャット機能を使用します。GPT-4相当の性能があるといわれていますが、MSの技術者もGPT-4はブラックボックスとして使っているようで、使うたびに挙動が変わります。こっちも発展途上ですね。ごまかされないように、今回は詳しく書き出しを入力し何を書くかを試しています。












 小説だからいいのかもしれませんが、これって、どこかで見たような気も……。

 最終フレーズ(13/15)は突然打ち切られています。切られる前のシーンでは、ぼくは彼女を「自転車」に載せて逃走し、彼女の父親が自動車で追いかけてきます。そして、胸元から拳銃を取り出して発砲……というアクションシーンだったのに、なぜか回答自体が取り消されました(chatGPTも同じですが、回答はリアルタイムに生成されます。つまり、取り消される瞬間を見ることができます)。MSの倫理エンジンが規律違反と判断し(発砲を伴う自転車チェイスは過激?)削除したものと思われます。回答生成と別のプロセス(AI)が働いているようですね。まるで人間の検閲官みたいな動き方が面白いというか、何というか。

 作家としての才能には(上記程度では)感心しませんが、GPT-4クラスのAIが普及すれば、人間の仕事の8割に影響が及ぶという論文が出ています(OpenAIが書いているので手前味噌です)。中でも、各種記事を書くライター、(デジタルツールを使う)デザイナー、ファイナンシャル・アナリスト(いわゆるクオンツ)、ブロックチェーンのエンジニアなどには甚大な影響が表われます。といっても、例に上がっているのは結構狭い職域ですね。中では「ライター」は広いかな。拡大解釈すると、生産性の革新的な向上が見込める反面ホワイトカラー層の大量失業がセットで生じる、という議論になるわけです。

 これについては楽観的な見通しと、悲観的な見通しがあります。楽観的なものでは、今までホワイトカラーに就けなかった低スキルの人材が、ツールをスキルの補助に使うことで採用されるようになり、結果的に雇用の創出と収入の平準化(共同富裕ですね)につながるとします。悲観的なものでは、ツールは最高スキルの人材の雇用(これまで以上の生産性向上になる)のみに貢献し、それ以下の層はすべて切り捨てられるとする。所得格差を極限にまで広げるわけですね。ここで注目すべきは、今度の格差は投資によるマネーゲームで生じるのではなく、一般的な仕事で生じうるという点です。スキルの差がレバレッジのように、何十倍にも増幅されて効いてくる。いくら生産性が高くても、社会不安を誘う後者は、政治的/社会的に選ばれない可能性があります。

 ということで、小説は完結していません。次回はこの完成にむけて努めたいと思います。


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