みだれめも 第249回

水鏡子


○近況(8月・9月・10月)

8月

 半世紀ぶりくらいでSFマガジンを買いそこなった。10日くらいいくつかの本屋を覗いてどこにも見当たらず、しかたがないから書店注文を出すと、版元にもありませんとのこと。へえ。
 214冊、25,500円。クーポン使用7,500円。なろう93冊。コミック6冊。買い直しとエラーのダブり本24冊。買い直しは、カード、ビジョルド、シェフィールド、山田風太郎『幻燈辻馬車』(帯付)。エラーはほとんどなろう本。買った中ではいちばん読んでいるはずなのに、読んだ端から記憶が飛ぶ。あと橋本治が4冊買って3冊ダブる。少しへこむ。
 1泊2日の京都下鴨神社古本市は2日共にあいにくの小雨模様。創元文庫フレドリック・ブラウンのミステリを10冊500円で。あとジャクリーヌ・ベルント『漫画の国ニッポン』、木村毅『小説研究十六講』、日本風俗じてん『アメリカン・カルチャー②③』、人工知能学会編『AIと人類は共存できるか』、マックス・ウェーバー『世界宗教の経済倫理』、ミューラー『ハイデッガーと西洋の形而上学』など。古本市以外の硬めの雑本ではブレイデイ&コリアー編『社会科学の方法論争』、ウィード&カーシュヴィンク『生物はなぜ誕生したのか』、茨木のり子・長谷川宏『思索の淵にて』、カルヴィン・クロースン『数学の不思議』、岩波現代社会学『⑥時間と空間の社会学』など。

9月

 141冊。26,000円。クーポン使用2,000円。なろう42冊。コミック10冊。買い直しとエラーのダブり本31冊。
 市内の古本屋に、半分近くが未読状態の『異色作家短編集』『世界大ロマン全集』『世界推理小説全集』『ディクスン・カー選集』が一律220円均一で大量に出る。
 ぽつりぽつりと買い集めていた家にあるものの保存状態が必ずしも良好と言えないことから、『異色作家』10冊、『大ロマン全集』28冊をまとめ買い。どうやらぼくの前に(たぶん一人)抜いた人間がいたようで、だってこれだけきれいな『異色作家短編集』が10冊だけなんて中途半端はありえない。『大ロマン全集』のほうも幻想怪奇系がそこそこ欠けている。これはもしかすると『世界恐怖小説全集』も並んでいたのでは、とちょっと悔しがる。110円の棚にあった植草甚一『バードとかれの仲間たち』、伊藤典夫編『吸血鬼は夜恋をする』もたぶん同じ人の放出本だろうな。
 その他の硬めの雑本:平岡正明『魔界転生』(買い直し)、橋本治『広告批評の橋本治』(買い直し)、岩波講座東洋思想『⑬中国宗教思想』、スイス文学研究会編『スイス19世紀短編集』、キャサリン・ブリックス『猫のフォークロア』、ミハイル・エリザーロフ『図書館大戦争』、沖麻実也『デルフィニア戦記画集』など。
 最近年1冊ペースに落ちている茅田砂胡の新作が出ていることに気づかず、慌てて読む。物語的に間奏曲風だったので、ちょっとスケールの大きなものを読み返したくなり、『スカーレット・ウィザード』に手を伸ばしたら、結局三週間かけて『天使たちの課外活動⑨』まで全巻読み返してしまった。考えてみると、全冊読破にかかった作家は何人もいるが、ある時期すとんと落ち着いて、買うだけになるのが普通ななかで、読み続けているのはじつはこの人だけではないかと、今はじめて気づいて愕然としている。
 ちなみに買うだけだから、古本屋待ちになり、読んでないから本がダブる。悪循環。単行本、全集、文庫本と同じ本を何種類も買うことも増えて、ますます持っている本がわからなくなっていく。

10月

 10月は、大阪四天王寺、大阪天満宮、京都知恩寺、三つの青空古本市があり、先送りしてきたSFマガジンの年間ベスト投票用の新刊を買い込む必要もあり、例年、購入冊数、購入金額共に普段の倍近い数字となる。昨年は67,247円366冊、今年は70,913円354冊である。ちなみにこれに株主優待等のクーポン券12,000円が加わる。託送便のコスパを最大限に生かすため、段ボールに入るぎりぎりの量まで買い込む。ひと箱25㎏見当なので、それ以外の買い物も含めておよそ130㎏といったところか。昨年の購入冊数は2,900冊なので割戻した年間購入重量は約1㌧になる。今年は500冊くらい減りそうなので800kgで収まりそう。
 内訳は、なろう98冊、コミック19冊、買い直しとエラーのダブり本32冊。新刊本は20,000円。すべて株主優待のQUOカード払いなので、実質現金支払は5万円に収まる。置き場所並べ場所が確保されているなら安い遊びである。
 詳細については、別途開陳の機会を得たので、ここはトピックをいくつか。

山田風太郎『明治小説全集 愛蔵版』全7冊 10,000円
 今月いちばんの高額購入本。知恩寺古本市のセット本コーナー。収録作すべて持っているけれど、風太郎人気と定価各冊5,060円はブックオフの220円には並ばないなということが決断の後押しになった。それにしても愛蔵版で5,000円する本が、ハードカバーじゃないのですねえ。『鈴木いずみコレクション』8,000円も迷ったが、こちらは1冊持っているのとバラで220円で買える可能性があるということで見送る。

M・A・ラシネ 『世界装飾図集成』全4冊 800円
 安価で印刷のいい美術系文庫マールカラー文庫にダイジェスト版『世界装飾図』が収録されたマール社の原典本。でかくて愛でるに足る本。

●ほるぷ出版『復刻赤い鳥の本』ひと箱1,100円、『ビアス選集』全5冊1,480円
 市内の古書店で拾う。セロファン紙の状態を見る限りどちらも未読状態。先月買った『異色作家短編集』その他と同じ店であり、たぶん同じ人の放出本だろう。『復刻赤い鳥の本』は箱の中に童話集15冊童謡6冊が整えられて入れてある。ほるぷの本は原本通りの装幀に魅力もあり、欲しくもない人間に戸別訪問で大量に売りさばいた結果、きれいな状態で100円200円でごろごろしていて、内にも4、50冊集まっている。ただ企画はすごくいいのだけど、デジタルリマスターとかの技術のない時代なので、絵本系、挿絵等がとてもきちゃない。オズボーン・コレクションとか100円ならまあいいかとずいぶん買ってしまった。

リチャード・リーキー編著『図説 種の起源』ロバート・ベイツマン画集『自然からのメッセージ』現代日本画家素描集『⑩山口華楊:わが愛すべき動物たち』3冊500円
 今月は、進化論、動物記系の本の出物がかなりあった。そのなかの豪華ビジュアル系を紹介する。
 『図説 種の起源』は人類学者リチャード・リーキーが多数の図版、写真と知見を加え、現代の読者向けにダーウィン『種の起源』を翻案したもの。『自然からのメッセージ』は野生生物画家、ナチュラリストとして高名なロバート・ベイツマンの第三画集。山口華楊は動物画で名高い日本画家。現代日本画家素描集には動物系では他に『⑨上村松篁 : わが身辺の鳥たち』などがあるが見当たらなかった。しっかりした作りの本なので百円台で入手可能なら全20冊拾ってみるのもありかなあ。美術系の豪華本は古いものでも印刷がしっかりしているものが少なくない。大型本だけに置き場所が検討課題であるけれど。ちなみにこの3冊、定価の合計は二万二千円になる。


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