さて、2ヶ月ぶりとなり中秋も過ぎて、コロナの第7次ピークは越えました。しかし、ワクチンは打ち続けないといけません。まあ、まだ分りませんよね。梅雨だか秋雨だか夏日だか豪雨だかするうちに、季節は過ぎていきます。
ところで、今月からhtmlエディタを古いExpression(FrontPageの系譜です)からVSCodeに変更。旧ツールと最新ブラウザの乖離が大きくなったためです。小説じゃないのでnovel-writerは使いませんが、ソースの文字コードをシフトJISからUTF-8に変えました。フォントもWindows10-11標準(メイリオ→游ゴシック)にしています。
トリビュート・アンソロジイ『眉村卓の異世界物語』発売のお知らせです
『眉村卓の異世界通信』が出たのは昨年の6月末です。以来(寄贈分を合わせてですが)500冊余が世に出ました。私家版のオンデマンド本としては、なかなかの数字でしょう。店頭や対面売りのないPODでは(電子書籍でも)100を越えるのが難しいのです。さらに、年が明けた今年3月にはインプレス社の「ネクパブPODアワード2022」優秀賞を受賞するという栄誉にも預かりました。
さてしかし、この賞金をどうするか。本自体は粗利ゼロの価格設定なので儲けは出ませんが、それなりの額の賞金は放置できません。とはいえ、著者に分配するほど多くはありません。それなら本で返すのが筋ではないか、というのが刊行委員会内の結論です。実は『異世界通信』を編纂する際に、追悼エッセイや単行本未収録作掲載などとは別に、眉村さんを敬愛する作家たちによるトリビュート作品を収めるアイデアがあったのです。ボリュームや時間的な制約もあり、昨年は実現に至りませんでしたが、本書は積み残しをコンプリートする企画でもあるのです。
デザイン:シオタデザインオフィス
アンソロジイを編むというのは、(一部のSFファンにとって)夢想の対象です。この組み合わせなら理想的といくら考えても、なかなか現実の本にはできません。見果てぬ夢ですね。架空アンソロジイを編むこと自体を本にした、日下三蔵『日本SF全集・総解説』があるくらいです。それでも、テーマ・アンソロジイなら中村融編の翻訳ものがありますし、井上雅彦編のオリジナル・アンソロジイ《異形シリーズ》(毎回お題=テーマを掲げる)や『異常論文』など変わり種もあります。
しかし、日本のSF作家のトリビュート・アンソロジイとなると、それほどありません。筒井康隆や小松左京の漫画版とかはあるものの、小説中心だと伊藤計劃などごく一部でしょう。本書は私家版ながら、プロ作家を含む充実の内容です。今回は私が編集を担当しました。前回同様無償の寄稿となることもあり、作家の方々へはそれぞれ縁のある刊行委員(芦辺拓・石坪光司・大熊宏俊・岡本俊弥・雫石徹也・芝崎美世子・都築由浩・堀晃)経由でお願いをし、その結果15の作品が集まりました。漫画やAudible版(どんなものかは本文でお確かめください)まであって、既存作も交じりますが、アンソロジイの1作品として新たな読み方ができるようになったと思います。
目 次
じきに、こけるよ(眉村卓)年刊傑作選にも採られた「私ファンタジー」の傑作を再録。白日夢に見え隠れする異世界の入口が不気味ですが、単純なホラーではないリアルさに引き込まれます。この作品が異世界への入口です。
タク先生の不思議な放送――「メトロポリスの少年探偵」序章(芦辺拓)ラジオから、かすかな深夜放送の声が聞こえてきます。
奇妙な妻と娘の断片(北野勇作)妻と娘は、いつも謎めいた行動をとる。21のマイクロノベルからなる物語です。
時の養成所【完全版】(岡本俊弥)渓谷の城塞跡に作られた養成所は、特別な目的を持ったヒトを訓練するための施設でした。
あの頃、私は週に一本の作品を書くのも大変だったのに、眉村先生は一日一話を書いていて、本当にすごいと思った(藤野恵美)大学で創作講座を受け持つ主人公は、あるとき不思議な体験をします。
残り火は消えず(雫石鉄也)下請け虐めに遭う中小企業を生き残らせるため、一人奮闘する出向社員の顛末です。
ファン二態(高井信)締め切りが迫るショートショート・コンテスト、主人公は起死回生の攻略法を思いつきます。
夜陰譚(菅浩江)自身の容姿に嫌悪感を抱く主人公が路地で見たもの。この作品と、眉村作品との意外な接点とは。
SF作家パーティ殺人事件(竹本健治原作・ネーム、河内実加作画)現場には明瞭なダイイングメッセージが残されてた!
眉村さんへ(竹本健治)竹本健治のプレデビュー作品が、半世紀を経て当時の雰囲気そのままによみがえります。
ねらわれた学園 後日譚(椎原悠介)『ねらわれた学園』の登場人物たちはその後はどうなったか、台湾で明らかになる真相。
雪の降る夜のお客さま(深田亨)何度も同じネタを繰り返す落語家、観客はただ一人だけ。しかし、その噺家は実は。
新・夢まかせ(大熊宏俊)作家は奇妙な夢を見ます。もう一人の自分がいて、歩行に苦しんでいるようなのですが。
幻影の手品師(石坪光司)中年で職を失った男は、あるとき、公園に現われた奇術師の帽子の中に遠宇宙を目撃します。
丸い池の畔で(村上知子)ロンドンの野外ギャラリーで装飾品を売る主人公は、日本人の父娘と知り合いになります。その二人と自分の息子という二組の親子のつかのまの交流が描かれます。この作品が異世界からの出口となるでしょう。
インサイダーSFはいかに生まれたか(堀晃)言葉だけが先行しその中身が明らかではなかった、眉村卓「インサイダーSF」の意味に迫る論考です。
『眉村卓の異世界物語 トリビュート作品集』はAmazon KDPでのオンデマンド・ペーパーバックです(電子版はありません)。発売日は10月10日、A5版248ページ、頒価は税込1320円とお買い得です(発売は多少早まる可能性もあり)。
今回は予約期間はなく、検索できる販売ページもまだありません。告知を行いますが、予告なく即発売となるためご注意ください。
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