THATTA ONLINEの読者のみなさま、長年のご無沙汰でした。もう記事のタイトルもペンネームも忘れたので、これでよかったかどうかわかんないんですが、これで書きます。
さて、わたくし創元SF短編賞なんていうものに応募しました。もう記憶も朧げなくらい何年も前になるのですが、堺さんぽ君とやったネット番組で「SFを書いて創元SF短編賞に応募しよう」という企画をやったのですね。その時にいろいろ話していたら、視聴者からのチャットで「交通渋滞SF」というお題が上がってきました。柳下毅一郎さんからだったと記憶しています。わたくし、当時は交通渋滞の物理なんていうものを研究していまして、せっかくだからそれをSFのネタにしろというわけです。うむ、それは斬新じゃああるまいか、ということでいろいろ案を練りまして、交通渋滞から知性が創発するハードSFはどうかという話になったような気がします。
ところが、番組が終わってからそれを書こうとしても、全然ストーリーがまとまらない。その年の創元SF短編賞には間に合わず、その後も折に触れて思い出してはいたのですが、翌年も間に合わず、その翌年も間に合わずというのが続きまして、これはもうサグラダ・ファミリアか交通渋滞SFかという感じになったわけです。
しかし、サグラダ・ファミリアだってできそうなわけですよ。これは困った。もはやできないのはみずほ銀行のシステムと交通渋滞SFだけではありませんか。
これはまずいと思いまして、真剣に考えたわけですよ。その結果、知性の創発は諦めることにして、もっと地味な交通渋滞SFなら書けるんじゃないかと思い至りました。ネット番組での約束とちょっとは違うかもしれないけど、「交通渋滞SF」という大枠を外さなければいいのではないかと。そんなわけで、アイデアを練りに練って書き上げたのが非常に地味な交通渋滞SFです。僕的には交通渋滞の物理学に基づいたハードSFなんですが、読んだみなさんがハードSFだと思ってくれるかは微妙かもしれません。でもいい。書けたからいい。
作品は創元SF短編賞の締め切り数日前に完成して、応募しましたよ。ええ、応募しましたともさ。結果は一次選考通過です。おお、すばらしい。しかし、二次選考では残れませんでした。一次に通ってみると、欲が出てくるもので、二次で落ちたのは悔しい。とはいえ、ちょっとこの作品は地味過ぎるのと、やはりこれをハードSFと思ってもらえるかですね。過去の入選作を読むと、鮮烈なイメージの作品が通っています。残念ながら今回の応募作にそれはない。あとは構成なんですが、いや、僕的にはこういうのがクールなんですよ。
まあ、今回は約束を果たしたということで、いいです。次回はもっと本格的に派手にエンターテインメントなやつを書いてリベンジを図る所存です。
というわけで、一次選考通過作品をTHATTA ONLINEに掲載します。応募時からかなり改訂はしましたが、大筋は変わっていません。ぜひお読みください。交通渋滞ハードSFです。ハードSFなんですってば。
ちなみに、元ネタになっている論文は
Traffic jams without bottlenecks
Phase transition in traffic jam experiment on a circuit
の二本です。興味があるかたはぜひどうぞ。
それでは交通渋滞SFをお楽しみくださいませ。