本家BookReviewOnline(PC向けサイト)もご参照ください。
モバイルならfacebook、またtwitterでお知らせします

ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。


機械の精神分析医






 7月です。本日は七夕ですが、史上最遅(西日本は平年に対し約3週間遅れ)ながら、ともかく梅雨のさなか。

 さて、今月はいつもの短編連載をお休みして、短編集のプロモーションを行います。これまで読者のみなさまを辟易させるほど連載を続け、都合46回(前後編を含む)まで続いたわけですが、ある程度まとまった形のほうが読みやすいのではないかと、このたび単行本を作成しました

 どのような形が良いか少し悩み、Amazon経由のPOD=オンデマンド出版(NextPublishing Authors Press)+kindleの電子書籍(KDP:Kindle Direct Publishing)を使うことに。これならば通常の書籍と同等の扱いで、Amazonが利用できる地域ならどこにでも届けられます。

 自分でいうのもなんですが、まとめて読むことでより面白くなっていると思います。電子書籍に抵抗がない人なら、kindle版の方が価格的にお得(kindle unlimited契約なら無料)。やっぱり本は紙という人は、表紙が地味すぎ!ながら、POD版(ソフトカバー書籍)もそれなりの見栄えがします(カヴァンの『アサイラム・ピース』単行本版風)。両者の価格差は製造原価の違いが要因ですので悪しからず。

 プロがコミケや文学フリマで売る時代です。そういう売り方でも良いのかも、とも考えました。若けりゃそうしたかも。ただし東京在住ならともかく、近在でフリマが開かれる機会も少ないですし、出店のための手間や元手もかかります(出店費や交通費、在庫の準備)。PODや電子書籍ならば、事前の負担も最小限で済みますからね(旧来の自費出版と違って、経費はすべて一冊ごとの売れた価格で賄われます)。

 筆者も同類ですが、最近は本業をリタイアした自称作家が急増しているそうです。新人賞応募などがあると、自伝まがいのフォーミュラ・フィクション(ある種の願望充足小説)を書く老年応募者が殺到して、増えすぎたシカやイノシシなみの害獣扱いになっているとか。駆除されないまでも、有力な若い作家がたくさん出てくる中、受賞できる確率はとても低いでしょう。将来性がない、というか、そもそも活動可能な賞味期間・作家余命が短かすぎる(と思われる)からです。

 とはいえ、個別の作品の中には見るべき(と思われる)ものもある。いま話題の年金不足問題と同じく、自分でなんとかすべきです。カクヨムとかのオンラインが実感に乏しいのなら、書籍実体と電子版の両方を持てる上記サービスあたりが、バランス的にはちょうど良いのではないかと。ファンジン魂があれば簡単……って、この2段落分は余談でしたね。

機械の精神分析医

【内容紹介】
 シンギュラリティは来ないかもしれません。人間を凌駕する人工知能なんて、すぐには現れないでしょう、おそらくは。
ただ、それでもAI=人工知能がわれわれの生活に浸透してくるのは、間違いありません。スマホやテレビどころか、ボルトの中にまで入ってくる! よく聞く5Gは、そんな社会を生み出します。

  本書の中では、AIは単に「機械」と呼ばれています。 もはや当たり前の存在、どこにでもある機械は、さまざまなトラブルを引き起こします。工業製品の場合、トラブル=故障は交換して終わりというわけにはいきません。誰かが、その原因を突き止め、対策を打たなければいけないからです。しかし、どこでもとなると、ロボット心理学者スーザン・キャルヴィン博士のような高給取りは使えません。低コストの一般技術者が、対応することになるでしょう。本書の《機械の精神分析医》は、そんな連作です。

  この本の中では、そういった明日の「機械と人」のお話が収められています。リアルなものから幻想的なものまで、十作品を取り揃えています。極近未来という舞台設定は藤井太洋さんとも共通しますが、ここに描かれたものは、もう少しシニカルな明日かもしれません。

【目次】
1.機械の精神分析医
2.機械か人か
3.にせもの
4.衝突
5.シュムー
6.マカオ
7.人事課長の死
8.ノンバルとの会話
9.魔天楼2.0
10.ビブリオグラフィ

1-5 までが《機械の精神分析医シリーズ》、6-10はAIにまつわる独立した短編です。

【各作品のあらまし】
 無人攻撃機の中に潜む思いがけない映像の正体「機械の精神分析医」、スーパーコンピュータから聞こえてくる何ものかの声「機械か人か」、新規採用予定の幹部候補ははたして人間なのか「にせもの」、空中バスの衝突事故に関わる過去の事例「衝突」、かつて親友だったベンチャー社主からの依頼「シュムー」。田舎都市を巻き込んだカジノ騒動の顛末「マカオ」、やり手課長に降りかかる過酷な運命「人事課長の死」、人間の感情を操る人形との会話「ノンバルとの会話」、神戸にそびえる摩天楼から届く招待状「魔天楼2.0」、亡くなった父親の遺品から見つかる意外な生涯記録「ビブリオグラフィ」。

 四六判並製(ペーパーバック)本文248ページ、ページ当たりの文字密度は一般文芸書と同等です。なお収録作品は、THATTA ONLINE掲載版から大きく改稿されています。

 左の写真、またはこちらをクリックするとAmazonの販売ページが開きます。

 


THATTA 374号へ戻る
トップページへ戻る