岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。一部blog化もされております(あまり意味ないけど)。


 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、
それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

吾妻ひでお『ひみつのひでお日記』(角川書店)

装丁:舘山一大


 本書はこれまで著者がHPで公表してきた日記に、加筆(文字の活字化や枠線の追加など)がなされたものである。日記は、2009年10月分まで自費出版されてきたため、同年11月から2011年6月、2014年4〜6月が収録されている。メインはJK(女子高生)の生態を写したイラストと日々の生活なのであるが、この中には読んだ小説に対する言及もいくつかある。以下に、SFないしそれに近い作品のみを抜粋し評価とともにをリスト化した。著者名はあえて削除し、また評価の原文も要約したため、吾妻ひでおの嗜好を知る上での参考情報としてご覧いただきたく。

2009/11
  『狂乱葛西日記20世紀remix』○ 大森さんが躁病であることは確信した
  『時間封鎖』○ とんでもない大ボラネタ
  『All You Need is Kill』○ 文章にクセがあるがストーリーは良
  「息吹」(SFM2010/1)○ 不思議なロボットSF
  「クリスタルの夜」(SFM2010/1)○ ハードでほのぼの
  『奇譚集』○ 冷たい手触りのするハードボイルド
2009/12
  『バレエ・メカニック』△ 書評は絶賛だったがありがちなネタ
  『さらば愛しき大久保町』◎ ギャグのパターンをしっかりふまえた傑作
  『火星ノンストップ』△ リュウ編集長の言う通り「SFは勝ったが、SF小説は負けた」のかもしれない
  『烏有此譚』△ 読者に喧嘩売ってるよね
  「フェイス・ゼロ」(SFM2010/2)○
  『無限記憶』△ 謎の解明がうやむやでがっかり
2010/1
  『天冥の標1』○ 読ませるけど、話はこれからという印象
  『聖家族』△ 疲れた
  『アッチェレランド』△ 読みにくい。つまんない。
  『あなたのための物語』△ 救いがない。
  『粘膜人間』○ グロで血腥いのに爽やか
  『ペルディート・ストリート・ステーション』△ キャラに魅力なくストーリーもモタモタ
2010/2
  『さあ、気ちがいになりなさい』○ 古びていない
  『壊れた少女を拾ったので』○ 文庫化
  「呪文」(SF JAPAN 09AUTUMN)△ あまりにも救いがない
  『後藤さんのこと』△ 笑える1本以外、何がなんだかわからない
  『キマイラ青龍変』○ 暴力のインフレーションがとめどなく続き、いつものパターンになる
  『時の娘』○ 傑作ぞろい
2010/3
  『魚舟・獣舟』○ オリジナリティあるSF
  『地球移動作戦』△ 勇気と愛を称える大宇宙東映昼ドラ
  『アホの壁』◎ ああ!これは俺のことだ!
  『NOVA1』○ 円城塔以外は面白い
2010/4
  『天冥の標II』△ 後半色恋ざたの感傷的な話になってしまい興醒め
  『製鉄天使』○ 熱い!燃える!血が騒ぐ!
  『アンブロークンアロー』○ 現実があいまいになってゆく、不思議な感覚
  『魔法使いの弟子たち』△ 読ませるが何か新味がほしかった
2010/5
  『こぼれおちる刻の汀』△ SFとミステリの組み合わせに失敗している
  『不思議の扉 時間がいっぱい』○ 粒揃いの短編集
  『不思議の扉 時をかける恋』○
  『筒井康隆コレクション 秒読み』◎
  「オルダーセンの世界」○ ここ数年絶好調だ。この作品も長編で読みたい
  『いいかげんワールド』○ 虚無感が漂っていていい感じ
2010/6
  『きみがぼくを見つけた日』○ 不幸なタイムトラベラーの幸せな一生
2010/7
  『変愛小説集』○ 初読だったことに気づく
  『NOVA2』○
  『五色の舟』○ くだんはうそをいわぬ
  『アードマン連結体』△ 「マリーゴールド・アウトレット」救いのない話だが佳作
2010/8
  ネットで「SF大会」について読む
  『変愛小説集2』○ 野生のチアリーダーの群れ、てのが笑えた。
  『悪の教典』◎ ひどい話だが面白い。
2011/3
  『ダイナミックフィギュア』○ 設定が面白い
2011/5
  『NOVA4』○ 「宇宙以前」読むのがしんどかった
  『異星人の郷』○ 重厚で読みごたえのあるファーストコンタクトもの、ちょっとダレる
  『天国と地国』○ 異形のイメージと戦闘シーンがすばらしい
2011/6
  『異形コレクション 進化論』○
  『華竜の宮』△ 物語の主題が政治陰謀になっててさっぱりSFじゃない

  吾妻ひでおはコアで夾雑物の少ないSFを好むといえるが、◎を入れた絶賛作品はギャグの極みを追求した田中哲弥や筒井康隆である。貴志祐介『悪の教典』が入っているのはやや意外。救いのない話の評価が低いのは、自身の体験からやむを得ないことだろう。円城塔や英国系作家など、読者に不親切な作家は評価が低いようだ。

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