みだれめも・出納日記 14年3月

水鏡子


 あいかわらず体を動かさない生活。ただしサラダ類をよく摂り、食べる量を若干減らす。コンスタントに3kg減の体重を維持していると、意外と体感的に効果が出た。これまでこたつから起き上がるとき、「よいしょ」と言っていたのだけれど、「よいしょ」と言って起き上がれる。血糖値の検査結果も、前2か月分まとめて落とすことができて、重畳。これに仕事が加われば先行きは明るい。
 3月30日にやっと配属通知が届いた新年度の仕事の方は拘束7時間週5日だが、土日祝日にも勤務日があったり時間帯も不規則な遅番早番のある変則勤務で、ぎりぎり日曜例会参加時間は確保できたが、それに合わせて阪神間のブックオフを歴訪するのは不可能になった。平日に回ってもなあ、半額セールをやってないのだ。

 SFMのオールタイムベスト投票。ここ数年(というか十数年)の充実ぶりとノスタルジックな愛着に、なにを選ぶかこれまでになく迷った。そんな事情で今回は(今回から)、長篇、短篇、作家枠、それぞれについて同じ作家を選ばないという方法を採った。ベストに選んだ作家についてはベスト作品を選ばないという選択。小松・筒井・星は作家で、半村・光瀬は作品でという風に。ラファティなんか常識的には作家だけれど、どうせだれも選んでくれない『宇宙舟唄』を盛り込みたくて作品にした。短篇部門では送った直後に、ウルフの「ケルベロス」とか荒巻「大いなる正午」を思い出し、失敗したかなと反省。8年後には気をつけよう。

○3月の結果
支出計:79,302円。前年3月179,471円。100,169円減。
入手書籍:(→本の雑誌)

 消費税UPを前に駆け込み消費をしたものの、所得税の還付が76,429円あって立派な成績。あと去年は2月にバカ勝ちしたパチのプラスをこの月調子に乗って全部吐き出している。
 消費税対策は 大阪までの回数券を3組。3か月で使いきれるかどうか若干微妙。トイレットペーパー。米。レトルトカレー10個。シェーバー替刃。故障時対策として予備のデスクトップ中古パソコン。シェーバー替刃が7,000円、パソコンが24,000円。こんな時代になったんだなあ。

3月1日(土)〜3月28日(金)
【トピック】

【読んだ本】本62冊、漫12冊 計74冊 累計262冊 本のみ194冊

(漫)
 石森章太郎『おてんばバンザイ』★★★藤田和日郎『からくりサーカス(4)(5)』COCO『今日の早川さん(1)(2)(3)』、ほか12冊

 1月の本宮ことは、2月の結城光流に続く3月のまとめ読み作家は舞阪洸。もともと西尾維新の一気読みが手強すぎて、失礼ながら口直しになる、数をこなせる作家というのが選択基準で、できれば入手可能な全作読破という目標を掲げているのであるけれど、今回は読み続けるテンションがなかなかに維持しづらい。
 『鋼鉄の白兎騎士団』のシリーズが楽しめたのでとりかかったのだが、ここまで読んだ限りではこのシリーズがいちばんいい。
 西洋中世風世界で、女性だけの名門騎士団に入隊したガブリエラが騎士団や国家の危機を、味方だけでなく敵の被害を最小限に抑える腹黒戦略を駆使して手柄を立て続け騎士団史上最年少の騎士団長になる話。兵糧攻めと雪隠詰めのヴァリエーションという意味で戦略個性が一貫しているのがいい。
 どの小説も、基本構造は戦記シミュレーションで、たとえば『ガブリエラ戦記(1)〜(6)』『火魅子炎戦記(1)〜(10)』はこれだけの冊数をかけて、ただひとつの攻防戦を延々書き続ける。これに男・(美少)女比3:20のキャラ配分でめったやたらの風呂シーンやおっぱい鑑賞シーンが混ざる仕様と、中学生向けの節度を守ったお色気シーンが満載される。早い話がおままごと。
 設定として感心したのは『乱☆恋』で、群小国家が乱立する西洋中世風世界の中でなんの取り柄もないせいで併合する旨味がないためまともな軍事力をほとんど持たずに平和を享受していた国の王子が主人公。取り柄がなかったはずなのに希少な鉱物資源がみつかったせいで、軍事力のない王族は、外交知略の限りを尽くし近隣諸国と友好関係を築くことに邁進成功していた。そんな国の王子にある日突然王様が言った。じつはお前に婚約者がいる。近隣諸国の王女様たち全部合わせて16人。どうする?
 『落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国』は人間国家に滅ぼされかけている魔女の国に、空から若き六天魔王が降ってきて、彼の軍略のもと反転攻勢に出る話。
 小説には著者から読者に向けたコミュニケーション・ツールといった機能があるわけだが、その方向ばかり意識して小説としての作り込みをあまり気にしないものがラノベにおいてはそれなりにある。読者といっしょにほたえあうことが主目的になっている。この作者などその典型といっていい。ただし『鋼鉄の白兎騎士団』シリーズは小説世界がしっかり作られ、キャラいびりも読者とのほたえあいを脱して小説要素の充足に機能している。

 異様異界の状況をロジックを通じて日常的現実に復帰させていくのがミステリで、ロジックを拠り所に小説世界を異界化していくのがSFだというのが、ぼくの思うところのSFとミステリにおける論理性の在り方の違いであると考えているのだが、ファンタジイにミステリ・ロジックを持ちこむとどうなるか。著者本人はミステリ仕立てのつもりだろうけど読んだ感触はSFである。
 『新本格魔法少女りすか』は魔法の国長崎からやってきた魔法少女と世界の支配者になることを決めた少年の小学生低学年コンビが、世界を破壊しようと目論む魔法少女の父親(ニャルラトテップの送り名をもつ)と彼の部下の5人の魔法使いと戦う話。おもしろい。性格的には『ネコソギラジカル』をハードにした感じ。雑誌「ファウスト」連載分2篇と書下ろし1篇で1冊を構成するかたちで3冊出して、次巻最終巻とあとがきで書いてから7年間本が出ていない。「ファウスト」第7巻に第10話が掲載されたが、第8巻には掲載がなく、そのまま音沙汰がない。
 『刀語(1)〜(12)』は、講談社BOXで12カ月毎月刊行された意欲作。
 尾張幕府が盤石の治世を敷く時代。その刀を手にするもの天下を得るとまで言われた戦国時代伝説の刀鍛冶が作った12振りの完成変体刀を収拾するため、幕府の奇策士とがめと刀を使えない剣士虚刀流鑢七花は刀狩りの旅に出る。彼らの前には変体刀に選ばれた奇怪きわまりない剣士たち、変体刀を横取りしようとする真庭忍軍、とがめの宿敵否定姫らがたちふさがる。
 最初、風太郎忍法帖のような小説かと思った。読みだして大仰な言い回しに、なんだこのへんな馬鹿っぽい書きっぷりはと失望した。四五冊読んだ時点で、見直す。作者は小説を作っているのではない。神話を作っているのだ。後ろの方は若干小説っぽくなり理に落ちすぎるきらいも出てきて成功作と云えるかどうかは微妙だが、これは日本語で書かれたラファティだ。性格的には『めだかボックス』の後半に近い。
 『ザレゴトディクショナル』は、創作秘話+冗談を交えた戯言シリーズ用語辞典。楽しい。

【買った本・拾った本】主な本20点内

 ジョン・グリシャム『巨大訴訟 上下』頂き本(白石朗様 多謝)
 マイケル・コナリー『ナイン・ドラゴンズ 上下』頂き本(古沢嘉通様 多謝)
 『知って得する株主優待 2014年版』『会社四季報』頂き本(証券会社様 多謝)
 A・マルティネ編『言語学辞典』300円
 アンソニー・S・マーカタンテ『空想動物園』200円
 コンスタン・ルーアク『アメリカ文学とユーモア』100円
 山岡明『庶民の戦後史 生活編・風俗篇』各300円
 柴谷篤弘『今西進化論批判序説』200円
 クリスティン・フィーハン『愛をささやく夜明け』275円
 カミロ・ホセ・セラ『ラサリーリヨ・デ・トルメスの新しい遍歴』52円
 ジェシカ・スポッツウッド『魔女の花たち』175円
 西尾維新『偽物語 下』350円、『傾物語』『猫物語 白』『悲鳴伝』各787円、『終物語 中』1,575円 ※今月買った最高値本
 舞阪洸『鋼鉄の白兎騎士団』『ガブリエラ戦記』『火魅子炎戦記』『落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国』他計35冊。2,705円
 風野真知雄『妻はくノ一(1)〜(10)』各80円
 津堅信之『日本のアニメはなにがすごいのか』840円
 赤木かん子『こちら本の探偵です』52円
 石森章太郎『おてんばバンザイ』1,000円
 小鷹信光『ハードボイルド・アメリカ』500円
 坂本公延『現代の黙示録 ウィリアム・ゴールディング』105円
 別冊宝石『ディクソン・カー篇』200円
 『小説幻妖 (1)(2)』各500円
 『アムレット』『悪魔の城』『カンガルー作戦』『銀河を呼ぶ声』『剥製の島』『魔法の世界の凱歌』 3冊100円※今月買った最安値本

 西尾維新と舞阪洸で7,000円。購入費用の四分の一を占める。

【株式成績・等】3月28日まで

 微々たる歩みで回復を続けてきたが、ウクライナ危機で暗転。2月の前年収益に匹敵する含み損から前年収益を軽く凌駕する含み損へと傷口はさらに拡大する。
 3,000円平均で購入していたコロプラを3,300円〜3,600円で全て売却。その直後に4,500円まで上昇してのけ反る。それが4,000円を割り込んだのでこれ幸いと買い込んだのが悪夢の始まり。ただひたすら下げ続け、なんと2,400円まで下落する。
 やっぱりゲーム株との相性は悪い。


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