みだれめも・出納日記 14年2月

水鏡子


 検査の結果を訊きに行く前に、医院から電話があった。薬を増量したのに今月も血糖値が上昇している。慌てて診察に行くと医者にこってりしぼられた。本気で体調管理をやりなさい。
 日曜日の例会以外は、週に2回程度食品スーパーと古本屋に出向くだけ。その他の日は寝床とこたつ合わせて1日20時間ほど寝ころんでんではいかんわなあ。残りの4時間だってパソコン前に座って株とスパイダーソリティアをやっているだけ。小食ですらカロリー消費が困難なのに、暴食を繰り返しては因果関係は明らかだ。ここ数カ月古本購入で動き回るより、こたつごもりで所持するラノベの消化にいそしんだのが健康面で更なる裏目を出したことになる。とんと聞かなくなった言葉だが、カウチポテト症候群である。体重は過去最高レベルから減らず、外出時の自転車は後続車にどんどん追い抜かされる。10kgとまでは言わない。5s痩せて6か月維持できればたぶん血糖値は元に戻るはずなのだけど、それができない。ほこりだらけの部屋の中、体を動かさない生活に思いっきり馴染んでしまった。強制的に体を動かさないと正直やばい。

 そんなわけで、新年度から働きに出ることにした。1日6時間の週5日勤務。最低でも現在の50倍程度の運動量を確保できると思われる。なまった体が持ちこたえるか。
 職場のつきあいや昼食を正価で摂ることで、年初の予定額より支出が伸びることになるため、年間支出枠の補正拡大を検討したが、給料から天引きされる社会保険料を支出対象から除外することで、当初の枠を堅持することにした。年金と給料を合算すれば、支出予定額より収入予定額が若干上まわる。
 ということであと1ヶ月、この自堕落な生活を続けることにする。

○2月の結果
支出計:211,242円。前年2月49,841円。161,401円増。
入手書籍:(→本の雑誌)

 いや、まあ、去年の2月はパチで7万を超える勝ちがあったので、比較しても仕方がないし、パソコン修理に4万円かかっているわけだけど、それらを差引しても4万円増。なにがあったのかと調べたら、法事があったのを忘れていた。それに歯医者と3DSソフトが1本。

2月1日(土)〜2月28日(金)
【トピック】

 ソチ五輪と西尾維新と結城光流と闘神都市で2月が終わる。
 ソチではバイオリズムがガタガタになりゴミ出しに3回連続失敗する。ゴミ出しだけのために徹夜をする。3DS版「闘神都市」は名作「闘神都市II」のリメイク・コンシューマー・ヴァージョン。購買層がよく見えない謎のソフトであるけれど、コンシューマー向け移植作品としてはまずまず納得。四半世紀ぶりのプレイで後半の展開を完全に忘れていて、おかげでそれなりに感動する。そうかこれはPC98ソフトだったんだなあ。
 パソコン修理で1週間。セキュリテイのない予備のノートパソコンでネットをうろうろしていてきっちりウィルスを拾う。

【読んだ本】本66冊、漫42冊 計108冊 累計188冊 本のみ132冊

 本宮ことは『聖鐘の乙女(6)(7)(9)(10)』
 本宮ことは『宝石姫は微笑まない』
 結城光流『少年陰陽師(1)〜(36)、短篇集(1)〜(4)、外伝(1)』★★★☆
 結城光流『我、天命を覆す』
 結城光流『篁破幻草子(1)』
 西尾維新『サイコロジカル 上下』★★★★、『ヒトクイマジカル』★★★☆、『ネコソギラジカル上中下』★★★
 西尾維新『零崎双識の人間試験』★★★『零崎軋識の人間ノック』★★★『零崎曲識の人間人間』★★★『零崎人識の人間関係 匂宮篇・伊織篇・双識篇・戯言遣い篇』★★★☆
 宝島社『西尾維新クロニクル』★★★
 北方謙三『岳飛伝』★★★★
 上栖綴人『新妹魔王の契約者(1)〜(3)』★☆

(漫)
 暁月あきら『めだかボックス(1)〜(22)』★★★☆、川原正敏『修羅の門U(5)〜(10)』『ふでかげ(1)〜(5)』高山しのぶ『ハイカグラ(5)』弓月光『甘い生活II(4)』『瞬きのソーニャ(2)』なるしまゆり『少年魔法士(16)』『鉄壱智(10)』赤衣丸歩郎『ゴルフ13(4)』ほか42冊

 西尾維新「戯言遣い」とスピンオフ「零崎一賊」を一気読みして、疲弊して、一旦離脱する。話自体は読みやすいし安っぽいというか荒唐無稽。ミステリというよりSFである。周到に書き込めば重厚な傑作に仕上がった気もするが、著者の目線はそんなところにないのだろう。どんどん漫画っぽくなっていき、「人類最強」や仲間たちとともに「人類最悪」と配下の「十三階段」と対決する最終巻など大枠的にはあほすぎる。個々の作品をみても単発としてはいろいろ物足りなさ満載で、完成度ではむしろ「零崎一賊」の方が上位だがこちらはもともと裏設定の補強シリーズ。「零崎一賊」を加えたうえで、シルーズ全体としては傑作である。
 以前に1冊だけ『化物語 上』を読んだ時、アニメを先に見ていて、発想展開はともかくテンションや文章表現が平板に感じたのだが、あれはぼくがアニメにはまっていたせいかもしれない。少なくともこのデビュー・シリーズは書き綴ろうとする切迫感とテンションで最後まで引っ張って行く。文章表現に関していえば、むしろキャラ設定とならんで他の作家を圧倒している部分である。故事成語を多用し、ずらし、深みのある謎の言葉に置き換えていく技術は瞠目に値する。言葉遊びで喚起されたイメージを異能として具現化し非常識と非道を織り交ぜながら倫理的にはまっとうな箴言に作り替えていくところはたぶん著者の真骨頂だといえる。

 大富豪の館のある島に天才たちが招待され、そこに連続殺人が起きる第1作『クビキリサイクル』は楽しめるけどまあそれだけ。居ずまいを正したのは、第2作『クビシメロマンチスト』京都に帰ってきた主人公の周囲で展開されるそれぞれ無縁の二つの連続殺人。ひとつは無差別無関係にしかみえない連続殺人。ひとつは濃い人間関係のなかでの連続殺人。シリーズ全体、メインの話にほとんどからまず傍観者的位置づけでずっと話に絡む零崎人識は登場する。彼の造形が一番の魅力である。西尾維新を読むならとりあえずこの2冊を読むこと。それでついていけないようなら読むのをやめたほうがいい。大枠の話はどんどん漫画になっていくから。

 『めだかボックス』はその西尾維新が原作の少年ジャンプ連載漫画。人工の異能の天才を生み出すことを裏の目的とする学園で、一年生で生徒会長になった万能の天才少女がその裏の目的やマイナス能力者、言葉使い能力者たちと対決する。最初の何冊かはふつうだがだんだんいい意味でめちゃくちゃになる。物語としては小説よりさらにいいかげんだが漫画だからこれでいいのだと割り切っている気もする。

 本宮ことはの読み残しとともに、もう少し読むのに負担の少ないものをと取り上げたのが、結城光流『少年陰陽師』である。3冊105円で20冊ほどまとめて拾ったのでいい機会だと読み始める。文章は達者で構成もきちんとしているのだけれど、どこか心がこもらない機械的に書き継がれた印象で、最後まで飽きずに読めるか不安に思いながら読み進めたら、七冊目当たりから気が乗ってきた。面白いじゃん。
 同じように途中から面白くなる本宮『幻獣降臨譚』とは正反対。あちらは小説技術が自分の小説世界を文章化するのに追いつけず、書き継ぐなかで上達していくのであって世界に対するこだわりは初めからあふれている。『少年陰陽師』は逆に書き割られたキャラや背景を動かすなかでだんだん本気になっていったという感じ。
 安倍清明の孫にしてその後継とみなされる安倍昌浩が、祖父の清明にからかわれつつ、清明の式神十二神将とともに大妖怪と戦う話。藤原道長の一の姫藤原彰子との恋物語が太い横糸をなす。
 基本的に読みきりではなく3〜5巻単位で一つの長篇仕立てになっている。
 第一部「窮奇篇」は大妖金毛九尾に住処を追われ、大陸からこの国に逃げのびてきた大妖窮奇とその一党が、京の都に居を定め、九尾に傷つけられた体を回復させるため、当代きっての見鬼の才を持つ藤原の姫の血肉を啜ろうと歯牙を伸ばすという話。この設定でほとんど最終話は決まったみたいなものだが、現在までの最新作でも九尾はまだ気配はない。
 第二部「風音篇」。安倍一族を仇と狙う霊力の強い女。その背後には黄泉平坂を挟んで地上への侵攻を目論む死者たちの謀略があった。
 第三部「天狐篇」。九尾の意を受け、同族の皆殺しを図る妖怪と、その姉狐の物語。葛葉伝説拾遺。
 第四部「珂神篇」。舞台は出雲。八岐大蛇を奉じる一族との戦い。
 第五部「玉依篇」。伊勢というか裏伊勢と呼ばれる一族との錯綜した戦い。
 第六部「籠目篇」。播磨陰陽師との戦い。本篇次篇と件の比重が半端なく高まる。
 第七部「尸櫻篇」。舞台は吉野。穢れた桜の生み出す異界で昌浩と清明が相争う。
 構成が類型的でつくりものくさい第一部、展開が強引すぎる第二部を経た、第三部以降は自然体でシリアスあり笑いありですなおに物語にひたりこめる。成親、昌親、昌浩の安部家三兄弟に焦点をあてる短篇集も悪くない。「臨兵闘者皆陣列在前」を「臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り」と書き下したのは初めて見た。
 単行本サイズで出た『我、天命を覆す』は若き日の清明が十二神将を下すまで。なんとも説教臭くてどこかの宗教系の訓話を読まされている感じ。外伝『翼よいま、天へ帰れ』は第一部「窮奇篇」の兄妖怪が再度京の都を襲うのを、大陸から来た天馬とともに打ち破る話。つまらない。短篇は悪くないのだが、1冊分の長さでは長篇をこなしきれないみたいにみえる。
 『新妹魔王の契約者(1)〜(3)』は『はぐれ勇者の鬼畜美学』の著者の新シリーズ。『はぐれ勇者』よりエロ度アップ。というかこんなものを中高生向けレーベルで素知らぬ顔して出したらだめでしょう。

【買った本・拾った本】主な本20点内

 コニー・ウィリス『空襲警報』頂き本(早川書房様 多謝)
 マージョリー・M・リュウ『ダーク&スティール (2)(3)』各250円
 アリソン・ジェームズ『黄金の指に奏でられ』250円
 ローレル・K・ハミルトン『嘆きの女神の秘密 上下』250、175円
 グレッグ・ベア『ダーウィンの子供たち 上下』各64円
 エチザベス・マクラッケン『ジャイアンツハウス』80円
 結城光流『少年陰陽師(17)〜(32)、短篇集(2)(3)(4)、外伝』各35円、『同(33)〜(36)』定価、
 『我、天命を覆す』552円、『モンスター・クラン(2)〜(5)』各80円
 本宮ことは『聖鐘の乙女(6)(7)(9)(10)』、『宝石姫は微笑まない』各175円
 陳舜臣『中国ライブラリー 秘本三国志 上下』各80円
 阿部智里『鳥は単に似合わない』80円
 奥泉光『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』80円
 大塚雅春『女忍秘抄』105円
 別役実『風の研究』105円
 『週刊朝日 3月7日号』400円

 北方謙三『岳飛伝』1,680円 ※今月買った最高値本

 『灰かぶり猫と半月の騎士(3)』『瑠璃龍守護録(1)』『鏡の中の戦魔』『脱衣伝』『ねじれた世界の聖乙女』『裏ギリ少女』『サクラダリセット(6)』『竜殺しの過ごす日々(3)』『鋼鉄の白兎騎士団(6)〜(9)』他多数 各35円※今月買った最安値本

 今月は、新刊を文庫本数冊を除いて『岳飛伝』しか買っていない。その代わり半額セールで西尾維新と本宮ことはとパラノーマルの半額本をそこそこ買い込む。
 古本市場のラノベ3冊105円セールが終了する。期間限定セールだからまあ、しかたがないのだが、セールが終わった途端、それまで恒常的に2冊105円で売っていた店まで1冊105円に戻してしまった。こんなことなら、カスでももっと買っとくのだった。

【株式成績・等】2月28日まで
 2月になって大惨事。惨敗などという表現では追いつかない。前年売買益に匹敵する含み損を抱えてほぼその前後の上下動で推移する。ロウリスク・ロウリターンからミドルリスク・ミドルリターンに切り替えてきっちり裏目を出した。
 昨年の儲けがあるので心理的には余裕もあるが、書庫建設資金獲得計画は大きく後退した。


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