みだれめも・出納日記 13年5月

水鏡子


 全然気がついていなかったのだが、前号のthattaは通巻300号だったのだね。早く気づいていたら、『ハヤカワSF文庫の研究』を1号遅らせて100号掲載の『ハヤカワSFシリーズの研究』に合わせるかたちにできたなあ。
 ちなみにSFセミナーでは、代島くんから文庫目録はぼくが第1号としたものより、もうひとつ古い版がある(持っている)とのこと。また創元小浜くんからは、在庫本の処分については、倉庫スペースの有効活用のためにも大量に売れ残った本ほど早く処分の決定がされ目録落ちが早くなるとのこと。ぼくの推測が真逆であるとの指摘をいただく。

 5月末時点で3カ月以上鎌池和馬本が40冊、机の横に積み上がっている。「みだれめも」でまとめるつもりで切り口を考えているうち記憶が劣化して細部どころか大枠まで思い出せなくなっている。そんな理由で今回も「みだれめも」はお休みです。

〇4月の結果
支出計:137,096円。前年4月214,313円。77,017円減。
入手書籍:296冊 46,884円。累計1,019冊。前年累計720冊

 大幅減。原因はSFセミナーが5月になったこととか。それより問題は本の増え方。4カ月で4桁!いくらなんでもやりすぎだろう。「本をひらう日々」などとコラムに名前をつけたのが悪かったのか。ネタを求めて徘徊がパワーアップしている気がしなくもない。

4月29日(日)〜5月28日(火)
【トピック】

 5月1日。明日は恒例の東京行きである。行くための準備をしなけりゃと思いながらうとうとしていてそのまま爆睡。気がつくと朝の6時前である。あわてて旅支度をして朝飯を食い、生ゴミを出しに行く。6時をだいぶまわっていていて、空は雲が厚くなり起きた時より薄暗い。やばいなあ、雨かよと思いながらゴミステーションにいくとゴミ出し日のはずなのにだれもゴミを出していない。どうやら1日間違えていたらしい。最近平日は、曜日や日にちがすこしあやふやになっている。いかんなあと反省しながら、とりあえず出発までまだ1日あると株データとかをチェックしながら時間を過ごし、ふと外を見ると8時過ぎの外は真っ暗け。午前6時に起きたつもりが午後6時の勘違いだったのである。じつに目を覚ましてから3時間、午前と午後を勘違いしていたことに感動する。得難い体験である。

 5月2日。東京行き。今年はビックボックスの古本市と日程が合わないので新横浜で下車して八王子の古本祭に。道路を封鎖し車道数百メートルに渡ってテントが並んでいる。市ぐるみの町起こしなのだなあ。こんな施策をうてる文化度に感心。三一書房のゾッキと思しい『少年小説体系』や『香山滋全集』が数冊1,000円〜1,500円で並んでいるのに驚愕する。宅急便を使わないつもりだったので、ためらったすえに其々2冊拾う。ためらいの理由は(1)とにかく重い、(2)これを買うといずれ全巻揃えたくなる、どこに置くんだ。マーガレット・マーヒー『地下脈系』文庫版諸星大二郎などを3冊百円で買う。
 旅館に着くと宿泊客の4人に3人は外人さん。日本旅館はそんなことになっているのだ。

 5月3日。SFセミナー当日。ロビーでは彩古さんや北原(尚彦)さんが店を広げている。彩古さんは初期SFMやSFシリーズなどを安く放出。自分の持っている本に自信がなかったので、丸表紙を500円で4冊、角綴じ200円を2冊、SFシリーズを200円で3冊、『宇宙人フライデー』を500円で買う。SFシリーズが1冊ダブる。「獅子王」大量放出に心が動くが、まだこの時点では宅急便使用のふんぎりがつかず(結局最終的には活用する)、どこに置くんだ思考の末断念する。そのままロビーでだらだら。
 食事やサ店でいろんな人に株自慢。晩飯は良平先生と。
 合宿では中村融引越し準備放出本を中心にしたオークションがある。ぼくもラファティ刊行記念にとある事情で複数冊所有している『悪魔は死んだ』を3冊放出。どんどん値が上がるので3000円で打ち切る。
 翌日は、日下三蔵、彩古、米澤夫人とそばやで食事。昔話に興じる。その後日下氏と神保町を回る。別れた後、秋葉原に行き岸場くんとばったり。昼食をとりながらSF大会の話を聞く。

 5月12日。例会前に古本回り。「六甲奨学基金のための古本市」で店番のおばさんに「この本はどうですか」と声をかけられる。当人が気に入って並べていたところの本を手にしたことが原因らしい。少し話し込む。そのとき手にした本が元々社の『スラン』。1冊だけあるのが変に思えて他になかったかを聞いたところしばらく前まで『火星人記録』があったとのこと。その人ともかなり話し込んだとのこと。そのあと、ラノベ3冊105円セールが続いている西宮の古本市場と105円本を含めた半額セールをやっていた高槻のブックオフに行く。関西大学のそばにあるせいか内容が充実。合わせて70冊。今月も200冊超えコースか(溜息)
 例会に行くと久しぶりに堺三保と荒川ジュニアが来ている。荒川ジュニアは会社をやめることにしたとのこと。若い人は大変だ。

 5月19日。例会に行く。腐女子のおばさま方4名、堺、ジュニア、大野万紀、青木社長と久しぶりの大人数。

 5月25日26日。恒例の青心社グループ浜松旅行。前週後半に株でひどい目にあったのでもっぱら青木社長と株談義。夜のブラジル料理を食べすぎて腹が膨れて眠れず。睡眠不足で翌日お寺行脚する。
 青木祐子と十文字青の読みたい本がみつからず、古書店、新刊書店を動き回る。

 5月24日〜27日。近くの古本チェーンが4日間の決算半額セール。初日と最終日と合わせて50冊購入。
加古川の古本市場で今年出版されたラノベが105円でいっぱい並ぶ。十数冊をまとめ買い。知らない名前の作家ばかりで、書いてる今も何を買ったか思い出せない。だぶりそう。

【読んだ本】74冊(内、漫24冊) 累計270冊(内、漫134冊)

 今月は女子系ラノベ文庫のまとめ読み。

 九月文『銀の竜騎士団(1)〜(7)』★★★
 世間知らずの突っ走り姫様と朴念仁の王子様を妹溺愛腹黒兄貴分が仲を取り持ちながら国内外内憂外患を凌いでいく物語。『身代り伯爵』などでも見られる構図で良くできた宮廷陰謀活劇の典型作品。面白い。未完。

 九月文『佐和山物語(1)〜(6)』★★
 同じ著者のデビュー・シリーズ。関ヶ原の合戦のあと石田光成の牙城に転封された祓い屋系大名のところに嫁入りすることになったお姫様。ところが5月のはずが着いたところは2月末で、そのタイム・スリップの影響で光成の悪霊が活性化してといったお話。昔読もうとして、頑張って時代考証された話がラノベ会話で進められるのに耐えかねて挫折していた。『銀の竜騎士団』を楽しんだ勢いで読み進めたら、『銀の竜騎士団』ほどではないが面白かった。どちらのシリーズもいきあたりばったりではなく、前作の設定を踏まえて構想をより詰めて大きく面白くしていく。新作は新刊で買ってもよし。完結。

 村田栞『東方妖遊記(1)〜(10)外伝1』
 王朝が傾き、人の世を破壊する邪悪が目覚める時代に、聖獣たちを使役する次代の王が出現するという設定の物語。きちんと設定されてはいるが練り込まれるレベルまでの物語力はない。かなり平板。それでも書き続けられるなかで厚みは徐々に増していき、クライマックス2冊はそれなりに読み応えがある。完結。

 夜野しずく『ドラゴンは姫のキスで目覚める(1)〜(4)』・完結。

 鮎川はぎの『聖グリセルダ学院(1)〜(5)』
 長きにわたる内乱が終わり、諸侯に奉じられた最弱の王による平和の時代が始まる。平和のせいで仕事にあぶれた暗殺者の村の少女は、経歴を隠して新たな時代の担い手を育てる聖グリセルダ学院に入学。そこで彼女と似た過去を持つ第2皇子と遭遇する。前シリーズ『横柄巫女と宰相陛下』にくらべるとおちゃらけ色が強く話が安っぽい。完結。

 青木祐子『王子とワルツと懐中時計』★★★
 〈ヴィクトリアン・ローズ・テイラー〉後日譚短篇集その2。あとがきを読むと構想を練る必要がないのですらすら書けるということだが、その割には密度が濃い。著者の残りの本も読もうと思う。

 青木祐子『ソード・ソウル(1)〜(4)』
 著者最初の本は、ラノベっぽくないハイ・ファンタジイ。王子様とお姫様が主人公かと思っていたが突き放し方が尋常でなくどうやらべつのカップルが中心らしいと途中で気がつく。それにしては、物語は王子様とお姫様が中心に物語られていて、なんだこれは4巻でどうやって完結するんだと思っていたら、完結していない。打ち切りのようである。

 青木祐子『ミスティーレッド(1)(2)』
 ここからの3作はすべて一種のミステリ仕立て。謎物語としては頑張っているけれど、こじんまり(もしくは強引に)まとめてしまうので、著者の良さを削いでいるところがある。枚数的な問題もあるかも。
 未来予知能力を持つために王宮の奥に閉じ込められていた王子を連れて家庭教師の女の子は王宮を抜け出し、フランスのある街に辿りつく。その街に来る予定のかって王子の婚約者だった女の子を幸せにするために。

 青木祐子『霧の町のミルカ(1)(2)』
 裕福な家庭の少女の話し相手になることを職業とする女の子ミルカ。彼女は少女の心に分け入り、隠された人間関係を解きほぐしていく。3冊あるけど最後の物はまだ未入手。

 青木祐子『上海恋茶館(1)〜(3)』★★
 上海で絹と茶を扱う大商人ミルドレッド家の一人娘リリア。その両親は半年前に商用先で行方不明になっている。その彼女にイギリス本国から婚約者を名乗る従兄がやってきたことで、恋人として雇われることになったのが日本から来た楠木龍之介だった。
 バランス感覚が絶妙というか異常というか微妙なところのヒロインがすごくいい。1冊目は今後のつかみも含めて文句なし。構図の粗さも後続作品で埋めてくれるだろうと期待できる出来栄えで、〈ヴィクトリアン・ローズ・テイラー〉に続くシリーズになることを期待した。しかしながら、2作目3作目と更なる登場人物が増えていき、そのぶん粗さを拡大させつつ3冊で完結してしまった。残念。
 未読作品は残り4冊だけど、〈ヴィクトリアン・ローズ・テイラー〉以外は『上海恋茶館(1)』『ミスティーレッド(1)』くらい読んどけばいいかな。

 前田珠子『鬱金の暁闇(16)』保留

 十文字青『一年十組の奮闘(2)(3)』★★★
 (2)が出ているのを見落としていた。(3)を買おうと思ったら、文庫なのにそこそこ大きい本屋で発売されているけれどウチでは未入荷になっていますと言われた。
 異能のある人間を管理するために設立された学園のレベル順に編成されたクラスの落ちこぼれが集まった一年十組。その中心にいるのは37cm以内に近づいた人間の気持ちを「なごませる」能力の持ち主、花咲皆人。そんな彼を中心にした一年十組の面々に、他のクラスの異能力者が次々襲来してくる物語。
 ひたすらどこにいくかわからないめちゃくちゃ話を大量に交えながらの会話とバトルだけで進めていく作風は小説的にどうなのかと思うところはあるけれど、はまると心地いい。ライブ感覚とでもいうのかな。

 鎌池和馬『新約とある魔術の禁書目録(7)』★★★

 鷹見一幸『ご主人様は山猫姫(12)』
 まだ次は出るけど、一応完結編とのこと。シリーズとしては著者の作品中でも上位だけれど、本書自体は盛り上がりもなく単なる取りまとめのみを目指した感じ。

(漫)は
 曽田正人『CAPETA(19)〜(26)』
 森薫『エマ(8)〜(10)』
 入江亜季『乱と灰色の世界(1)(2)』、『群青学舎(1)(2)』ほか。

【買った本・拾った本】主な本20点内

 「SFマガジン 10,11,13,17,22,24」2,600円
 ジョー・ホールドマン『我は四肢の和を超えて』(ファンジン)1,100円
 フィリップ・K・ディック『バルカンズ・ハンマー』(ファンジン)300円
 レックス・ゴードン『宇宙人フライデイ』(HSFS)500円
 山田風太郎『韋駄天百里』(初版)藤元氏頂き本
 『少年小説体系 時代小説集』1,300円
 『少年小説体系 少年漫画(1)』1,500円
 『香山滋全集 (12)(13)』各1,000円
 『THE BEST OF LIFE』(写真集)230円
 宮田珠巳『おかしなジパング図版帖』1,995円
 『ロマンスの王様 ハーレクィンの世界』105円
 R・A・ラファティ『第四の館』2415円
 ヴァン・ヴォークト『新しい人類 スラン』100円
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『バウンダーズ』84円
 アンドルー・フォックス『ニューオーリンズの白デブ吸血鬼』84円
 ウォーカー・パーシー『映画狂時代』50円
 竹本健治『定本 ゲーム殺人事件』105円
 ゆずはらとしゆき『空想東京百景』500円
 矢作俊彦『悲劇週間』500円
 九月文の本:9冊2025円
 村田栞の本:13冊722円
 青木祐子の本:4冊2,242円
など。

【株式成績・等】5月28日まで

 為替が100円台に到達して株価が大幅に上昇し、みんながニコニコした第2週。同じ日決算報告での今年の減額予想を契機にDeNAが大暴落。100万円の下落となった。その後も上昇基調の流れの中でパッとしない状況が続く。
 第3週にはグリーの決算報告の減額予想でDeNAは更なるつれ安。やけっぱちでナンピン買い。小安く反転してまずまず正解かと喜んでいたら第4週についに来る。

 5月23日。メディアトップで報道されたように前場300円以上上げていた平均株価が後場から大暴落。終値1143円の下げ。めちゃくちゃである。持ってる株は軒並み大下げ、大きな含み損を抱え込んだ。

 5月24日。寄りつきから大幅な上昇。昨日の下げは一過性のようだったので、戻りの弱い株を物色しつつ勝負に出る。ところが午後からまた500円を越える下げ。ひえー。終わりにかけて株価はプラスに転じたがぼくの含み損は昨日よりさらに拡大する。勝負に出たので購入額は大幅増加。動きがとれなくなった。

 週が明けた5月27日。今日も大下げ。悲しいなあ。5月権利の2銘柄が昨日よりもさらに下げ、塩漬けがほぼ確定した。

 5月28日。株価は大幅上昇。ただし上昇した株は輸出関連銘柄主体で、持ち株はさらに下げる。現時点で130万円の含み損。
 ちなみに前回前々回の出納日記に書きこんだ株売買の方針と予想を読むと完璧である。方針通りに行動できていたらみごとに逃げ切れていたことになる。問題は書いてたこととやってたことにずれがあり、結果傷を負った。
 株は難しい。


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