みだれめも・出納日記 13年4月

水鏡子


〇3月の結果
支出計:179,471円。前年3月26,357円。153,114円増。
入手書籍:295冊 37,855円。累計723冊。前年累計547冊

 大幅増。去年はパチでたくさん買って今年はパチでたくさん負けた。パチに行くのはしばらくやめます。本代、冊数ともに大幅増。本の雑誌6月号を読んでください。

3月25日(月)〜4月27日(木)
【トピック】

 27日。「出納日記」と「ハヤカワSF文庫リスト」を大野万紀に送る。バグだらけだけど、一応かたちになったのでとにかく送る。リストのコメントである「ハヤカワSF文庫の研究」は昔作った「叢書の研究 ハヤカワSFシリーズ」の姉妹編として100枚程度の大作に仕上げる心積もりだったがリストに延々時間を取られて、しかも本の雑誌に予告を入れた関係と、週末土曜に花見の会、週明けに2泊3日のゲーム会が入ったので、短く片付ける。当初リストには目録に記載された定価を書きこむ予定だったが、しばらく試みたところであまりの手間に音をあげて塗り潰すだけでお茶を濁した。それを入れれば、文庫全般の値段状況だけでなく個々の本の間接的な重版情報も見渡すことができたのだけど。だれかが加工してくれたらうれしい。

 30日。昨年に引き続き、うちの近くの公園でSF研OBの花見の会。今後も恒例化しようかといった話になる。昨年は満開だったが肌寒く、早々に引きあげたのだが、今年は五分咲きながら暖かい。赤いちゃんちゃんこを貰う。一度しか袖を通していないので8月に大野万紀に渡そう。

 2日〜4日。ゲーム会。というよりカタンをする会。菊池家が学校のゲーム研の合宿があって、今年の春は取りやめの予定だったが、平日開催なら可能ということで復活する。そのため勤め人の荒川ジュニアは不参加。細美の紹介でミステリ作家の森川智喜氏が来る。締め切りが迫っているということで長居できず。次回はのんびり楽しんでください。

 7日。105円では買えなくても3冊105円なら手が出る本がある。いっぱいある。では1冊20円ならどうなるか。というわけで105円の本が20円になった尼崎市塚口のブックオフの閉店セールに行く。当初の予定では2週間前に行った六甲の古本市場と「奨学生のための古本市」を覗き、武庫之荘の古本屋台村に寄り、塚口のブックオフを回って、最後にラノベ3冊105円セールを継続している西宮の古本市場に行く予定だった。けれども20円の威力はやっぱり凄かった。「奨学生のための古本市」と塚口ブックオフで合わせて70冊を超えた時点で買い増す元気がなくなった。かっぱ横丁で網野善彦の本が1冊200円で十数冊あったのだけど荷重に怯えて断念した。
 例会は今年初めて青木社長と二人だけ。黒田日銀話を中心に終始株談義。
 雑誌メフィストを初めて買う。道満清明の漫画連載が載っている。『性本能と水爆戦』が面白かったのでぽつぽつ拾っている漫画家である。
 田波正が亡くなったという。京都で大森望らの京大SF研ワークブック京フェス、東京で牧眞司らの東京理科大SF研空科小やアトリエサードトーキングヘッズによるSFセミナー、名古屋で渡辺兄弟たちの名大SF研ミルクソフトダイナコンと、積極的にファンジンを発行し、イベントを催し、相互交流を深め、互いのレベルを高めあっていた今から考えるとすごい時代における名大系の綺羅星の一人だった。
 最後にじっくり話をしたのはSFセミナーの合宿の時。大森望にからんでセミナー関係者があたふたする事件が起きて、互いの情報を持ち寄りあい、困ったねえ困ったねえとぼやきあったことを覚えている。大森が新潮社を退職する前後のころだからずいぶん前だ。それ以来言葉を交わす機会はなかったが、文筆業では日のあたる道を歩み、みだれめもも愛読して頂いていた。また会ってしゃべりたかった。

 14日。日曜例会前に西宮の古本市場を3度目のチェック。さすがにひと月に3回覗くと本がない。細美からうちの庭の蜜柑で作ったマーマレードをもらう。
 連休の宿屋は毎年安い宿屋を探していたが、考えてみたら鳳明館に泊まるのが一番楽じゃん。ということでセミナー前日の合宿場所に予約を入れる。

 20日。曝書開けの図書館を覗いて、久しぶりに三島本などリサイクル本を5冊拾う。家に帰って並べようとしたら、うちにある三島本は文庫版『美しい星』1冊だけだった。歪つである。そのあとブックオフをうろつくが、雨が降ってきたのと明日が半額セールということで、チェックだけ。雨宿りを兼ねてひと月ぶりにパチ屋に。勝つ。

 21日。パチの勝ちに気をよくし、半額セールのブックオフで普段なら買わない半額本(2割5分本)をたくさん買う。異形コレクション9冊、コミック19冊など40冊。三宮に行くと単行本の500円セール。そんな高い本は買えないやと見回ってたら、岩波講座の全巻ぞろいが。20年前と少しトウが立っているが、迷った末に大人買い。平均単価が大幅アップ。

 23日。歯科の定期検診。レントゲンを撮る。2年前のものと比べると歯に厚みが出来ている。この齢になっても歯って育つんだ。気を良くしてパチに行く。負ける。

 25日。3月末で退職した旧職場関係者の送別会に行く。株儲け自慢をする。その流れでスナックに。場を無視してアニソンを歌う。世間的に通用するのは宮崎駿だけであるのを再確認。

【読んだ本】60冊(内、漫43冊) 累計196冊(内、漫110冊)

 今月もシリーズ物の続篇だらけ。ただ、全般的に読み応えがある。なかでも北方謙三、十文字青がいい。一読をお勧めしたいが北方本は、本書の前に37冊、十文字本は25冊ある。

 北方謙三『岳飛伝 (4)』★★★★
 『楊令伝』執筆と『岳飛伝』執筆の間の1年半に東北大震災があった。著者の目線はその間の被害の様相と国の在り方をずっと追っていたのではないか。楊令から託された梁山泊のかたちはその目線のなかで変化したのではないか。それが『楊令伝』最終巻と『岳飛伝』第1巻の梁山泊水害の描き方の違いであり、ユートピアすら否定する呉用の目指す梁山泊のありかたになったのではないか。
 岳飛と兀朮が本格的にぶつかりあう。秦容たちは越南に新たな地を拓き、梁山泊は死の淵にある呉用に導かれ宣凱と呼延凌が中心の若い体制に代替わりしていく。志ではなく夢に寄拠した国造り。思想書の風貌を前面に押し出しながら、むしろ小説の深みを増していく。『岳飛伝 (1)』の茫漠とした評価不能の始まりからここが見えていたのだろうか。凄い。

 十文字青『薔薇のマリア (10)』★★★★
 死に瀕したトマトクンの真の肉体を取り戻すために贄の園の向こうに位置する獄の獄へと向かうマリアローズ一行。留守を守って戦うジョーカー。各地で地場を固めるランチタイムや法の番人たちの奮戦。ここしばらくは低迷だったのだなと改めて感じさせる大復活。全篇バトルシーンの連続でテンションが揺るがない。

 十文字青『果てなき天のファタルシス』(雑誌版)★★★
 ファタルと呼ばれる謎の生物が波状攻撃を繰り返す日本。人間は点在する都市に孤立し、対ファタルに特化した多数の超常能力者を核に、地下道を通じて物資の補給を融通しあいながらファタルに対する多重防衛線を維持し続けている。そんな世界で事故で記憶を失った少年が、防衛活動が常態化した高校生活に復帰していく物語。1冊にまとめるために無理をした唐突な処理も散見するけど、読み応えあり。この作品をバネにして『薔薇のマリア』の大復活がなされたように見えるけど、執筆順が逆だったらどうしよう。

 フィリップ・K・ディック『空間亀裂』★★
 問題意識と会話の妙、視点の置き方に見るべきもの多数。そんな要素がほとんど思考放棄に近い粗雑さの中に散りばめられる。じっくり書き込んでいたら、大傑作まではいかないが著作中でも10指に入る作品に仕上がっていた可能性に満ちた作品。とくに巻頭30ページ。マクロな社会状況を描写や会話を通じて構造化焦点化していく技法は、ディックに限らずこの時代のSF作家が得意にしていた手法であり、考えて見ると最近のSFでとんと見られなくなった気がする。
 『逆回りの世界』と同じ時期の作品だから、ジム・ブリスキンは黒人教祖トマス・ピークと同じ個性であるはずなのに、オバマの顔でしか読めなかった。

 成田良悟『バッカーノ1935-B』★★★
 成田良悟『バッカーノ1931-WINTER』★★
 鎌池和馬『簡単なアンケートです』★★★
 鎌池和馬『簡単なモニターです』(今読んでる途中)
 茅田砂胡『天使たちの課外授業(3)』★★
 七月隆文『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件(1)』
 日日日『魔女の生徒会長(1)』
 日日日『反抗期の妹を魔王の力で支配して見た(1)』
 三浦良『銀の河のガーディアン(1)(2)』

 三浦展『日本人はこれから何を買うのか? 「超おひとりさま社会」の消費と行動』
 新刊で買った新書本。表やデータを多用して一見面白そうだったけど、分析レベルが恣意的稚拙表面的で、ここまでつまらないのは久しぶり。

 丸善ジュンクで「創5・6月号」が「激変するマンガ市場」という特集を組んでいるので久々に手に取る。いつのまにか隔月刊になっている。棚を見ると去年の「創5・6月号」があって「マンガ市場の変貌」という特集を組んでいた。前からちょこちょこ特集を組んでいるのは知っていたが、定点観測だったのか。隔月刊になった分、全体の中での比重が高まっていることになる。表やグラフを多用していて面白い。去年の特集を読んでもあんまり1年前という気がしないのは少し問題か。ブックオフでバックナンバーを探そう。

(漫)は
 岸本斉史『NARUTO(25)〜(47)』
 曽田正人『KAPETA(13)〜(18)』
 『からくりサーカス 愛蔵版(2)』
 『あまつき(15)』
 『明治失業忍法帖 上下』
 『マップス・ネクストシート(14)』
 『クレイモア(23)』
 『牙の旅商人(1)〜(6)』
 『お伽模様綾にしきふたたび(1)(2)』など。

【買った本・拾った本】主な本20点内

 岩波講座『宗教と科学』全10巻別巻2巻
 『トンボ鉛筆完全ブック』
 荷宮和子『アダルトチルドレンと少女漫画』
 スティーヴン・T・デイヴィス編『神は悪の問題に答えられるか』
 ヴェヴレン『有閑階級の理論』
 池田清彦『構造主義科学論の冒険』
 良知力『向う岸からの世界史』
 R・A・ラファティ『蛇の名前』
 三島由紀夫『サド侯爵夫人』『わが友ヒトラー』『文学論集』
 荒俣宏『パリ・奇想の20世紀』
 ロアルド・ダール『ヘンリー・シュガーのわくわくする話』
 『広告批評』7冊
 『新現実(1)〜(5)』など。

【株式成績・等】4月26日まで

 4月に入ってから、日経HPの銘柄フォルダーがめちゃくちゃ繋がりにくくなった。株遊び人が激増していることを実感する。
 それにしても大口を叩くものではない。読みがいい方にも悪い方にもすべてはずれた。
 3月権利確定後いつもの年なら権利落ち相当分以上に大きく下げるところだが、今年は2月権利落ち株が軒並み権利確定日より値を上げており、4月4日に黒田日銀新総裁の初の政策決定会合で異次元の金融緩和を標榜していることもあり、たぶんそう大きな値崩れなく見極め基調に推移し、日銀政策決定会合の金融緩和発表で材料出尽くし失望売りで一気に下げるというのが当初の読みだった。それにしても「異次元」である。経済用語にこんな冠がつく時代になったんだなあ。

 全部裏目に出た。3月権利確定後の急落が想定以上。300万円近くまで積み上がっていた含み益がわずか1週間で100万円の含み損まで落ち込んだ。落下が早すぎて、一株も売ることができず、また艱難辛苦の塩漬け旅が続くと覚悟した。
 ところがそのあとが凄かった。報道等でご存じの通り異次元の金融緩和の日銀発表が市場の予想をはるかに超え、あっという間の急回復。一週間で400万円損をして1週間で上積みつきの完全回復。めちゃくちゃである。日経CMBCを流していると外国報道番組がジャパンジャパンアベノミクスの大合唱。分かる単語がこんなに聞こえてくるのは初めてだ。こんな怖い相場に長居はしたくない。わたしは所詮小心者。ここは当初の目標通りすべて3月権利確定日の株価に手数料分上乗せして指値をする。@株主優待長期保有の特典株の最小単位(グンゼ、角川、ブロッコリー、ビックカメラ)、A買値より下がっている株、Bアベノミクスでの値上がりを口を開けて待っている株は持ち続けることにする。アベノミクス相場に参加したくて2月3月に買った高値づかみしている株がかなりあり、どこまで売り抜けられるか微妙だが、できるかぎり連休前に処分したい。

 ちなみに2月3月に買った株で、大失敗がDeNA。含み損が一時期100万円を超える。大成功が阪急電車。株主優待券が欲しくて昨年360円で売った株を590円で買い戻したが620円で売り抜けた。これで阪急電車に只で60回乗れるので、例会前に毎週ブックオフと古本市場に行くことができる。京都の古本市だって大丈夫。

 第3週に入って株価は大幅下落。第4週に値を大きく戻すが指値までにはいたらない。売れた株は3銘柄だけ。全然処分が進まない。月火水で100万増えて木金で60万減る。
 読みが外れまくって、結果オーライで最終プラス。つまりは資金があればだれでも勝てる馬鹿相場。こんな状態がいつまでも続くわけないと思うのだけど、ブラック・マンデー、リーマン・ショックの経験値を重ねた株をやっている連中だれもが警戒感をあらわにしている状況は、意外と冷静に見切り千両で逃げ切る客が多そうで、結果的に大暴落につながらずソフトに調整が進む気もする。いやいやたぶん最悪の選択は、まだ下げないと思い直して再参入することだろう。撤収!撤収!6月中旬までは目星をつけている2銘柄を除いて売りに徹する。
 連休を挟んだ次週以降は、毎週50万増えて100万減るという流れが続くと読んでいる。今回みたいに読みが外れてくれたらうれしい。


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