みだれめも・出納日記 13年1月

水鏡子


年が変わりました。
 だらだら過ごす日々はあいかわらずだけど、社会人のときとちがって自由な時間が大きいせいか、意外と飽きっぽく、遊びの中味が変わるよう。
 退職1年目は、東北大震災と地デジ移行にからむCS契約の影響が大きかった。報道番組と旧作アニメのまとめ見が情報摂取の中心だった。もともとテレビ大阪(テレビ東京系)の視聴圏外であったうえ、録画視聴をしないので、社会人として深夜アニメも土曜枠以外はほとんど対象外、普通時間帯はサービス残業でほとんど家にいないということで、ここ20数年のアニメ情報はほとんど活字メディアと耳学問による補完に終始。ガンダムなど、ファースト・ガンダムしか見ていない。

 そうした番組の一気の収拾に走って、最終的に過摂取でくたびれた。CS視聴が半年経つと再放送の嵐になったことも大きい。そんなこんなで視る内容が、ニュース番組のはしごと日経CNBCに移っていった。

 ひとつ大きかったのがテレビ大阪で放映していたジャンプ系コミックスのアニメ。とくにこれまで立ち読みでも飛ばしていた『銀魂』の発見。アニメも面白いがコミックスも負けず劣らずたちの悪さが半端でない。日本版スティームパンクといえば『サクラ大戦』など「帝都」や「蒸気」のタームが飛び交う「大正伝奇浪漫」と短絡的に考えていたが、時代的には江戸時代の末期に黒船ではなく異星人が攻めてきて日本を征服した設定の『銀魂』の方が適格でないか、と主張してみているのだが周囲のだれも賛同してくれない。

 予定外の効果はジャンプ・コミックスの再評価。全体的にマガジン、サンデーよりもワン・ランク上位でないか。大半の作品を経ち読みで一度読んでいることもあり蔵書数100を切っていたのが、気がつくとここ2年で400冊近くに増えている。置き場所が、置き場所が。

 こんな日常生活が、去年になると中心が一気に株投資に移行する。
 退職金がほぼ自由運用できる余力になったのとリスク分散の目論見で、初年度から株主優待銘柄と高配当銘柄を財産株のつもりで積極投資はしたのだが、財産株のつもりであるので、基本的に買い増しするだけ、売りはほとんどかけなかった。
 そしたらどうだ。下がる下がる。一時期500万円、一昨年末には含み損380万円の怪我を負った。株は売り買いしなければならないと反省する。
 その最中にCS契約をスカパーから光TVに切り替える。基本パックが光TVの方が安かったのが理由だが、スカパーのパックには入ってなかった日経CNBCを視聴することが可能になる。
 結果、以前にも書いたように朝8時30分から午後4時くらいまで毎日日経CNBCを流しっぱなしで、ネットでヤフーや日経HPをチェックし、エクセルで作成した持ち株状況推移をメンテしながら、株の売買にうつつを抜かす毎日に突入した。土日はともかく株で遊べない祝日なんかなければいいのにと本気で思うくらいに安定した日課になった。
 最終的に売買益180万円、含み益85万円、配当60万円という好成績に終わった。

 ただ、必ずしもすごくうまくやったというわけではない。
 一昨年は売り買いしなかったから損をしたのだが、去年は、とくに年の後半、売った株を売らなかったら、おそらく500万円近い含み益を出していたはず。売った株の株価はその後もどんどん上がり続け、予定していた買い戻しができずに指をくわえて見る毎日。
 欲張っちゃいけないということで、これで満足しないといけないのだけど、気にしていた株は軒並み、購入予定値を大幅に越えてしまって、戦線拡大が非常に難しくなっている。
 手持ち株を売って儲けを出しつつ戦線縮小していく撤退戦に移行せざるをえない状況で、ある意味退屈でつまらなくなってきた。飽きたという一面もある。

 そんな気分をうまく使って、今年は遊びの比重を本来やるべきはずであった「読むこと」と「書くこと」に戻せたらな、と思ったりして。
 いけるでしょうか。

〇12月の結果
支出計:305,003円。前年12月258,334円
入手書籍:231冊 39,761円。累計2,269冊。前年累計2,002冊
通算株成績(含み損益+売買損益):約270万円の益

 支出額が増える。今月もパチで大負け。ジンクスのくずれがひとつ。あと年間出費目標がゆうゆう達成できる状況になってちょっと大盤振る舞いになった。

〇2012年総括
 支出合計:2,906,688円

 合計300万円以内という年間目標を余裕を持ってクリヤーした。昨年が4月から12月までの9カ月で299万円だったから大幅に短縮できたことになる。
 もっともその理由は、昨年48万円徴収された県市民税が1万円に落ちたことと、40万円負けたパチが6万円の負けで済んだことの二つが大きい。生活レベルはほぼ前年と変わらない。ちなみにパチは最後のふた月で18万円負けていて、それがなければ生まれてはじめての年間プラスを達成できていた。あぶく銭と思うとだめですね。

 支出額中30万円は国民年金と個人年金の掛け金で、満期時点で返ってくるものなので、厳密な意味では出費にあたらない。これを除いた260万円が年間出費ということになる。
 国民健康保険、所得税、県市民税、固定資産税、生命保険、火災保険といった公的支払が60万円。
 電気、水道、ガス、NTT、NHK、新聞代など、光熱水費と通信運搬費が40万円。
 食料品は20万円弱。前年より量が増えて、支出額は減った。デフレが進行したためか、タイムセールで6割7分引き(298円の商品が100円)のスーパーが増えた。ただこのひと月、野菜類は大きく高騰し、他の商品も定価に微妙な割高感が漂う。消費税云々以前に今年は物価高が直撃しそうな予感がある。
 医療費はMRIをとったりしたので、10万円を越えているはず。だけど控除するための
所得がない。
 備品類の購入は、エアコン、冷蔵庫、パソコン、ルンバの4点。合わせて35万円。

 入手書籍は昨年の2,002冊、381,090円から2,269冊407,598円と冊数増に合わせて増加。平均単価は190円から180円に低下したが、これは図書館リサイクル本を50冊ほど拾ったため。年の初めは1500冊以内とか言っていたような気がする。

 全般に、一昨年より少し質素になった、安定した生活を過ごしたといえそうだ。
 もともと、年金生活者は200万円で生活しなさいといわれているようで、かなり贅沢な限度枠なのだが、次代に残す必要がなく資産を食いつぶしていく計算なので無理に節約する必要はない。
 今後も、この限度枠を維持していけば大丈夫。

 大きく変わったのが収入面。原稿料収入は3万円だけだが、株が生まれて初めての7桁の収益。これまた初めて損切りによる帳尻合わせをしなかった。含み益は確定したものではないので除外して、売買益と配当を合わせて240万円。支出−収入の資産の目減りは50万に落ちついた。年金積み立て分を除くとほぼとんとんに収まったことになる。

〇2013年の目標
 まず、年間出費は去年と同じ300万円内。
 別枠として、太陽光発電の設置、これに200万円。合わせて500万円の出費。

 収入面では4月から、年金を受け取ることができる。年度途中からなので、今年度はたぶん90万円くらい。
 それに株の売買益+配当で190万円を目標に置く。昨年は含み損380万円から出発したのが、今年は含み益80万から始めるのでたぶんそこそこ達成可能と踏んでいる。
 これに可能であれば原稿料を20万円。それで年間出費額を賄える計算になるのだが、たぶん最後のものがいちばん難しい。本の雑誌のおかげでとりあえず半分くらいは確定できそう。

 3つ目の目標は、本棚の消化。
 具体的には、コミックを含めて500冊を年間読破すること。
 コミックを含めてというのがキモで、これで500冊クリヤーはそんなに難しくないはずだ。コッミク除外で350冊を努力目標にしよう。あくまで努力目標ということで。
 たぶんラノベのシリーズ本が主体となる。まずは読書主体の生活習慣を取り戻すのこと。。ベストSF選びの反動で先月上栖綴人や林トモアキなど50冊ほど読みまくれたのが目標の根拠。割ってひと月40冊などと考えてるとまちがいなく挫折するので、4月までに300冊をもうひとつの努力目標にがんばろう。
 それでも未読本が毎年1000冊以上増えるのだけど。

 4つ目の目標は、みだれめもを中心に200枚超の作文を。本当は300枚とぶちあげたいけど今年の背伸びは読む方主体ということで。

1月1日(火)〜28日(金)
【トピック】
 1日元旦。近隣の2割引きセールのブックオフと500円お年玉クーポンの古本市場を回る。

 2日。神戸大SF研OB新年会。ブックオフに寄り、三宮で飲み食いしたあと昨年同様M林家に伺っておせち料理をいただく。集合時はそうでもなかったのだが、退出時は今冬一番の凍える寒さ。一緒に帰途についた後輩でぼくのエロゲーの師匠である茶羽(仮名)は、宅を出る時点ではろれつが回らない程度だったのが、送りの車内で「うーにゅあー、うーにゃあ」と騒いでいるうちナイアルラトホテップが降りてきたらしく、JR駅についたときには完全に下半身が溶けてしまって車から降りるときにも倒れて頭を打つは3歩歩くとこけまくるは、待合で座っていると前のめりに転んで顔を打つわの強力な泥酔状態に陥る。しかたがないので家まで送ることにしたが、ついた駅から駅員の助けを借りてタクシーに乗せても住所が言えない。このあたりだと言う場所でタクシーを降ろしたが、降りるときにもまたも倒れて頭を打つ状態。立ち上がれない本人を置いて家に帰ったものの、住所録を調べると、降ろした場所と住所の間が500m近く離れている。電話を入れても留守電で、行き倒れると凍死されると寝覚めが悪いので、最後の手段に警察に電話を入れ、安否確認を依頼する。
 (一応家に帰りついて爆睡していたことが、翌朝になってわかったが、それまで3度くらい警察とやりとりをする)。
 教訓:酒をたくさん飲んで、「うーにゅあー、うーにゃあ」と騒いではいけない。

 12日。知人の見舞いに。大阪組と神戸大組、初顔合わせの2グループが一緒になったので、見舞いのあとだらだら雑談する。業界人でない同年代のSFファンと出会えたと、堺三保がけっこう喜ぶ。終わった後ブックオフに。

 11日+15日。大儲け。(後述)

 22日。歯医者で虫歯を抜く。上の歯がなくて噛み合わせの役に立たないのと穴がでかいので抜きましょうかという話になった。CTを撮る。歯医者にもCTがあることも驚きだったが、それ以上に輪切りデータを再構成して360度全回転の立体像になっているのにもっと驚いた。

 〇『とある魔術』のまとめ読みをすることにしたので、未所持本を半額、定価で買いあさる。

【読んだ本】93冊(内、漫39冊)

 近藤信義『ゆらゆらと揺れる海の彼方 (6)〜(10)』☆☆☆
 第6巻でバストーニュ編が完結する。けれどもラストでノウラがアーミッシュ教国に拉致されあらたな風雲が立ち込めるなか、7巻目から全4巻、敵方アールガウ神聖帝国成立までの経緯が物語られる。
 話づくりのうまさは巻を追うごとにうまくなり、ラノベらしからぬ重みのある筆致に磨きがかかるが、あるいはそれが災いしたのか、2008年に刊行された第10巻をもって途絶する。6巻のラストがラストだけに、かなりフラストレーションがたまる。

 神秋昌史『オワ・ランデー (1)〜(4)+外伝』☆☆+
 性欲全開の高校生佐品直純は魔術を使って魔界最上級のサキュバスの召喚に成功する。ところが呼び出したサキュバスは人が10秒も体に接すれば悶絶死する超強力な力の持ち主。しかも心やさしい純真無垢のお嬢様。かくしてこのサキュバスといかにヤルかに心を砕く主人公の七転八倒の生活が始まる。
 意外と骨組みのしっかりした読み応えのある「小説」にしあがっている。こういうバカ設定で、「うる星」の諸星アタル的言動をまき散らしたものは、著者が物語をコントロールしきれずに、話を薄っぺらく安っぽく浮わつきがちになるものだが、よく手綱を握っている。魔界の勢力争い、主人公の真の動機、魔術の因果応報などうまく考え、組み合わせている。
 1作目に比べると2作目以降はやや薄めであるが世界の命運を背景にしたサキュバスとの純愛物語として十分及第点の作品である。

 夏緑『魔王学校に俺だけ勇者 (2)』
 題名通りのアイデアだけのルーティン・ワーク。間違えて美少女だらけの魔王育成学校に入学してしまった勇者候補(男)のお話。

 鎌池和馬『とある魔術の禁書目録 (1)〜(22)』
 『とある魔術の禁書目録SS (1)(2)』
 『とある魔術の禁書目録SP』
 『新約 とある魔術の禁書目録 (1)〜(6)』
 『ヘヴィオブジェクト (1)』
 
☆☆☆+
 次の「みだれめも」でまとめて紹介。予期していたよりおもしろかった。

(漫)あべ美幸『八犬伝 (1)〜(13)』☆☆☆
(漫)森薫『乙嫁語り (5)』☆☆☆
(漫) 星野浩宇『ビン (1)〜(11)』☆☆☆
(漫)はその他、かわすみひろし『江戸バルザック』(☆☆+)、由羅カイリ『彩雲国物語 (5)』(☆☆)、にわのまこと、など14冊。

【買った本】主な本20冊内
 ジョイ・アダムソン『野生のエルザ(改定新版)』、
 リチャード・オバリー『イルカがほほ笑む日』(『わんぱくフリッパー』調教師の半生記)、
 柴田元幸『生半可英米小説演習』、
 レオニー・スヴァン『ひつじ探偵団』、
 友成純一『戦闘娼妓伝』(『宇宙船ヴァニス』第4話があるとは知らなかった)、
 L・B・ホルステッド『今西進化論批判の旅』、
 黒崎政男『となりのアンドロイド』、
 馬場あき子『大姫考』、
 いいだもも『ポスト・モダン思想の解説』、
 富田常雄『猿飛佐助』(忍法小説集(3))、
 司馬遼太郎『梟の城』(忍法小説集(2))、
 加納一郎『髑髏菩薩』、
 秋山香乃『氷塊 大久保利通』、
 志村有弘編『柳生秘剣伝奇』、
 柾悟郎『さまよえる天使』(こんな本が出ているとは知らなかった)、
 沖田和彦『戦国ランス(1)〜(5)』、
 冠木新一『ゴジラ・デイズ』、
 テッド・ムーニイ『ほかの惑星への気楽な旅』、
 黒史郎『未完少女ラヴクラフト』(ジャケ買い)

【株式成績】
 含み益85万円で開始した今年の株式、年末からの円安株高基調が続くが、上げている景気敏感株、輸出関連株をほとんど持たない裏街道ディーラーなので、もひとつおこぼれにありつけない。そのぶん下げるときも影響が微減なのでまあしかたがない、とのんびりかまえていましたが1月10日(木)、ぼくの4年越しの仕込み玉ブロッコリーに朗報が飛び込む。
 3Qの決算発表で、普通配当2円に業績好調のプラス2円でないかと噂されていた記念配当が実に3円50銭の驚きの額。大喜びで翌金曜日高めの指値で2万株売りをかけるとあっという間に指値を越えてストップ高まで急上昇。生まれて初めて1日で100万円を儲けた。
 にこにこしていたのだけれど、翌火曜日もストップ高。残していた1万株を売っぱらいまた100万円儲けたが、欲をかいていたら300万円儲かっていたと思うと、喜びも中どまり。
 贅沢言ってはいけないことはわかっているのだけどね。たった2日で去年の売買益を越えてしまったわけだから。
 とりあえず、1月12日の段階で、今年の収入目標をクリヤーしました。パチパチ。


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