みだれめも・出納日記 12年9月

水鏡子


〇8月の結果
支出計:177,932円。前年8月334,443円
購入書籍:150冊 27,649円。累計1,353冊。前年累計1,306冊
通算株成績(含み損+売買益):約35万円の益

 前年比半減である。SF大会にいかなかったこと、パチがプラスだったこと(3回行って負けなしで、マイナスだった前年と上下8万円の差)。10万円の親族生命保険一括払いがあるので、それを除けば10万円割れの結果になった。
 本については、9月くらいから例年新刊比率が高くなる、ベスト選びの買い洩らしを拾いあげていくためだ。ただ、今年は9月末にブックオフの三宮大型店が開業の予定。冊数が増えて平均単価はそこそこに収まる可能性あり。
 株は好調。ひさしぶりのプラスである。
 3枚と5枚のお仕事を同じ週にいただく。今年初めてのお仕事。3枚の方はこの日記の延長的内容なのでさくさく書けたが、5枚の方は後述のように難産した。

9月第1週
 週が変わった途端に株はマイナスに。そういうものだ。
 先週から六日連続下落の市況の中では、よく頑張ってるほうだけど減ってることは減っている。週の後半持ち直して再びプラスに。
 長谷敏司の短編と『あなたのための物語』を読み返す。女主人公サマンサ・ウォーカーの子どもの時の愛読書に『飛ぶ船』があがっている。しまった。京フェスのインタビューのとき気がついていたら、そこから『あなたのための物語』に話を振れたのに。

 BEATLESSを読む。フュギア・メーカーへのコラボ企画によるアニメ雑誌への連載という、新規要素を満載した意欲作だが、魅力化した面と委縮した面がある。物語的には、展開や細部はともかく大枠が長谷作品にしては意外なくらいのお約束小説。落ち物で始まって、予定調和のラスボスで、純愛エロゲー得意の結び。単行本1冊に収めるためにかあまり遊びができなくて妹組が手持無沙汰。いたぶられキャラが主人公一人なのとヒロインがしとやかお姉さんタイプで突っ込みが弱いので変態性が後退して著者本来の生真面目さが際立つ。一方、キャラ・デザインが外注されてイメージ化が省力できたせいか、バトル・シーンは章を重ねるごとに鮮明で高密度、スケールアップしていく。なんといっても中段でのスノウドロップの活躍ぶりがすばらしい。あと、量産型**が秀逸。小説をあまり読まないからもしれないアニメ読者を引っ張り込む、途中から読み出す読者もいるはずと媒体を意識し、毎号高いテンションを維持した心意気は見事だけれど、本にまとまると盛りつけ過多。

  SFMのお仕事はたった5枚の原稿に3週間のゆとりがあったというのに、結局前日徹夜した。最初、『このライトノベルがすごい』と『SFが読みたい』の『円環少女』の結果を引いて、長谷氏に対する評価の高さと認知度の低さを中心に、マガジン読者に『円環少女』のプレゼンを目論んだのだがアンケート結果をだらだら説明するだけで全然楽しくならない。作り直しにけっこう手間取った。

9月第2週
 原稿が片付いたので、『ファイヤーエンブレム』ハード・モードをこなしながら、古本屋三昧。
 『BAKUMAN』が12巻目まで100円本に落ちていたのでまとめて買って読む。
 『光圀伝』『岳飛伝2』『アクセルワールド2』読了。

 『光圀伝』は暴力と死とが背後で蠢きながら安定した徳川の時勢が形作られていく、ある意味『天地明察』以上に冲方らしい重厚な作品。大枠を作る藤井紋太夫殺害の謎というのが各章頭に挿入されて、そこから光圀が生涯を順に振り返るという構成で、その紋太夫部分が少し鬱陶しく感じたのだが、その事件が大枠として構想されている以上しかたがないんだろうなとそれなりに納得していた。
 それだけにSFマガジン11月号のインタビューで、光圀がなぜ紋太夫を殺したのか全然わからず書き始めて結末近くでやっと答えを発見して自分ながら感動したと答えているのに腰を抜かした。勘所のつかみかたが尋常でない。どうみても、その答えから作りあげた小説にしか見えなかった。

 週末は高校の還暦同窓会。同学年50人近くが集まる。定年退職話がけっこう出るかと思ったが、経営者や医者がけっこう多くてあまりそういう話にならない。昼の1時から夜の12時まで、場所を変えつつ4次会まで、ひたすら飲み食いを続ける。また体重が増えた。

9月第3週
 『NARUTO』が52円だったので、6冊買ったのは先月のこと。内心やばいなあと思ってたのです。現時点で30冊を越えている。この2年でジャンプ・コミックスだけで100冊以上増えている。

 火曜日。3月末以来久々、半年ぶりに持ち株の含み損が消える。任天堂とスクエニの損はまだ200万ほどあるが、ブロッコリーとゼンショーとソフトバンクの益ですべて帳消ししてくれている。
 10年近く持ち続けていたパチンコ・エヴァ勧進元のフィールズ株を今年の4月に手放した。業績の良し悪しにあまり関係なく株価が1000円台と1400円台の間をかなり長い周期で上下しているので、1400円を超えた時点で手放したのだ。また1000円台に落ちてきたら買い戻すつもりでいたが今年は少し様子がちがう。パチ屋に行くと京洛産業「AKB48」の圧勝なのだ。今のパチンコ台は、作り手側のおたく心に寄りそうように独自のギミック文化を展開しているのだけれど、ギミックの進化は「創世のアクエリオン」の上下合体で、フィーヴァー・システムは「GARO」のあたりで少し安定してしまった感じだった。ところが「AKB48」は毎週新曲を配信して1時間ごとに全台一斉に放映するという、これまでの1台完結型のシステムからネット配信を駆使した新展開を実現し、また新しい文化環境に移行した感がある。他のシステムを一気に時代遅れにしてしまい、エヴァの威光も通用しなくなる時期がきた可能性がある。老舗パチンコ・メーカーの平和も年初来安値を更新しており、もうしばらく様子を見た方がいいかもしれない。ちなみにパチ成績は今月もプラスで終わりそう。

 エッセイ本を読む。

 『同期生』は第1回りぼん新人賞の受賞者である一条ゆかり、もりたじゅん、弓月光の昔語り。弓月光が堀晃と同じ姫路の進学校の出身者なのは知っていたが、住まいが高砂市だとは知らなかった。氏が幼稚園から高校卒業まで、ぼくが小学3年から高校2年まで、年齢差が4歳あるから、6年間ほど人口8万程度の同じ市内に住んでいたことになる。小中学生のころは毎週日曜ごとに市内にひとつしかない図書館に行っていたから、けっこうニアミスがあった気がする。
 デビューの時期が高三のときで、神戸大教育学部を受けて落っこちたとか、ただでさえノスタルジックな時代話に地元感覚まで入り混じって楽しく読んだ。巻末の年表を見ながら家にある弓月光をチェックすると、持ってないのはたったの10冊だけだった。

 熊谷達也といえば、狼や熊やアイヌやマタギの小説を書く作家である。ところがこの人のコラム集『勘違いのサル』を読んでみるとイメージが激変する。まず、巻頭でいちばん影響を受けているのがデズモンド・モリスとリチャード・ドーキンスだという。映画の話になると、『地球の静止する日』をとりあげ、新旧ふたつの映画を比較してみせる。きわめつけは若いころの読書傾向の述懐で、7割が海外SF、1割が日本SF、1割がブルーバックス、残りの1割が海外ミステリと海外主流文学だとのたまっている。なんだこいつは。
 なぜかうちにはこのひとの本が5冊ほどある。いつ読むかはともかく、とりあえず100円棚でみつけたものは全部買うことにしよう。

9月第4週
 夏前あたりから左下腹部に鈍い痛みがあって消えない。日によっては歩いたり階段の上り下りの震動で痛み方がひどくなる。同年代の青心社のZ某や山岸真の入院が頭にちらつく。そういえばこの3年KSFA関連で毎年ひとり大病を患っているのに、今年はみんな建長だ。ただ、さしこむような痛み方でなく、それほど激しくもないので、とりあえず、整形外科にかかって見る。レントゲンを撮るが問題なし。医師の勧めでMRIを撮る。こちらの方も問題なし。となると、やっぱり腸の方だろうか。かかりつけの内科で、腹部エコーをお願いしよう。

 『ファイヤーエンブレム』ハード・モード終了。150時間ほどかかった。今月読書量が少ないのはすべてこいつのせい。続いてルナティック・モードにとりかかるが、まるっきり歯が立たない。第2章に数十回挑戦してまだクリアーできずにいる。あきらめるしかないか。

 株式市況:9月の権利確定日。戻り売りを期待して、大きく値を戻した終値で明日以降に大量の売りをかける。
 権利落ち日。スペインがまたきなくさくなり、日中領土問題が過熱して権利落ち分を超えて大きく下げる。大量に発注した売り株は全滅。4月5月2カ月で400万減らした二の舞にならないようにしなければ。

 9月28日金曜日。ブックオフ神戸三宮センター街店のグランドオープン。ジュンク堂の道を挟んだ向かい側、ヴォークスが入っているビルの5階。郊外が多いブックオフには珍しい繁華街での300坪規模の大型店で、かなり本腰をいれているらしく各地の管理職クラスが呼び集められたとおびしきものすごい数のおじさん店員が呼び込みその他で動き回っている。
 ただ、本が大量に準備できすぎたせいか、100円本にあまり意外な掘り出し物がない。それでも、5000円以上購入すると無料配送サービスをオープンセールとしてやっているので、とりあえず53冊購入する。(おいおい)
 むしろ、そのあと寄ったロードス書房のワゴン本がすごかった。金子光晴や志賀直哉の全集が箱なしとはいえ155円で並んでいる。高橋源一郎に影響されて『金子光晴全集』を全巻一括で新刊購入した身としては複雑な心境。野崎六助『これがミステリガイドだ!』、縄田一男『捕物帳の系譜』サント・ブウブ選集『中世及び十六世紀作家論』『十七世紀作家論』、ノリス&ロス・マクワーター『記録の百科事典・世界一編』、紀田順一郎・間羊太郎編『記録の百科事典・日本一編』などを買う。

 土曜日。かかりつけの内科に行って、腹部痛の相談をする。とりあえず糞便検査と下剤を出すが、MRIでも腫瘍の疑いは少ないと判断されており、便秘の可能性が高いので、そんなに気にしないでいいと言われる。便秘でこんな症状が出ると聞いて驚く。場合によっては痛さのあまり救急車で搬送されることもあるとのこと。そうなんだ。
 なんとなく安心して、昨日株価が下げているのにパチ屋に行く。大負けして今月の遊興費がマイナスに。
 明日の9月末日は、日曜例会の前にもう一度三宮のブックオフに行こう。


THATTA 293号へ戻る

トップページへ戻る