みだれめも・出納日記 12年8月
水鏡子
〇7月の結果
支出計:443,940円。前年7月460,768円
購入書籍:143冊 35,693円。累計1,203冊。前年累計1,156冊
通算株成績(含み損+売買益):約130万円の損
この月は26万円の生命保険一括払いがある。3DSLLを買っているが庭の草刈り費用が未払いなので、ほぼ前年並みといえる。書籍代が去年より1万円多くかかっている。日下三蔵のせいである。『山田風太郎少年小説コレクション 1・2』『別冊太陽 山田風太郎』『山田風太郎・降臨』(野崎六助)は、別冊太陽はともかくとしてハードカバーでもないのに諮ったように4冊揃って2,520円単価で一瞬で万札が飛んでいった。株損は拡大したが、7月半ばの状態を考えればよくここまで回復したと考えるべきだろう。
7月第5週・8月第1週
日曜日。例会に行く。昼過ぎに新大阪駅付近で車が橋桁にぶつかったとのことで下りが1時間近く遅れていたが大阪行きの上りは問題なし。帰りまでには回復していることだろう。菊池先生が来る。節電のために昼間クーラーを切って外食に行っていると言うと、クーラーはつけっぱなしの方が電気代がかからないと教えてくれる。帰路、駅に行くとJRが全面不通。別の事故かと思ったら昼間の事故でぶつかった車がじつは大型トラックで橋桁にひびが入っているらしい。それなら最初から止めておけよ。阪神電車、山陽電車、タクシーを乗り継ぎ4,000円かかる。
宮内悠介『盤上の夜』を慌てて読む。SF本を直木賞を受賞してから読むという恥ずかしい事態だけは避けたかった。話者を統一した各種のゲームに関する作品を集めた連作集と思っていたが、「象を飛ばした王子」を転回点に前半の作品も巻き込みながらゲーム小説の枠組みに収まりきらない骨太の主題に収束していく。ただ同時に壮大な文明論的主題を展開しきれていない、技量不足の印象が残る。主題を引き継ぎ語り直しての次回作に大きく期待したい。
木曜日。シルバー人材センターにお願いしての恒例となった年1回の庭の草刈り。例年より1ヶ月遅れになったため、熱中症防止の休憩に時間をとられて労務の時間が延10時間近く伸びる。終了後、神戸のさんちか古本市に行く。なんにもなかった。
この週は、土日月とゲーム会があるので、3か月ぶりで家の中の大掃除。
8月第2週
カタンでは荒川ジュニアとの相性がとことん悪いようで前回今回と彼がいる間は一度も勝てない。今回も、会社の送別会があるとのことで彼が早退した後、図ったように勝て出す。道を引いて他人の邪魔をしたりしないのに、よってたかってみんなで私をいぢめる。これまで入ったことのなかった近所の中華料理屋にみんなで行くとけっこうおいしかった。次からここが外食の定番になりそう。
火曜日。お坊さんが来る。法事が終わる。ここ1週間入替り立ち替わり人がいるという状態で事前準備を含めてけっこう掃除に手をとられたが、これで年末まで、たぶん誰も来ない予定である。部屋の掃除はとうぶん休止。
作家というのは、想定される読者層に合わせるかたちで受容体としての〈自分〉を作り、その〈自分〉に向けて小説を書き、〈自分〉となってその作品を読む。読者は作者の作った〈自分〉に重ね合わせる【自分】を作り、その【自分】をもって作品に向かい合う。結果、「〈自分〉/読者」という文化を共有する疑似的共同体が発生する。それが読書であり読者であるというのが、むかし書いたことのあるぼくの読書論である。
十文字青の新作『聖断罪ドロシー01 絶対魔王少女は従わない』には違和感が残った。「帝国」に滅ぼされた心優しい魔王の娘とお付きの魔道士の少年の逃避行。困っている人を見かけると放っておけない少女のせいで次々にトラブルに見舞われる。作品自体は定番をうまくとりまとめているが、少年少女の子供っぽさが大人目線で書かれている気がする。幻狼ノベルスその他で一般向けに小説を書いたことで年齢を意識したのか、ライトノベルの書き方に迷いが感じられる。結果的に想定読者の一番席に自分自身を置くことができず、はすかい席から舞台を覗いている風で、それが作品に対する距離感を生んでいる。同じように幼い少年少女を主人公にしていても『いつも心に剣を』の時にはもっと自分目線で作品に寄り添っていた。
土曜日。神戸大SF研の若手OBに誘われて、療養中のOBの見舞いに行く。脳梗塞で発語障害と半身不随を発症した知人だが、半年前に見舞ったときと比べると、障害はあいかわらずだが、固まった感じだった体がずいぶんやわらかくなっている。動かない部分も含めて感情を体全体で表現できるようになっている。
一緒に行ったOBはエルピーダとルネサスの社員。KSFA関連にはNEC、シャープ、サンヨーと、就職時の花形企業、現在の構造不況業種が並び、早期退職が続出している。40代は大変だが、50代での大手企業の早期退職は退職金の割増もあり、経済面では意外と人生設計上の大きな齟齬はないようだ。とくに私みたいな独身組はそれなりに優雅に暮らしていけそうである。
8月第3週・第4週
客が来ないはずだったのに、小笠原、荒川父が新車のドライブがてらに家に来る。まあ、このふたりなら部屋の掃除は必要ないか。
お仕事の電話がある。「メールを見ていただけましたか」と言われて焦る。最近は、2、3日に一度は覗いているはずなのだが、ビジネスメールの氾濫に紛れて見落としていた。3週間以上の余裕があって一安心する。
例会で大野万紀が来ていて、その話をするとビジネス・メールは毎日消すことと言われる。スパム・メールの話になる。青心社には英文のあやしげなメールが定期的に来るとのこと。うちには送り手不明のいかがわしメールは1件も来ていない。
8月15日からローソン恒例のエヴァ・キャンペーン。お菓子2個買ってクリアファイルが貰えるセールだが、いつも3日くらいでなくなるファイルが今年は1週間経っても残っている。エヴァ人気に陰りがでてきたということか。
「ラブプラス」にはすぐ飽きた。告白モードまでも辿りついていない。一方久しぶりの「ファイヤーエンブレム」は出だしこそたらたらしていたが、途中から本腰が入る。16章まで進んだところで、盗賊のガイアを仲間にしそこなっていたことに我慢できず一からやり直す。こどもたちの基礎能力をあげるため、やたらとレベルアップ用の遭遇戦を繰り返したため、勢揃いしたこどもたちが強すぎてさくさく進む。2回クラスチェンジをした、ンン、ノノ、チキのマムクートトリオがほとんど限界値まで成長し、この3人だけですべての面がクリヤーできる状態。
勢いをつけて、ノーマル・モードからハード・モードに格上げした第2戦だったが全然前に進めない。遭遇戦出現アイテム「匂いの箱」が500$から4800$に値上がりしたのが致命的。経験値を割り振ってキャラを選んで育てるという「ファイヤーエンブレム」本来の遊び方に戻らざるを得なくなった。
大森望・豊崎由美ほか『文学賞メッタ斬り!ファイナル』は4年分の蓄積とゲスト多数の多彩でジャーナリスティックな内容で、文学賞を並べることで現在日本文学の全体像を描きあげた第1作には比べようのないものの、充実した内容。
8月第5週
月曜日。株の損益がプラスに転じる。今年3回目である。木曜金曜と日経平均が大きく下げるが、その2日間でブロッコリーが大きく上がって1週間プラスを維持。ただし微々たる浮きなので、全部を売り払ったら手数料分でマイナスになる。
「ファイヤーエンブレム」をメインとしながら、ライトノベルを読む。
茅田砂胡『トウルークの海賊(1)』(〇)、田口仙年堂『七星降霊学園の悪魔 (1)』(〇)、『本日の騎士ミロク (10)』(△)、鷹見一幸『ご主人様は山猫姫 (10)』(〇)
、岩田洋季『花×華 (6)』(〇)、渡瀬草一郎『輪環の魔導師 (10)』(△)、前田珠子『鬱金の暁闇 (13)』(△)、雨木シュウスケ『鋼殻のレギオス (21)』(△)、川原礫『アクセルワールド(2)』(〇)、伊藤ヒロ『魔王が家賃を払ってくれない(1)』(△)、鏡遊『神なる姫のイノセンス(1)』(△)、横山忠『ねがいプラス』(△)など。十文字青『一年十組の奮闘』も読んだ。(△)
(◎)がひとつもない。
『本日の騎士ミロク (10)』、『輪環の魔導師 (10)』は完結篇。他の(△)よりはいい出来だがお定まりの結末でクライマックスの盛り上がりに欠ける。『鬱金の暁闇 (13)』、『鋼殻のレギオス (21)』はバトル・シーンを分載する薄い製本で話が進まない。『神なる姫のイノセンス(1)』『ねがいプラス』は作家も出版社もちがうのに、一皮むくとほとんど同じ話だったのに感心する。ハーレム系フラグ立て本。