岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。一部blog化もされております(あまり意味ないけど)。


 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、
それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

 新しいiPad “The New iPad” が出て、世間一般ではやっぱりタブレットはAppleだよね、で決まりそうですが、マニアックな Android Tabletでの注目は、またまた中華Padではないかと思います。特に、オープンソース・ハードウェアのCPU Allwinner A10(なんだかすごいネーミング) を積んだモデルです。ソフトならともかく、ハードでオープンソースとはどういう意味か。CPUに代表されるシステムLSIは、ずいぶん前から回路図/設計図を引くのではなく、言語記述で設計するように変わりました。使用するのはC言語に似た構造記述言語です。ハードウェアといえども、GPLに従ったオープン化が可能なわけですね。製造がまちまちだった時代なら、(同じに作れないため)ソース公開に意味はなかったわけですが、最近はLSI工場(台湾メーカが世界標準)の互換性も高くなっています。A10はそのオープン化で生まれた最初のCPUで、中国メーカで作られています。億単位かかる設計コストが大幅に削減できるため、7ドルと従来のCPUの半額から3分の1(iPad用の同じARMコアA5Xは23ドル)と、高機能のCPUが非常に安価に製造できます。周辺機能も多数内蔵されており、これを使うと、タブレットの価格も半額以下になる…というコスト革命が起こりつつあります(でも、スペックも皆同じになるのが難点)。当面、A10の名前が付くTabletは注目でしょう。

 まあ、それはさておき、


 長山靖生『戦後SF事件史』(河出書房新社)は、日本SF大賞を受賞した『日本SF精神史』の続編ということで注目を浴びたのですが、戦後を網羅した割に重要事件が抜けていたり、ファンダムの些末な事件に紙数が費やされていてバランスが悪いとも批判されています。そういう点では、2000年に出た巽孝之『日本SF論争史』(勁草書房)の巻末にある牧眞司による年表の方が、1958年から1997年のクズSF論争までをコンパクトに網羅していて有用でしょう。

 とはいえ、ここでは有用性ではなく、もっと些末に抜けている事件を羅列してみましょう。

水鏡子による罵倒事件。今では、SF偉人の一人ですが面前罵倒人として有名でした。ソビエトSF翻訳の大家 深見弾を前にして、いかにソビエトSFは駄目かを滔々と論じ、南山宏のUFO講演に対し「つまらない」というレポート(1976)を書いて顰蹙を買い、同人誌「オービット」で横田順彌を酷評したことから「奇想天外」誌上(1979)で緊急座談会が開催された、という前代未聞の事件も引き起こしました。福島正実時代のごく初期を除けば、これだけプロを巻き込んだお騒がせアマチュアはいません。

ゼネプロ/ガイナックスを巡る事件。SF大会を巡る騒動は、『戦後SF事件史』にある通りながら、その底には、活字SF否定派の岡田斗司夫と、そうではない武田康廣との路線の違いがあります。こういった対立は、ファンダムの中では結構ありました。一般企業のガイナックスでは、それが余計に目立ったということでしょう。ちなみに、愛国戦隊事件(1982)で対立した、イスカーチェリ波津博明と武田康廣は、DAICON5(1986)で和解しています。ガイナックスでは、その後脱税事件も発生(1999)。

山形浩生オルタカルチャー訴訟事件
自分が出てこないのでつまらん、と書いたblogでまた注目されました。山形浩生も、ファンダム時代からの言動は全く変わっておらず、あらゆるテーマで自身の主張を一般人に向かって発信し続けています。オルタカルチャー事件(原告A=小谷真理、被告B=山形浩生)も、そういうレベルでは、彼にとって同じレベルの事件なのでしょう。とはいえ、それを笑って見過ごせるほど、関係者の社会的地位は同じではなかったということです

SF大会公金横領事件
なんてこともありました

朝のガスパール事件
。筒井康隆のアサヒネットのBBS「電脳筒井線」と連動する、朝日新聞連載小説『朝のガスパール』を巡って、PC-VANでそれを罵倒するH氏が逆に紙上で叩かれるという事態に(1991-92)。もう覚えている人も少ないでしょうが、生の罵倒語が飛び交う、プロを巻き込んだ割にあまり次元の高くない騒動です。

第1回日本SF大賞訴訟事件
。一般的には、SF作家クラブと早川書房との騒動のように思われていますし、『事件史』でもそのように取れる記述となっています。しかし、小松左京らは関与しましたが、そういう組織的な対立はありませんでした。実際、訴訟後もSFマガジンに執筆する作家は多くいました。根本的には、曖昧な出版契約に纏わる事件と言えます。日本SF大賞を巡るゴタゴタはまだ他にもありますが、利害関係者存命中のため、ここでもさすがに書けません。

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