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アレ!10月号(Project allez!)
電子雑誌(紙版はない)の第2号で小松左京追悼特集を組んでいる。雑誌としては最も早い9月刊。追悼をテーマにした書下ろし作品(短編、ショートショート)をこれだけ集めたものは、11月になっても結局これだけだ。関係が疎遠になっていた「SFマガジン」では、11月号の「日本SF第一世代特集」の中で触れているだけなので、雑誌の特集としてもっとも充実した内容となった。瀬名秀明、北野勇作、佐藤哲也、平山瑞穂、松崎有理、小林泰三、林巧、田中哲弥、津原泰水、堀晃が寄稿者。中では、冒頭の瀬名「新生」(「岬にて」「神への長い道」を思わせる)、最後の堀晃「巨星」(『虚無回廊』を思わせる)が良い。 |
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3・11の未来 日本・SF・想像力(作品社)
2011年3月11日に発生した東日本大震災、及び福島原発のメルトダウンによる放射線災害は、ネットワーク時代という、これまでにない時代背景の下で、例を見ない影響を日本全土に与えてきた。本書はその意味(あるいは無意味)を、SF、とりわけ、日本/世界を巡る大災害を重要なモチーフとしてきた小松左京の著作を引いて問い直すものである。編集の過程で、小松左京の死(7月26日)があったため、追悼という意味合いも出てきた。序文・小松左京に始まり、「第一部 SFから3.11への応答責任」では、笠井潔による論説、笠井潔/巽孝之/山田正紀による座談会(「アトム」「大和/ヤマト」「ゴジラ」と3.11)、豊田有恒、スーザン・ネイピアによる論考。「第二部 科学のことば、SFのことば」では、瀬名秀明による随想、谷甲州/森下一仁/小谷真理/石和義之による座談会(『日本沈没』、小松左京と3.11)、八代嘉美らによる論考。「第三部 SFが体験した3.11」新井素子、押井守、野尻抱介、大原まり子、クリストファー・ボルトン。「第四部 3.11以降の未来へ」桜坂洋、新城カズマら。そして、結語・巽孝之に終わる。(もっと詳しく) |
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文藝別冊 追悼小松左京(河出書房新社)
放送(朝日ニュースター)、イベント(Livewire、SF大会)での対談を4つ収録している。東浩紀・宮崎哲弥、鏡明・横田順彌・高橋良平・とりみき・大森望、堀晃・かんべむさし・山本弘・上田早夕里、瀬名秀明・森下一仁・巽孝之・林譲治・鹿野司・八代嘉美、以上4つ。これ以外に、創作メモ(『日本沈没』)、追悼エッセイ(桂米朝ら)、過去の小松左京論(手塚治虫、筒井康隆ら)、単行本未収録の講演記録、対談や発掘漫画など。徳間版と比べると、記事自体のオリジナリティにやや欠ける。
河出書房新社からは、熱心なファンでもあった東浩紀編による、思想家としての『小松左京セレクション』(全3巻)が出ている。フィクション/ノンフィクションの区別なく、そのテーマに沿って編まれたものという。現在は第1巻目の「日本編」のみ。 |
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完全読本 さよなら小松左京(徳間書店)
本書は書誌的な意味で良く取りまとめられている。第1部は小松の未収録作品、過去の対談(星新一、筒井康隆、桂米朝)の収録、ビブリオグラフィ、作家・評論家によるテーマ別ベスト作品選出(野尻泡介ら8人)である。これらは、過去の再現と言っても良い。第2部では新規に対談やインタビュー、座談会、エッセイ、評論を合計23編収録しており、“現在からの振り返り”により小松左京を捉えようとしている。写真は(ソースの関係もあり)他誌とそう変わらないが、カラーであることや対談CDが同梱されているなど、資料的な価値も考慮されている。
徳間書店からは、『虚無回廊』(過去に出た全3巻の合本版)、『トリビュート日本沈没』(2006年コミック版)が改定出版されている。何れも新規に座談会などを収録している。 |
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小松左京マガジン 第43巻(イオ)
もともと小松左京マガジンは、震災後に鬱状態になった小松左京のリハビリを目的としたプライベートマガジンだった。しかし、季刊で10年余りを出す間に、著者の自叙伝的な要素が強くなり、関係者との対談、年譜などが非常に充実している。42号が出た時点で小松左京が亡くなり、本43号が追悼文、訃報報道サマリーを載せた追悼号となる。目的からすれば、本号で終了なのだが、年譜などが未完のこともあり、当面継続されるようだ(43号からは、元秘書でイオ社長の乙部順子が発行人となった)。小松臨終の様子などは、本誌だけでしか読めない。 |
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文蔵2011.12(PHP研究所)
文庫形式雑誌の特集号。福井晴敏インタビュー、豊田有恒のエッセイ、大森望による主要著作紹介など、40頁弱のごく短い内容。上記の特集の中では、本年最後かつ一番小さな扱いとなる。 |