みだれめも・出納日記 第6回 (11年9月)
水鏡子
9月1日
8月の総支出:328,143円。物入りが多い月だったけど初の遊興費マイナスが効いてこの額に収まる。9月はリフォーム代を別建てにすると、大口払いは少ないはずなので、20万円以内を目指そう。ただし台所用品の大量買替を実行するとこの限りではなくなる。
8月の購入書籍:186冊 45,466円。高額本をかなり買ったので8月については平均単価が250円近い。今年累計1,342冊。
こちらの日記を書いていると、本篇のみだれめもを書こうとしても頭が切り替わらない。理屈がうまくこねられない。
9月第1週
神戸大SF研OBの廣澤氏から知人のミステリ研究者の佐々木氏が調査中の原題しかわからない海外SF作品の出典調べの協力を依頼される。昭和33年ころに刊行された「耽奇小説」という雑誌に載った作品に関係したものだという。そんな雑誌、グーグルを引いても出てこない。うちにある資料からでは判明しない。50年代作品ではないようだ。「本とひみつ」の古本極道連に協力を依頼する。おそろしいことに、みんながその雑誌のことを知っている。
知っているどころか、みんながその雑誌の何冊かを持っている。7冊刊行されたそうなのだが、そのうちの6冊を持っている人間までいる。恐るべし。その面々をしてもなかなか謎が解けない。牧眞司調査では過去に遡ってもそんな原題の本はみつからないようだ。
週末SF大会。超大型台風12号東海地方直撃ということで新幹線が動くのかと心配してると、どんどん西にずれて、逆に留守にする家の方が不安になる。
1日早く入って静岡駅周辺の古本屋をうろつく。欲しい本は何冊かあったが安い本がない。持っていないSFシリーズがそこそこ並んでいる店があって基本400円だったので300円に値切ったけれどだめだった。300円であった金背『ロストワールド』『地底旅行』だけ買う。長谷敏司氏と会って、ご挨拶と京フェスの進行についての相談をする。
ディーラーズ・ルームに行くと桐山さん(同志社SF研初代会長)がすごいファンジンが出ていると興奮気味に教えてくれる。魔界、イスカ、BAMU合同による、創刊当時のSFマガジンを模した『SFファンジン』という超豪華本。ミスプリをしたので、正誤表添付版と訂正版の2種類を販売している。売り子をしていた立花真奈美に「版が違うのだから両方買わなきゃ」と言い立てられて、「そんなことをするのは、日下三蔵や北原尚彦くらいのものだ」と言い返すと、突然頭をはたかれる。振り向くと、真後ろに北原氏がいた。「ぼくはそんなことはしない」とお怒りで、3冊買ってはいるけれど、これは知人に頼まれた分だと強硬に主張、2冊2冊買っている代島某と自分はちがうと懸命に線引きを繰り返した。SF大会に先乗りして、木曜金曜の2日間名古屋から静岡まで古本屋行脚をしていたそうで、線引き説得力はあまりない。ぼくが高くて買えなかったSFシリーズ『光の塔』400円を買っていた。
一こま目に『完結記念「円環少女」を語る』という長谷敏司企画があって、京フェスがらみでぼく的には必見。参加者全員が完読者であるので、キャラや設定について深く突っ込んだ話をしていた。ハングル版『円環少女』一式を頂く。長谷さんと担当編集者の成戸さんの3人で喫茶ルームにいくと、入れ替わり立ち替わり知人と顔合わせができて、そのまま3時間居座っていた。
青木社長にホテルを聞くと、偶然にも同じホテル。偶然でもないか。ホテル選びの基準が似たようなところにあるせいだろう。しかし当日チェックインした青木さんの部屋が前日チェックインしていたぼくの隣の部屋になったのには驚いた。二人で食事に行き、野田政権下の政治経済状況について話す。
2日目も2こま見たあと、ゲスト部屋にたむろっていた牧眞司、北原尚彦両氏を発見、企画をパスしてそのまま依頼した調査の件などだらだらしゃべる。気がつくと、列車の予約ぎりぎりの時間になって、大慌てで帰途につく。在来線の遅延があって、結局乗り遅れ、後続の自由席で帰る。今回持ち帰った本は、約30冊。大会中かなり買い食いをしたりで、想定よりも出費多し。
9月第2週
ひかりTVのチューナーをつなぐ。ひかりテレビにテレビ本体、電話、パソコン、ブルーレイ、と部屋をまたいでコードだらけでややこしい。リモコンも3本もある。
とりあえず2カ月の無料視聴期間があるので、その間の見放題ビデオ・サービスで録画をしようと思っていたら、録画禁止になっていた。しまった。ブルーレイを買った意味があまりない。
ビデオ・サービスはかなりの本数を揃えている。しかし予想以上に有料ビデオが多い。見放題プランの継続は必要なさそう。
SF大会で長谷氏との相談の結果、経歴関連年表を作って配ろうかという話になった。それを見ながら話をすればポイントを抽出した進行がやりやすい。
少し細かい年表を作ってみようと思うのと、『円環少女』他を読み返そうと思うので、それからせっかくなので見放題ビデオも見ようと思う。しかも、リフォームが後半に入ったので、そろそろ家の中を片付けて、要らないものを業者に捨ててもらう必要も。そんなこんなで、今月の「みだれめも」はお休みします。
それはそうと『円環少女』の最終巻。伏線の回収で予想のつく結末に無難に着地するのが長期シリーズのわりとよくあるパターンだけど、『円環少女』は、伏線をきちんと回収したうえに、他の巻を凌駕する時空を超えた大バトルを展開する。今年のぼくのベストSF候補。
週末に2週遅れでアリスソフト『ランスクエスト』を入手。『戦国ランス』で氷漬にされたシイルの呪いを解くため、大陸でクエストを繰り返すRPG。入手していいのか?この時期に。不安がよぎる。
9月第3週
不安適中。しなければならないことを放り出して、『ランスクエスト』。長谷氏年表の遅延にかなりの罪悪感。
わりとつまらない。というか、以前にも書いたけど、シミュレーションRPGに趣味が傾斜したせいでRPGタイプのレベル上げ作業が性格的につらくなってきている。そのくせ、出演キャラほぼ60名近くの内、たぶん20名くらいのレベル上げをすればいいはずなのに、だらだらと60名全員のレベル上げを繰り返している。女性キャラほぼ全員をレベル35まで引き上げることができるようにした。ストーリイ進行に必要のないクエストをこまめに何度もクリヤーしている。昔なら、根をつめて40時間くらいでこなしていたのに熱中できないぶんだらだらと100時間くらい遊んでいる。
9月第4週
リフォーム完成間近。各種家具及び食器類の再配置のために部屋の片づけをしなければならない。
キッチンがめちゃくちゃきれいになって、感動する。これだけきれいだと、やっぱり汚れの目立つ台所用品、古食器は置きづらく、捨てるべきだということに判断が傾く。収納したひと箱ひと箱捨てるべきか残すべきか内容を吟味し、さらに同系のものはひとつの箱に入れ直そうなどとやっているうち中途半端が重なってどんどん収拾がつかなくなる。
思考放棄して『ランスクエスト』。
終盤が近づいて、やりかたが根本的にまちがっていたのに気がついた。慎重に失敗しないようにクエストを処理してきたけど、そういうゲームではなかったようだ。クエストに失敗しても途中までの経験値は入るのだ。難度の高いクエストでばんばん失敗しながら経験値を増やし、キャラを育てていくべきだった。
欧州不安で株価が下降気味。今週来週勝負どころである。いろいろ画策。
結局この週も年表が完成しない。リフォーム部分は言い訳できる気もするけれど、どっちかというとそのせいではないと思う。罪悪感。
神戸の古本市を覗く。ウィリアム・ゴールディングの後期の長編が3冊、聞いたこともない出版社から出ている。1冊500円。まとめて買う。
代島君の参加もあって例会人数がすこし持ち直し気味。
9月第5週
リフォーム完了。
間取りが変わると視景が変貌する。4畳半の畳部屋と8畳のキッチンの間の間仕切りを取り払ってフローリングした台所兼書庫の1室に作り替えただけなのだが、旧来の民家ではありえない洋風の解放的な雰囲気になった。
さっそく書庫に少しだけ本を移す。
ほんのひと棚分くらい移動させただけで、次の日起きてみると体のふしぶしが痛い。相当に体をなまらせていることを実感する。