みだれめも 第197回
水鏡子
■前回といってもずいぶん前になりましたが、リスト遊びをしてみたい、と書いた手前もあって自分の読んだライトノベル作品の、好感度ベスト・リストを作ろうとしました。
作るにあたって考えたコンセプトは
大きくこの4点を意識しました。
完成型は男性作家作品と女性作家作品に区分けして、相撲の番付風に東西に分けました。男性か女性か正体に自信の持てない作者が何人かいたりします。
優劣をつけることが目的ではありません。あくまで興味があるジャンルについての自分の地図に自分目線の<等高線>を書き込むことで立体視できるものにしていくこと。ベスト選びの本旨というのはそういうことであるというのがぼくの考え方です。だから細かい順位づけは無意味と考え、上位5作品をAクラス、次点5作品をBクラスというふうにブロック分けし、それぞれのブロックごとに作家名あいうえお順に並べてみました。
2か月くらいでできあがると思ったのですがね。いろいろ悩むところも出てきてアップを迷うものになりました。
(1) 何のリスト?
基本対象は作品(シリーズ)です。1作家1作品とし、その作品について評価点をつけました。ただし同じ作家の次選作品、3選作品も選んでそれらの感触も若干全体評価に反映させました。その意味では作家ベストの意味合いもあります。次選作品はあくまで付帯的な評価対象です。
一例をあげます。今回勢いでAクラスにあげてしまった岩田洋季。まだ2冊しかでていない「めしあ」の設定に感動して、あまたの欠点に目をつぶって上位ランクさせました。安定して完成度の高い「護くん」が対象作品だと番付的にはたぶんCクラスになっていたはず。
最初次選作品だけで十分と思っていたのですが、困ったのは作者がラノベ・レーベル以外で力作作品を出しているケース。「マルドゥック」とか「太陽の簒奪者」とか。
基本、ラノベのベストなのでその種の作品を加えるのは(なにがラノベでなにがそうでないかは微妙なところでありますが)少しフェアでない気もしまして、そういうものを入れることも可能な場所として3選作品という枠を作りました。
だから、作者の最高傑作だと思ってもそういう作品は3選作品より上位には置いていません。作品・作家評価が極端に選出作品に偏る場合は次選・3選枠を空欄にしたりもしています。
全体を2部構成にしました。
「好感推移表」は読んだ作品をできるだけ網羅しようとするもの。そこで並べ替えしたものを拾い出して「ラノベ東西番付」として一瞥できるかたちにしました。
(2)「好感推移表」の概要
5冊以上読んでいる作家であることが最低条件です。
一人ひとりの作家について、3選作品以外にもその他の作品欄を設け、既読・未読に分けてわかるかぎり掲載しました。基本の読者は自分なので、作品(シリーズ)名は自分がわかればいいやといったはしょりもの。おそろしいことにここに並べた未読作品の半分以上が家にある。ブックオフさまのおかげである。
「対象作品・シリーズ(外伝含む)」と書いたように、関連作品はできるだけひとかたまりで評価するようにしました。表作成の労力をできるだけ軽くするためです。たとえば、茅田砂胡は「デルフィニア」から「クラッシュブレイズ」、「王女グリンダ」までひっくるめて一つの作品(シリーズ)です。(「暁の天使たち」が発表されなかったら「デルフィニア」と「スカーレット・ウィザード」は別シリーズ評価だったのですがね。)
「アリソン」から「メグとセロン」や「キノの旅」と「学園キノ」とか「マリア様」と「お釈迦様」も同様。
ただし、同一の世界設定を共有しても、キャラ同士のかかわりはほとんどないものは別作品として扱いました。秋山完の未来史や、上遠野浩平の虚空牙でつながる話、高殿円のパルメニアを舞台に少しづつ世代をずらした話など(「プリンセス・ハーツ」と「遠征王」はお父さんお母さんの話とその子供の話だったりします。)。
微妙は微妙。たとえば氷室冴子のような場合。ベストの対象としたのは「なぎさボーイ」「多恵子ガール」に「北里マドンナ」を加えたものですが、同じ町内の「蕨ヶ丘物語」を含めたものかどうか自分でも判然としません。
(3) 既読と未読
シリーズを基本単位としたせいで、既読未読の区分けは難しくなりました。
気に入っていたシリーズでも、途中で読まなくなった作品がいくつもあります。
なにをもって既読とし、なにを未読と考えるか。
とりあえず3選作品までについては半分以上読んでいることを条件としました。大半は全部読んでいるのですが、途中でもういいやと思ってしまったものがあるのです。もともと作家まとめ読みの性格なので、一気読みをしてその作家や作品について一定の感触を得てしまうと、その時期読みそこなって後続して入手した作品は読むのが億劫になるのです。なんかすでに得てしまった感触を再確認するためだけに読んでるとい虚しさに襲われるところがあるのです。上位に選んだ作家作品は、いわばそういう時期を過ぎてもなお続編が出るたびに(新刊本屋!で)買って読んでる作品だということです。
3選作品以外については、とりあえず3冊読んだシリーズは既読扱いしてもいいかなと思っています。ただし2冊目まで読んで見切りをつけた作品は既読としました。つまらないと評価を下したものですから。1冊目で見切りをつけた作品は、さすがに既読と言い張るのはやりすぎの感じで未読としています。また2冊読んで止まっていてもまた今度続きを読むかもしれないと思っているシリーズは未読扱いしています。
まあ、こういう部分はリストで遊ぶ人間が自由に決めればいい話。ひな形として提出する立場から、目安としての自分の基準を伝えていますが、使って遊ぶ人間が、自分の都合がいいようにさわっていくのがむしろこちらの希望さったりしています。ぼく自身迷いながらとりあえず自分なりの<いま現在>の納得として決めた答えにすぎないのだから。
(4)外部評価
自分の地図に書き込んだ自分目線の等高線。
ベスト選びについて、人の営為に優劣をつけ世界に対する自分の優越を求める行為という批判があります。くだいて云えば、おまえ何様?ということで、云われて仕方のない面と、そういう傲岸に導かれやすい心地よさがまちがいなくあります。
ベスト選びに限らないんですがね。
褒める、クサす、評価する(というより表現を伴う言う社会的行為はすべて)、受け取る人を媒介に自分の思いや意図を強引に世界の秩序に書き込もうという暴力的本質を内在し、暴力を行使する快感を隠れた動機にしているのだと思います。
それを否定することはできないけれど、少なくとも暴力を振るえること勘違いして、警察官や暴力団のように暴力を振るうことができる社会的特権を下しおかれたのだと思い込む愚は避けたいものです。
自分の地図に書き込んだ自分目線の等高線、というのはたぶんそんな思いの紡いだ先の自己弁解を兼ねた妥協点なのかもしれません。
自分の地図に書き込んだ自分目線の等高線とは、自分の目から見える景色に外延化された自分を書き込む行為。書庫が選択され配置された本を通じて自分を語ってくれるであろうと期待するのと同じ意味で、自分を視覚化する試みなのでしょう。そう考えると本を通じた自己確認の連鎖という意味で一貫した行為といえそうです。
へんな方に話が流れました。
たいせつなのは自分の地図とふつうの地図の重なり具合とずれぐあい、それを確認するために「このラノベ」や「完全読本」の順位表をつけてみました。
普通の数字はその作品の順位数字、その年度にその作品がない場合、ランクインした同じ作家のいちばん順位の高かった作品順位を( )数字であげたうえ、どこかで一度でもついた高い順位に合わせて小文字abcをつけてみました、というのがこの章の趣旨でした。
(5)作ってみて
読書経験がまるわかりの表というのは、やっぱりはずかしい。書庫のときとおんなじで、見えてくるのは読んだ本ではなく、あまりにも大量の読んでいない本の山。たった50人ほどしか読んでいなかったのだなあと悄然としております。読んだ数がトータル1000冊越えているにもかかわらず。
たくさん読んでいそうな見栄を自分で引き剥がすそんな所作でもあるわけで、そのへんがアップに迷った一番の理由です。
まあこれだけしか読んでいないということが、ライトノベルについて書く文章や感想にどう反映しているか、ベストの選び方にどう偏りを与えているかそういうことを読みこんでいく楽しみがあるのでないかと思います。ぼくには与えられていません。なぜならそれは、あくまでもぼくの読んでいない本をたくさん読んでいる人が自分の地図と照らし合わせていくなかで下していける意見なのですから。
今回は仕様編です。まだ細部のデータの充填が終了していません。来月か、さ来月には、データを埋めた完成表と、作った番付表の総評や上位作家についての感想などをぐたぐだ書き連ねてみようかなどと思っています。
ライトノベル好感作家作品東西番付 および ライトノベル好感推移表 (EXCELファイル:86KB)
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