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9月の記事と思っている間にもう10月ですね。先月も同じことを…。
京都SFフェスティバルが終わって、これで1年が暮れました――と言うにはまだ3ヶ月早いのですが、25年の習慣もあるので。
さて、今月は京フェス復習編です。当日(本会企画その3)のプログラム『ティプトリー再考』に使用したパワーポイントを再録して、当日のおさらいをしてみましょう。
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今年はティプトリー没後20回忌にあたります。同時に日本初紹介から33年、生誕から92年目でもあります。その節目(?)も振り返りながら、初紹介からほぼリアルタイムにフォローしてきたメンバーによる、座談会を開催致します。司会は岡本、出演は、ペンネーム+本名でダブルライフに生きてきた大野万紀、ダブルどころかもっと名前の多い鳥居定夫こと水鏡子、日本で最初期から女性作家に注目してきた米村秀雄です。
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今年のヒューゴー賞を受賞したジュリー・フィリップスは、星新一の評伝を書いた最相葉月と同様、SFネイティブな人ではありません。その分、客観的な評価ができる立場にあります。以下2シートは、フィリップスのサイトから、アリス・ブラッドリー(ティプトリー)の幼年時代、画家を目指した二十歳前後と、軍務に就き2回目の結婚をした頃の写真です。
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ティプトリーの経歴はあまりにも多岐に渡るため、略歴も3シートに跨ってしまいます。注目は、これまであまり語られてこなかった最初の結婚、画家の息子だったウィリアム・ディヴィーとの関係、バツ2だったハンティントン・シェルドンとの結婚でしょう。
 ティプトリーが養鶏業を経営していたとは! これまでのティプトリー経歴の拠り所はチャールズ・プラットによるインタビューのみでしたが、あのインタビューでは隠されている部分が無数にありました。ここでの注目は、作家になるまでの挫折の数々です。トップを狙って、果たせなかった夢が、ようやくティプトリーという仮面の影で実を結んだといえるでしょう。
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日本でティプトリーを初めて紹介したのは伊藤典夫ですが、アナログ作家(当時の編集長ジョン・キャンベルは保守的なSFを好んだため、面白みがないと思われていた)ということもあり大きな注目はしませんでした。ティプトリーは最初期アナログに掲載されることが多かったからです。しかし、水鏡子をはじめ大野万紀ら(当時は大学生)は、これまでにない視点を持った大型新人として注目していました。
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世界で最初に報道したLOCUSと、日本で最初に報道したノヴァ・エクスプレスです。
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最初の紹介から10年以上経って短編集、その後も紹介は五月雨的なのに、なぜか人気が継続するティプトリーの秘密とは。処女長編、1短編集、落穂拾い短編集などの未訳を考えると、まだまだ20年は持つかもしれません。
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下記は、ティプトリーデビュー前に、ジャーナリストを目指していたアリスが、半分本名で書いた普通小説です。ドイツに強制収用されていたポーランド娘たちが、アメリカ軍基地で味わった現実とは…。
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新事実を元にティプトリーを読み解こうという観点と、過去からのティプトリー評価を振り返るという2つの視点を欲張った企画のため、時間の関係で十分な議論までには至らず。合宿企画でも引き続いて1時間継続するなど、まずまず盛り上がった企画だったかも…と思っています。でも、おっさんたちが何を話したか憶えてませんね。記憶のある人は、本テキストを元にレポートを書いて提出してください。
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