岡本家記録とは別の話(Jコレクション篇)

 岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。9月は 『人面町四丁目』、『審判の日』、『ネフィリム』、『グラウディア』、『熱帯』などを収録。

 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

Jコレクション第1期(02年10冊)/第2期(03-04年12冊)完結

 うーむ、Jコレクションの本年分が完結し(2004年刊行予定分)、SFマガジン(2004年11月号)でも特集が組まれたので、ここで取りまとめてみたいと思います。Jコレクションは、全部のレビューを書いています。叢書を“すべて”読もうという意欲はあまり沸いてこないため(つまみ食いが多いたちですからね)、ちょっと珍しい。

  1. 北野勇作『どーなつ』 (2002年4月)

  2. 野尻抱介『太陽の簒奪者』 (2002年4月)

  3. 牧野修『傀儡后』 (2002年4月)

  4. 小林泰三『海を見る人』 (2002年5月)

  5. 佐藤哲也『妻の帝国』 (2002年6月)

  6. 林譲治『ウロボロスの波動』 (2002年7月)

  7. 飛浩隆『グラン・ヴァカンス 廃園の天使1』 (2002年9月)

  8. 高野史緒『アイオーン』 (2002年10月)

  9. 恩田陸『ロミオとロミオは永遠に』 (2002年10月)

  10. 平谷美樹『ノルンの永い夢』 (2002年11月)

  11. 田中啓文『忘却の船に流れは光』 (2003年7月)

  12. 紺野あきちか『フィニイ128のひみつ』 (2003年7月)

  13. 深堀骨『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』 (2003年8月)

  14. 藤田雅矢『星の綿毛』 (2003年10月)

  15. 牧野修『楽園の知恵 あるいはヒステリーの歴史』 (2003年11月)

  16. 浅暮三文『針』 (2004年1月)

  17. 西島大介『凹村戦争』 (2004年3月)

  18. 森奈津子『からくりアンモラル』 (2004年4月)

  19. 高野史緒『ラー』 (2004年5月)

  20. 坂本康宏『シン・マシン』 (2004年6月)

  21. 桐生祐狩『小説探偵GEDO』 (2004年7月)

  22. 仁木稔『グアルディア』 (2004年8月)

 このシリーズは、大原まり子、神林長平、谷甲州らの「新鋭書き下ろしSFノヴェルズ」以来(1983)、19年ぶりに刊行された叢書です。さらに遡れば、小松左京、光瀬龍、眉村卓らの「日本SFシリーズ」(1964)にも連なる由緒正しい歴史的なシリーズです。最大の違いは、以下の3点です。
 

記号

第1は、先の2つのシリーズでは、まだ早川書房がSFのコアを押さえていると言えたものが、もはやそうでない点。
 作家は、別の出版社(他社系SF新人賞、ファンタジー賞/ホラー大賞などなど)からデビューしており、ふだん書く作品もメインはSFに分類されません。

記号

第2は、今回の多くの作家にとって、ハヤカワのSF(60から70年代に出版されたもの)が各自の創作マインドの原点であった点。
 いわば、隠された信仰の中核にハヤカワがあって、メッカへの巡礼/総本山への奉納のようにして書きあげられたわけです(悪い意味ではありません、念のため)。

記号

第3は、本来SFに備わっていた“なんでも箱”機能の復活です。
 たとえば、異色作家ラファティやスタージョンの多くの作品にはSF以外も含まれますが、他で出版ができそうにない型破りの要素が強かったため、SFだけが受け入れたのです(上記では『妻の帝国』などが典型)。深堀骨、紺野あきちか、仁木稔らも従来にないスタイルの作品で、本叢書以外では出版が難しかったと思われます。

 つまり、Jコレクションは「逆転した異色作家作品集」、SF外(と分類される)作家が異色作品を書いたら、それがSFだった(とみなせる)叢書なのです。

THATTA 197号へ戻る
トップページへ戻る