岡本家記録とは別の話(航路篇)

岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。9月は『バイオハザード』、『君がいる風景』、『イカ星人』、『聚楽』、『群青神殿』、『航路』を収録。

 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

臨死航路

 先月は『デイヴィー』でしたが、今月は『航路』を読みました。 小説自体の雰囲気も全く異なります(まあ、パングボーンとコニー・ウィリスが似ているわけはない)。今回読んだのが、再校をベースに編集されたサンプル版という点も異例ですね。2000枚、3.7cmもあって800ページ。でもこのページ数ならば、通常ぶ厚さはこの1.5倍から2倍になります。それぐらいの大作というわけです。ちなみに大森が比喩に出す宮部みゆき『模倣犯』(ページ数の比喩ではないけど)は3500枚で2段組上下巻8cmなので、同様の版組みならば推定寸法は4.5cmか。ちなみに、この寸法は グレッグ・ベア『ダーウィンの使者』と同じですね。ただし、『ダーウィン…』は1段組、今回は2段組でしょう。


サンプル版はこの厚さ(『クリプトノミコンは』比較用)、最終的には上下2巻本となる模様(10月10日刊)

 本書は臨死体験小説です。臨死体験(Near Death Experience)は、客観的には瀕死の脳内分泌物(神経伝達物質)が見せる幻覚なのですが、「それだけとは思いたくない」人情から、さまざまに解釈されてきました。ちなみに、この言葉でGoogleすると、131万件もヒットしますね (注)、いやはや。――という、人気テーマ(?)に材をとった、ウィリスお得意の諧謔に満ちた、3段落ちの謎解きサスペンス小説です。 まあでも、これだけ流布されたテーマである以上、当たり前の解釈ではちっとも面白くなりません。が、それにしても、こんな文藝的決着でいいのか。さらに、2000枚を費やして描かれた臨死世界のリアリティには、作者のもう1つの趣味に関係した皮肉も出てきます。何につけ、根拠のない流行りものには、強烈な反骨精神が働くようで。

 前回ウィリスを訳したときは、ペストの毒(『ドゥームズデイ・ブック』:1700枚)にあてられて入院した訳者も、今回は日記の更新がストップした程度で済んだようです。人間慣れが肝心。うーむ、レビューでも書きましたが、ネタを割らずに書けることは少ないので、紹介には難渋しますね (上記リンクから評者のレビューもご参考ください)。 その他の人のレビューも「強力なオススメ」的表現にとどまっていて、いかにも苦しい。何がどうして「オススメ」なのか、謎は謎を呼ぶ――とか書いて、読みたくなりました?
 

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注:めんどうくさいので、トップに出てきたサイトはここ。ウィリスもバカにしているメルヴィン・モース先生関係。体験談が聞けます。

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日本の臨死体験小説『BRAIN VALLEY』のレビュー

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たとえば、こういうほめ方(積ん読パラダイス)

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たとえば、こういうものも(たぶん読書日記)

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