岡本家記録とは別の話(幻の傑作篇)

岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。8月は『 クリプトノミコン』、『ウロボロスの波動』、『コカイン・ナイト』、『デイヴィー』を収録。

 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

幻の傑作

 『デイヴィー』を読みました。いや、意外に面白い上に小説的な完成度が高いのでちょっと驚きました。現在でも違和感のない性描写や、いかにも自然な300年後の世界のありさま、出会いと別れの悲哀も、未来の中世なら、いかにもこうかも、と思わせる納得がいく内容でした。

 とはいえ、どうも、最近は古い作品に対する嗜好が変わってきていますね。中高年性SF許容症か。

 さて、この本の解説(牧眞司)には、いろんな“幻の傑作”が記載されています(下記)。多くはサンリオSF文庫で出版が予定されていたもの(『デイヴィー』もそうです)。でも、どんな話かはよく覚えていませんね。ちなみに、簡単な解説を書くと、以下のようになります。もっとも、私は原書で読んだわけではないので、単なる「ウワサ話」と思ってください。ウワサ(風評)なので、間違っているかも。

 (アルファベット順。マイナーなものにはリンクを作成しました。作家はAから、なぜかSまでですね)、
 

  1. チェスター・アンダースン『バタフライ・キッド』(1967)
    グリニッジ・ビレッジを舞台にした、ヒッピー文化をベースにしたファンタジイの傑作。書影はこちら。91年死去。
     

  2. ジョン・ブラナー『ザンジバーに立つ』(1968)
    人口過剰に陥った未来の地球(全人類を詰め込んで立たせるとザンジバー島の面積になる)を舞台に、さまざまな人間ドラマを書き込んだブラナーの全体小説。95年死去。
     

  3. デイヴィッド・R・バンチ 『モダーニアの物語』(1971)
    短編と詩作を中心とした作家。短編80編のほぼ半数を収めた作品集で、ロボットたちの国モデランを舞台にしたさまざまなエピソードを描く。一部翻訳あり。00年死去。
     

  4. D・G・コンプトン『合成快楽』(1968)
    脳波の記録再生が可能になった未来、さまざまな情動を強化再生することで、人々に未経験の感覚が与えられるようになる。『ニューロマンサー』につながる重厚な作品。
     

  5. サミュエル・R・ディレイニー『ベータ2のバラッド』 (1965)
    詳しい紹介がここにあります。 (紹介ページのホームはこちら)
     

  6. チャールズ・L・ハーネス『リタネルの輪』(1968)
    短編集『ローズ』が著名だが、本書は宇宙の死と再生までを描く壮大な長編。やや異質な『ウルフヘッド』(1978)のみサンリオで翻訳あり。
     

  7. R・A・ラファティ『第4の宿』(1969)
    詳しい紹介がここにあります。 (ホームはこちら) 01年死去。
     

  8. キース・ロバーツ『白亜の巨人』(1974)
    ホロコースト後の一人語りが、次々と別の物語に連なり、ついには円環構造をなすというオムニバス短編集。『パヴァーヌ』よりもファンタジイ色が強い。 古沢ファンジンReview IKAに詳細紹介あり。00年死去。
     

  9. ジョアンナ・ラス『パラダイスでのピクニック』(1968)
    『フィメールマン』(1975)に先行して書かれた、ジェンダー問題を内在する、アレックスシリーズの一環。クールな主人公アレックスは、タフで聡明ながら“美人ではない”。
     

  10. ボブ・ショウ『オービッツヴィル』(1975)
    ダイソン球に分散して居住する人々を扱った、ペシミスティックな英国SF協会賞受賞傑作長編。96年死去。
     

  11. ロバート・シルヴァーバーグ『骸骨の書』(1972)
    不死と再生という、著者の代表的なテーマの集大成長編。
     

  12. ジョン・スラデック 『機械生物』(1968)
    自己再生産ができる機械生物を作り出した、田舎の玩具会社に巻き起こる大騒動。1971年の浅倉久志さんによる詳しい紹介がきっかけで知名度が高い。本書は著者の処女長編。00年死去。
     

  13. ノーマン・スピンラッド『バグ・ジャック・バロン』(1969)
    相手を罵倒できるTV番組を舞台に、 反逆的、強烈、猥雑な風刺で一気に人気(悪評)を博したスピンラッドの初期傑作。ムアコックの「ニューワールズ」連載。
     

  14. シオドア・スタージョン『ヴィーナス・プラスX』(1960)
    スタージョンの重要なテーマ、「性」の役割を描いたアンチユートピア小説。ジェンダー問題の原点としても注目される。比較的最近再刊された。85年死去。


 どうですか。 牧眞司の年代(当時は翻訳よりも、紹介だけが先行していた。本が多量に出る今日の状況下では、紹介記事は昔ほどインパクトを与えていません)の関係もあり、1960-70初に集中していることがわかります。

 読みたいですか? 私の感じからすると、時事ネタものは、もう10年経ってからの方がいいかもしれません。読みたいと思った人は、扶桑社に励ましのメールを出しましょう。
 今後、
 

  1. ハーラン・エリスン『死の鳥』(1975)
    元祖カウンター・カルチャーSFの旗手エリスンの、中期傑作短編集。
     

  2. ウオルター・テヴィス『地球に落ちてきた男』(1963)
    ニコラス・ローグにより映画化された作品(デビッド・ボウイ主演)の原作。地味な侵略SFながら、組織と個人の関係を考察している。

は出るようです。

THATTA 172号へ戻る

トップページへ戻る