岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。2月は『グリーン・マーズ』、『ドラキュラ崩御』、『愛のひだりがわ』、『SF JAPAN』を収録。
ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。
日本SF大賞
まあ、なんというか。
予想通りSF大賞の選評は面白いものでした。『20世紀SF』の記述について怒る人、『鳥類学者のファンタジア』について怒る人、思わせぶりな『ΑΩ』について怒る人、
中島梓を怒る人、と分かれていますが、満遍なく話題を振りまいた価値はあるかと思います。
『20世紀SF』は、他の選者を含めて理解がなく、これを1次選出した推薦者は理由も明記すべきではないかと思われます。オリジナリティ・ゼロ
(「ひとのフンドシ」「総花的」「史観なし」「雑誌の特集的選定」)と感じられたという点も、中村・山岸のアピール度の低さを物語っています。選考委員は、作家として優秀でも、情報通ではないのですから、戦略的なプレゼンテーションも必要でしょう。
『20世紀SF』評者のレビュー、その2、その3 |
『鳥類学者…』については、これは文学の立場というより、“SFファン”が本書をどう捉えたかに意味がある作品です。実際、作者は本書をチャーリー・パーカーのために書いたのですし、SFがどうのこうのは関心の埒外だったに違いありません。ただ、その仕掛けを理解し、注目して騒いだのはSFファンだけ。つまり、SF界だけで話題を呼んだ純文学だったわけですね。わたしなんぞは、「SF大賞」とは、SFファンが何を面白がったかの指標と考えています。大昔ならともかく、いまさらSF以外の文学全般の世間体を意識する必要などない。それぐらい、今の読書はジャンル的に専門化されています。という意味では、
中島梓が「頼まれもしないのになぜSF大賞に選ぶのか」といったのも、1つの解釈ではあります。
『鳥類学者のファンタジア』評者のレビュー |
『ΑΩ』は、中島梓さんだけができるような発言ですね。本書のような、無意味と思えるくらいバイオレンスが噴出する“邪悪な”小説は、昔から中島梓の嫌う作品だったので、止むを得ないとも思われます。生理的嫌悪というより、物語として存在の必然性なしという立場ですね。ちょっと突き放したような皮肉な書き方も、実は断罪しないための気遣いの一端でもあります(ホントか)。
『ΑΩ』評者のレビュー |
その昔、中島梓(栗本薫)が日本SF作家論(注1)を引っさげて登場したとき、SFファンの反応は結構冷たいものがありました。 どこか的を外した見解ではないか、という見方が多かった。これは、栗本薫が江戸川乱歩賞(1978)や群像新人賞(評論部門:1977)を受賞して華々しくデビューした、いわば“外様の人”だったせいもあるでしょう。本人の選んだ当時のSFベスト10も、ちょっと変わったものでした(注2)。ファンからは、SFが分かっていないブンガクの人、という捉え方に近かった。 なんだか、立場的に奥泉光と似てますね。このような村意識(下記参照)は、今でも結構残っています。とはいえ、当時は若い評論家志望者に私的なアドバイスまでして くれるなど、親切でファンを大事にする人だったと思います。
問題の読者投稿(おたより欄)と、それを掲載した「SFイズム6号」(1983)
上記は、栗本薫がSF(ファン)から離れていった決定的事件とされるものです。もはや「SFイズム」など覚えている人も少ないでしょうけれど、「SF版・噂の真相」を目指した、ファンジンのようなプロ雑誌でした。おたより欄で一読者が書いた、SF作家採点表の一節です (おたよりは、編集者の意向の一部と見なされます)。まあ、書いた本人にもたぶん自覚はなく、無神経/無責任な内容ですが、文脈的に栗本薫の部分はインパクトが大きい (1983年『道化師と神』というSF論を上梓。自身がSFファンであることが強調されていた)。その後、SFの流れとかかわりなく20年が過ぎて、このとばっちりを ホラー小説大賞受賞作家の小林泰三が受けるというのも、ある種の宿命でしょう(って何の)。
注1:早稲田文学の「平井和正論」、奇想天外(1978年4月)に掲載された「光瀬龍論」など。これらはその後も単行本化されていないはず。 |
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注2:(1)コナン・シリーズ(2)クトゥルー神話(3)火星シリーズ(4)蜃気楼の戦士(5)ノースウェスト・スミスシリーズ(6)ポール・アンダースン全部(7)地球の長い午後(8)夜の翼(9)宇宙の一匹狼(10)宇宙船ビーグル号、といったもの(SF宝石1979年8月号)。 |
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鈴木力の
中島梓批判 既に有名ですね。この論旨には賛同しませんが。 |
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栗本薫(中島梓)の公式HP ここにある日記ページを見るだけでは普通のオバさんです。 |