ワールドコン・レポート

by おかだんな


 なんかほとんどレポーターと化していますが。それはまあおいておくとして。

 ときに一九九九年八月も終わりとなろうころ、まだまだ蒸し暑い日本をあとにして、第五七回世界SF大会に参加するため(そんな大仰なものか……)、南半球はオーストラリア、メルボルンを訪れました。

 はじめての南半球、はじめての赤道越え。当然季節は正反対。日本が夏の終わりなら向こうはまだ春というには早い季節。涼しいどころか寒いんだろうなぁと覚悟して、機内から着こんでおいたのだけれど実際にはそれほどでもない。それどころか、天気のいい昼間ならTシャツ一枚でもだいじょうぶなほどの陽気。
 世界SF大会といえばたいがいは北米大陸で開催されるのだが、四、五年に一度の割で今回のように外にでることになっている。
 そのせいか参加者数も例年をグッと下回り、約一六〇〇人という、ほとんど日本SF大会と変わらないほどの規模になった。たしかにいつもに比べれば静かというか、空間が目立つけれど、それもよく考えてみれば当然のことで、一週間あるのだからそれほどみんなあわただしくしていない。

バクスター氏と大迫氏 今回のゲスト・オヴ・オナーはグレゴリー・ベンフォード。メディアのゲストが『バビロン五』のプロデューサー、マイケル・ストラジンスキー。プログラムブックによれば、日本からは庵野秀明氏も招かれていたようだが、どうも出発直前のアクシデントでドタキャンになったとか。オーストラリアでのジャパニメーションの盛り上がりを考えれば、さぞがっかりしたご当地のファンも多かったことだろう。
 パネル企画は参加者数の割にはまとまったものが多かった。さすがに宇宙開発関係の濃い〜のはなかったけれど、作品やテーマをに中心に据えたものが充実していたように思える。筆者はのぞいていないのだけれど、リーディング(著者みずからが朗読してくれる、ファン垂涎の企画)もジョー・ホールドマン、ロバート・ソウヤー、スティーヴン・バクスター、テリー・プラチェットなど英米の大物揃いだった。今年はヒューゴー賞の授賞式とはべつに、「そのほかの授賞式」というのがあって、星雲賞はそこで授与された。写真は『タイムシップ』でめでたく二度目の星雲賞をものにしてご満悦のバクスター氏と大迫さん。残念ながらというかキム・スタンリー・ロビンスンは来ていませんでした。

 などといった大会の模様はSFオンラインやSFマガジンの記事にゆずるとして、今回は旅行記ということなので私事に片寄ったレポートをおとどけしよう。

メルボルンの街
ワインマーケット

 メルボルンという街はけっこう古く、かつてはオーストラリアの首都だったこともあるほどで、石造りの建物とモダンなインテリジェンスビルが軒を並べていながら、それがなぜか奇妙な調和を醸しだしている。
 公共の交通手段はメットと呼ばれる路面電車(トラム)とバスの組み合わせが主体で、これでほとんどどこへでも行ける。とくに昼間はワインレッドのトラム「シティ・サークル」を無料で利用できるのがうれしい。ホテルからトラムを乗り継いで一五分ほどで市民の台所「ヴィクトリア・マーケット」に着く。ここでは衣料雑貨から生鮮食料品、おみやげにいたるまであらゆるものが手に入る。最近は観光客がよく訪れるようになったせいで多少売値も上がったらしいが、それでも市内でふつうに買うよりも安く、また値切る醍醐味が味わえる。ここではスニーカーやスエードのフード付きコート、セーター、みやげのTシャツ、バックル、ぬいぐるみ、鞄(もっていった鞄の取っ手が壊れたので急遽購入)などなど、ほとんど毎日のように通い詰め、ディーラーズルームのわびしさをすべてここで発散するかのように散財してしまった。そして日曜ともなると十からのワイナリーがテーブルを並べ、自慢のワインをテイスティングさせてくれる。メルボルンの郊外にはヤラ・ヴァレーというワインの生産地があるのだ。産地直送のワインを味わえる幸せをかみしめる。当然、ほとんど毎日ワイン三昧だったし。

オイスター・バーにて食事 さてワインといえば食事なんだけど、この街は海にも面しているので、シーフードもなかなかのものがあった。写真は今回の大会の日本エージェントである大迫夫妻と、大会前日に「オイスター・バー」にでかけたところ。偶然にも小川隆さんと出会う。本来ディナーはドレスコードがあるだろうなぁ、入れるかなぁと不安に思っていたところ、これがさにあらず、トレーナーにスニーカーといういでたちでもすんなり入店できた。やはり不景気もあってあまり客を選べないのだろうか、などと邪推したりして。ともあれ、ここの食事は事前に調べておいたガイドブックの評判どおりで、牡蠣は生も調理したのも絶品だったし、食後の自家製アイスクリームも濃厚で美味だった。
 ワニやエミューこそ食べなかった(ジャーキーは買ってきました)のだけれど、カンガルーのサーロインが意外といけた。レアで赤ワイン風味に仕上げてあったけれど、焼きすぎると硬くなるのかもしれない。臭みはなくて油っこくもなく淡泊な味。

カジノ おっと忘れていけないのが、大会会場をはさんでヤラ川の向かい岸に最近オープンしたというカジノ「クラウン」でのこと。カジノ初体験だったのでびくびくもので遊びに行ったのが、なんと最初にすわったスロットマシンが調子よく、パチンコでいえば「終了」してしまったらしい。一瞬マシンを壊してしまったのかと青くなる。不足分のコインを取るのを忘れるなと係りのおにいさんに教えてもらうまで、まさかそんなに勝ったと思ってなかったもので。とはいえ、いちばん低いレート(一クレジット一セント、高いのだと一クレジット一ドルという怖いのもある)のマシンで遊んでいたので、額としてはたいしたことはなかったが、それでも気分は上々だった。結局は最終日までに勝った分は使ってしまいましたが。しょせんはあぶく銭だったということ。

 来年の開催地はシカゴだ。きっと大会の規模ははるかに大きくなるはずだろうが、今年ほどのんびりはできないと思う。って、すでにいく気でいるのが怖かったりして。やっぱりカジノで勝った分は使わず残しておいて、来年の足しに貯金しておくべきだったかと悔やんでも後の祭り。さてミニロトでも買おうかしらん。あ、悔やんでいるといえば、お風呂の水を流すときの渦巻きを確認するの忘れてたなぁ(笑)。


THATTA 138号へ戻る

トップページへ戻る