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岡本家記録とは別の話(4月から5月)

 岡本家記録(Web版)もご参照ください。

 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

ゲーム用CPUはインテルを越えるか
 今月は、先月の『内輪』でも触れられた、ちょっと毛色の違う話題を。
 発表当時大いに話題を呼んだ、プレイステーション2用のゲームCPU(正確には、レンダリング・エンジン+ジオメトリ・エンジン)は、インテルCPUを越えた!、と喧伝され、世の中もなるほどそうかと納得しているものです。そのあおりを喰って、ドリームキャストが早くも失速、SONYのネームバリューはさすがに大きいものがあります。
 ジオメトリ(SONYはエモーション・エンジンと称する)とは絵の座標計算をする部分、レンダリング(同じく、グラフィック・シンセサイザと称する)とは絵を描く部分にあたります。普通のパソコンならば、ジオメトリはCPU(ペンティアムやパワーPC)が、レンダリングはグラフィックコントローラ(RIVAとかVodoo)が行ないます。
 ところで、このレンダリング・エンジンは約279平方ミリの面積があり、ジオメトリ・エンジンが約240平方ミリあります――って、どれぐらい大変なのか、なかなか分かりにくい。比較の対象として、インテルのCPUで比較的近いものに、モバイルペンティアムU(ノートPC用のペンティアム)というものがあります。これは、面積222平方ミリあるのでほぼ同等でしょう。LSIとして見ると、これらは「非常に大きい」チップになります。
 LSIはウェハと呼ばれる丸いシリコン製の板の上に作られます。ウェハの大きさはもちろん有限なので、チップが大きければ大きいほど、できるLSIの数は減ることになります。

 チップのできる数=ウェハ面積÷チップ面積

 ただし、この数量は比例せず、ある面積を超えるとチップが急速に取れなくなります。なぜか? チップというものは微少なトランジスタの固まりなのですが、このトランジスタは化学的な製造過程(写真とよく似た技術)で作られます。しかし、ウェハの上で作られるトランジスタは、ある確率の下で、かならず(電子的、化学的)欠陥が生じます。たとえば、不良の確率が100万個に1個とします。その場合は、10万トランジスタのチップを10個作ると、そのうちの1個は不良になる可能性が高くなります(確率の問題ですが)。チップにあるトランジスタは、すべて何らかの役割で動いているので、1個くらいならいいや、という訳にはいきません。とすると、100万トランジスタよりも大きなチップがあったなら、このチップ中には1個の欠陥がかならず生じてしまいます。したがって、1個も取れない全滅状態になります。

 チップのできる数=欠陥率×(ウェハ面積÷チップ面積)

 実際のLSIメーカの欠陥率は、これよりずっと低いのですが、それにしても、面積250平方ミリともなれば、トランジスタ数は3000万個近くになるため、動作しないチップが作られる確率も高くなるのです。
 さて、先のモバイルペンティアムは1個8万円(1000個買ったとき)します。ソニーと東芝が共同生産する新エンジンがもし同じレベルで作られるならば、2個で16万円することになります。もちろん、そんな値段でゲーム機は作れないので、うんと安く、ほとんど原価(それでも1個2万円?)で製造されることになるでしょう。これでも、ゲーム機価格としては、10万近くではないでしょうか。これより安く売られるとしたら、部品納入している会社はみんな泣きます。たぶん工場は儲からないことでしょう。ゲーム業界は、ハードで儲ける業界ではありません。という意味で、結局インテルというハードメーカを越えるようなハードができても、インテルを越える利益を上げられない。利益が出なければ、継続的な発展もない。一人勝ちするハードメーカも出ないと思われます。


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