二重時間者

四郷威智



1998年12月

新潮 12 ヴィクトル・ペレーヴィン 世界から 冬ごもりの場所(沼野充義訳)
小説すばる 12 かんべむさし 何たるホテルだ〜エジプト・カイロ〜 世界まちまちめぐり
アニメージュ 12 さいとうよしこ 年末に向けて新機能続々!! カラオケ番長の「よし」が出たわよ
東京人 12 永瀬唯 電脳博覧会12 世界のいまを知るソフト。共同通信社『世界年鑑[CD−ROM版]』
日本児童文学 11・12 横田順彌 ジャンルの壁を取りはずそう  
日本古書通信 11 横田順彌 明治時代は謎だらけ!! 上司小剣と水田南陽
ちくま 11 横田順彌 旧聞異聞44 活字のユーモア
ユリイカ 12 岡崎由美 「武侠」の里帰り われ発見せり
モノマガジン 12−2 岡田斗司夫 おたくの歩き方  
モノマガジン 12−2 岡田斗司夫 新オタク日記 10/15-10/31
小説すばる 12 乙一 カザリとヨーコ  
ちくま 11 笠井潔 二○世紀とファンタジーの遍歴史 小谷真理『ファンタジーの冒険』[評]
NAVI 1 笠井潔 A history of my reading[読書の心臓] 小松和彦『異人論』
すばる 12 笠井潔 エンターテイメント情勢分析36 逆賊と制度−和田はつ子『かくし念仏』
小説すばる 12 笠井潔 もうひとつの『バイバイ、エンジェル』 デビューへカウントダウン
小説新潮 12 宮部みゆき 誘拐 タクシードライバー尾藤浩一のちょっと奇妙な業務日誌その11
小説すばる 12 宮部みゆき ファーザーズ・ランド(前編) バッド・カンパニー第四話
アニメージュ 12 京極夏彦・大森望 主人公はリリアン少女!?(ゲスト竹本健治) 京極夏彦読者と世界を作る第8回 
本の雑誌 12 鏡明 連続的SF話173 ”自分”を探して ホーガン、小野不由美、リント
翻訳の世界 12 金子伸郎 翻訳Diplomaコース32 扶桑社
航空ファン 1 江藤厳 不屈の男,ジョン・グレン  
新潮45 12 荒俣宏 世紀の大奇人三田平凡寺の「戦中日記」  
芸術新潮 12 荒俣宏 小生は「学術廃棄物」捜査官 [早稲田大学博物館、図書館の珍品を見物]
月刊アスキー 12 高千穂遥 高千穂遥の大混線かかってきなさい! [MP3について] 
すばる 12 佐藤亜紀 エッセイことばの世界 カビリア症候群 
アニメージュ 12 堺三保 第6回「ロボットってなに?」 SFですよ回天篇 
本の雑誌 12 山岸真 SF新世紀 スーパー科学者ペレグリーノの超大作『ダスト』
小説新潮 12 酒見賢一 陋巷に在り94
11 小山鉄郎 時代はファンタジー? 小谷真理『ファンタジーの冒険』[評]
文芸 小谷真理 BOOK REVIEW 『紅一点論』
すばる 12 小谷真理 すばるBookGarden さらば愛しき幻獣 川上弘美『神様』
ユリイカ 12 小谷真理 女神・魔女・サイボーグ 鏡リュウジとの対談
小説現代 12 清水義範 とりもなおさず社会科 第四話・自由について自由に考えてみる
現代 12 清水義範 教師とは何を教える人間なのだろう 「遠く学校から離れて」12
小説すばる 12 清水義範 耳の言葉、目の言葉 [ことばの遊園地]シリーズ第11話
東京人 12 石川英輔 江戸の飲み水事情。  
ダ・ヴィンチ 12 川端裕人 [インタビュー]  
歴史群像 秋・冬 川又千秋 十二戦艦物語  
ユリイカ 12 大瀧啓裕 ゲームとその解法 ワールド・カルチュア・マップ幻想通信
文学界 12 大原まり子 クドルシュチス(邪視) 水の世紀・第八話
本の雑誌 12 大森望 新刊めったくたガイド 九○年代最強の同時代SF『スノウ・クラッシュ』をさあ読め!
月刊アスキー 12 大森望 Silicon Frog Oil [オンライン書店およびオンライン出版について]
小説すばる 12 大森望 佐藤正午『Y』 今月の、この一冊
アニメージュ 12 大森望 ムツカしい本を読むと眠くなる初恋地獄篇 『夏のロケット』『池袋ウエストゲートパーク』『スノウ・クラッシュ』
文芸 巽孝之 マイ・ベスト・藤沢周 『ナンブ式』
翻訳の世界 12 巽孝之 アメリカ文学の思想4 ピューリタニズム(1) 
すばる 12 巽孝之 すばるBookGarden マンハッタンの奴隷たち 辻仁成『ワイルドフラワー』
財界 11-24 茶木則雄 BOOK REVIEW 『屍鬼』
ちくま 11 中島梓 ジャンルの創始者として [自著『タナトスの子供たち』について]
婦人公論 11-22 中島梓 「純粋男役」の昨日・今日・明日 [麻路さきとの対談]
小説宝石 12 朝山実 宮部みゆきインタヴュー  
小説すばる 12 津原泰水 埋葬虫  
婦人公論 11-22 唐沢俊一 古書店探検へ行こう  
別冊文芸春秋 98autumn 南條竹則 あくび猫  
小説すばる 12 南條竹則 月魔 [美食法廷]シリーズ・その三 
小説すばる 12 半村良 これからがおもしろい作家 選評
本の雑誌 12 北原尚彦 神田番外地 豪華絢爛な執筆陣重さもズッシリの百周年記念非売本,夢万年−聖獣伝説
青春と読書 11 牧野修 シカバネ日記 読切小説 
オール読物 12 夢枕獏 「オール読物」と私 あとは野坂さんだけです
アエラ 11-30 夢枕獏
聞き手・佐藤太郎
21世紀を読む183 格闘技 
別冊文芸春秋 99autumn 夢枕獏 腐りゆく天使  
Men's Ex 12 夢枕獏 詠嘆調熱烈印やじ馬主義12 キノコ狩りをしてきたぞ
小説すばる 12 夢枕獏 20年の登攀 第11回柴田練三郎賞決定発表
小説すばる 12 夢枕獏 黒塚(第15回)  
児童心理 12 鈴木光司 人生のすばらしさを語ろう スペシャル・トーク
出版ニュース 10下   ブックガイド キテレツ古本漂流記[評]
と、いった感じで図書館を廻ってかたっぱしから目次をチェックしてみました。まあ、こんなことでもしなければ一生気づかないよーな連載も多々あったな。ところで「財界」の書評欄では茶木則雄氏の肩書きが<ミステリー作家>となっていた。書評家・エッセイストだと思っていたらミステリーもお書きになるんですな。知らなかった。(って、本当はありがちな編集のミスなのか)
ちなみにデータ配列は多分著者の漢字コード順やと思います。


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『二重時間者』第一回 ボブ・ショウ作/四郷威智訳。と、白々しくはじめてみました。って、ネットでやってなんの意味があるんだっ。まあ、わかる人には馬鹿にされ、分らない人には無視されるだけなんですが、ついこーゆーことをしてしまう奴なんです。すいません。

 SFしているといろいろ「マ」が射すものだが、私はそいつがささったために「ストランド・マガジン」の合本をまとめて37巻分買うという愚行に走ってしまったのであった。その後も、事ある毎に、さされまくり、「コスモポリタン」「マクルーア」「ペル・メル」「ウィンザー」「アイドラー」「ピアソン」なんかを見かける度に注文し、それはもうイヤな目にあっている訳だ。
 ところで先日、水鏡子さんに「ストランド」買うような奴はシャーロッキアンじゃっ。などといわれてしまった。そ、そんなことはないっ、わしは単なる合本雑誌ヲタクなんじゃっ、ストランド買ったらシャーロッキアンになるんだったら大瀧啓裕先生はシャーロッキアンかよー(って、シャーロッキアンだったらゴメン)。
 とにかく、明治時代にも、いろいろヘンな翻訳小説がありまして、なんやろーっと思っていると、どうもリアルタイムで英米の雑誌から馬鹿な小説が訳されとるようなんですな。その辺を調べるため無謀にも、合本雑誌を買い始めてしまった訳である。
 本当は明治40年代あたりから大正10年あたりの物が必要なんだが、雑誌を「残す」ことは、どうも19世紀の文化であったようで、20世紀に入ると次第に雑誌は「読み棄て」られていく。つまり相対的に、古い方が多く残っていて安く手に入るという逆転現象がこの1900年前後の時期に関しては生じている。っーことで、手に入るのは本人の希望に反して、せいぜい明治30年代前半の雑誌なんだが、前述したとおり、どんどんいらんもんを買ってしまい、住環境が悪化する一方である。わはははは。英語もよくわからんので、単なるコレクターと化して、中身を見たりしないように心がけておるのだが(←なら、何故買うか)、折角なので、この場をお借りして、百年前の今月号を眺めていこうってのが、 18 のセクション。
 で、そんな後ろ向きなことではいけないっ。と現代に目を向けてですねえ、最近の雑誌におけるSF(および、その関連の原稿)を観測して行こうという19 のセクションも作ることにした。そいでもって「二重時間者」なのよね、一応。
 こちらのセクションの作成にあたっては、近所の小さい図書館を三つばかりハシゴしてメモをとるという方法によっているため、観測対象に偏りがあるというか、カバー率が低いので、数館の図書館をまわるとかして、文芸誌と出版社PR誌に関しては一渡りカバーしたいとは思っている。まあ、根性無しなのでどうなるかは未定。一年ちょっと待てば文芸系の雑誌の内容は『文芸年鑑』で大体のことは分るんだがねえ。こうした活動に関してはフォロワーが出てきて、とっとと私を駆逐して下さるとありがたいんだが、さて。
 採録基準に関しても、かなり文句が出ることであろう。それに関しては、ご意見を掲示板にでもお寄せ下さるようお願いする次第である。出来る範囲で対応したいと思う。ま、なっとらんと、立派なのを作る人が出て来るのがベストなんだけどね。



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1898年12月

マンシー・マガジン
20(3)
巻頭にはIN THE PUBLIC EYEというグラビア・ページがあります。大半はよくわからん人々の肖像写真。わかるのは、ヴァージニア大の図書館のために新たに作られた、ポオの胸像、ってのと、サミュエル・クレメンズ、エドモン・ロスタンぐらいですな。
 ベアトリクス・ホイト嬢って、ねーちゃんの肖像写真もあるが、こやつは女タイガー・ウッズ(とは書いていないが)らしく、アメリカ女ゴルフ・チャンピオンシップで勝ったんで載っているんだそうである。
 それに引き続いては、マックス・ペンバートンのThe Garden of Swordsの連載第何回かだかが載っている。あらすじが載っているので、それによると、フランス軍中尉エドモン・ルフォールとイギリスの貴族令嬢のベアトリクス・ハミルトンがストラスブルグで結婚して、新婚旅行にでかけるのだが、ドイツとの戦争がありそうだってんで、新郎の方は気もそぞろ、早くも新婚生活の危機が。って、勝手に話を作ってしまったかも。多分その結婚は実は養子縁組みで、男がエドモンド・ハミルトンになったりはしていないと思う。
 お次は「有名な和平条約」という、条約の写真図版を多数並べた記事。その後、セーレムのホーソン邸についての記事。
 で、ハガードの連載小説Swallowのこれまた連載第何回目かである。これはどうも南アフリカを舞台にした恋と冒険と復讐の物語と推測される。
 坊さんの記事があって、Florence Guertin TuttleってひとのCupid at Fortyって小説が載っている。なんかクリスマス・ストーリーみたいね。その後Storiettesってコーナーがあって、語感からするとショート・ショートかコントみたいなもんか。それから「風光明微なるキューバ」「我等がスペインとの戦争」(これは次号に続く)ジョージ・グレイ・バーナードという彫刻家の記事演劇評コーナー、最後が社主(だよな)フランク・A.マンシーの演説の再録、およびアメリカ大統領の「領土拡大の見通し」なる文章。

コスモポリタン
26(2)
巻頭記事は「肖像写真のアート」ってなところでしょうか。かっこつけたねーちゃんの写真が並びます。その後に「インド日食探検旅行」「ゲイシャ・ガールズ」などという記事が続く。後者はアリス・ニールセンたらゆー人が書いた日本のプリマドンナ、ゲイシャの紹介記事。なんか勘違いしているような気がしないでもないが、まあ好意的には書いているようだな。そして、グラント・アレンのA Woman's Handスティーブン・クレインのThe Woof of Thin Read Threadsコナン・ドイルの「シニョール・ランバートの引退」と小説が続き、「ナポレオン自伝」の連載、「イギリス王族の家庭生活」、「スペインへの危険な使命」これも連載、というか分載の後半か。筆者名は伏せてある。
 まあ、あと細かな記事がちょこちょこと。Henry Seton MerrimanのThe Muleって小説も載っとります。
 ドイルのは、埋もれた愚作を暴き出すというコンセプトの元、編纂された(←推測)本に入っているヤツですな。邦訳は中公から新書で三分冊で出ておりました。これは確か三冊目に入っていたように思う。読んでいるはずだが、ストーリーともどもよく覚えてない。

ストランド・マガジン
16(6)
 この号はコナン・ドイルの「炉辺物語」第七話「ブラジル猫」から始まっている。これは昔八冊あった頃の新潮文庫『ドイル傑作集V』に入っていて、三冊しか再版されなくなってからも、こいつの入っている巻は『III』と改められてずっと出ていたので、おなじみ…のはずだが、すっかり内容を忘れとるなあ。しかしなんで『ドイル傑作集』は三冊しか出ないようになったんですかねえ。まあ、海賊編は海賊を生物兵器で攻撃するという(←こうゆうふうに婉曲するとまるでSFですな)というヤバイねたがあるんでまずいことはまずいんだが)
 それから「アリス以前 ルイス・キャロルの少年時代」という記事があって、G.M.RobinsのSecond Classって小説、そいでもって「イラストレイテッド・インタヴューズ」第五十六回ジョン・フォスター・フレーザー氏の巻が載っている。どうも自転車世界一周した人らしい。来日もしたみたいね。座敷に自転車持ち込んで写真に写っとる。
 その後、W.W.ジェイコブスのThe Madness of Mr. Listerがあって、「塩の街」という記事。これはオーストリア−ハンガリー帝国のどこぞの岩塩鉱の跡につくった地下都市の紹介ですな。続いて有名人の肖像のコーナー。L.T.ミード、ウエルズ、W.W.ジェイコブズとなるほど俺も知ってる有名人の肖像(子供の頃から現在まで数点を掲載)じゃ。でも、最後にアームストロング卿ってのが載ってるが、こいつは知らんぞ。ほいでもって、V.L.ホワイトチャーチのAn Honourable Retreatってのが。お得意の鉄道物ですな。で、「カーメン・シルヴァの人形ショー」っー記事。グラント・アレンのMiss Cayley's Adventuresって連載小説。
 それに続いて「飛び込むエルク」って謎の記事が。なんか飛び込み台からエルクが川に飛び込んでる写真が載っているが、なんのタメ?どうも獰猛なエルクを従順にさせるためにイヂメているらしい。って、違ったらスマン。
 うーん、まだ終らん。E.W.ホーナングのThe Larrikin of Diamond Creek、ウォルター・ウッドのThe Looting the Convoy、ロバート・バーのThe Hour Glass、Anne E. HoldsworthのIn the Valley of Pity、 Neil Wynn WilliamsのOld Jopper's Vote、L.T.ミード&ロバート・ユースタスのWhere the Air Quivered、John C. WinderのThe Captive Prince。ふぅ。その間に手相の記事、グラント・アレンの昆虫観察な記事。おおっ、わしみたく百年前を回想している記事があるよ。

 この時期の合本は、あとペル・メル・マガジンとピアソンとマックルーアがあって、多分ハームスワースとウィンザーが日本にむかっているはず、ってつくづく、わし無茶してるね。まあ、素材が、それだけあるからということで、この連載を始めようと思った訳なのだが。ともかく今回は締切の都合もあって、ここまでじゃっ。
 なんにせよアメリカでは米西戦争の年だったんでしょうなあ、98年ってのは。
 ともかく、世紀末じゃ、といって盛り上がっている形跡はまったくなし。はたして99年はいかなる年となるんでしょう。(って、合本の続きを見りゃええがな)
 しかし、俺は毎月こんなもんを書くのか。ううむ。なかなか不毛度の高い連載になるなあ。ちょっとフォーマットを考えねば。
 いや、ほんと何も考えないで書き始めてるもんで。素材の珍奇さのみで、読めるもんが出来るかと思っていたら、全くダメでしたな。説明の必要なとこも全然説明しとらんし。まあ続くようだったら徐々に改善を心がけましょう。たははは。

(C)Copyright 1998 YOTSUZATO Taketomo. All rights reserved.



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