気分はリングサイド――わたしのプロレス観戦日記(1)

青井 美香


 プロレス観戦をするようになってから、かれこれ十年。気がつくと、すっぽりはまっている自分が怖かったりもするけど、きょうもきょうとて、会場に行ってしまうのは、なぜ? ま、どこまでいっても、ミーハーな見方でプロレスを観ているということには変わりないんですけど。
 というわけで、いきなり観戦日記のスタートです。
 ほんとは、プロレス団体の興亡史、各スター選手のプロフィールなんか書いてからはじめたほうがよいのでしょうが、そんな小難しいことはわたしの手には負えないので、パス。

10月4日(日)
 きょうは後楽園ホールで12時半からの試合。休日の昼間に出かけるというのは、じつはけっこう大変な我が家。たいがいの休日だとお昼近くまで惰眠をむさぼっている相方のせいです。しかし、ことプロレス観戦となると、俄然はりきる相方は、自分の起きる時間が遅いのを棚に上げ、うちを出る時間が遅れたとわたしを責める。そんなことで動じたりはしませんが。
 電車に乗って、神保町で降りて、水道橋まで歩くのがいつものルート。途中で、おにぎりとかお寿司(茶月というチェーン店がある)を調達し、いざ後楽園ビル。
 場外馬券売り場でたむろする人たち、ダフ屋のお兄さんたちをすり抜け、エレベーターで5階にGO!
 さて、これから観るのは、全日本プロレスの試合。わたしの場合、プロレス観戦のプロレスは全日本プロレスをさすことになってます。なぜかというと、ここ数年、ずっと一押しの(ということは、まだブレイクしてないってことだけど)の大森(隆男)くんの所属する団体だから。ま、大森くんがデビューするまえから全日本プロレスを観ていたんですが、そのころはそんなに選手に対する思い入れっていうのはありませんでした。それが、なんのきっかけで大森くんにコロんでしまったのか……たぶん、グリーンボーイのころのいさぎよいやられっぷりや、痛くてつらくて悔しくて泣きそうになってしまう表情を観ているうちに、ファンになってしまったというところかな。
 でも、口の悪い相方の友人Iさんに言わせると「大森って、いちばん女性ウケしそうなタイプだよなぁ」。つまり、けっこう、彼って美形なんですよね。目はぱっちりした二重瞼で、鼻筋がとおってて、口元が小さめ。そのうえ、身体もでかい。いちおう公称188センチ。まさに「マスクも、身体も、力もGOOD」という、レスラーとしては三拍子そろったタイプなのですが……いかんせん、センスが……あ、いや、わたしはいちおうファンだから、こんなことを書いてはいけない、と自主規制(^_^;)。
 と、そんなわけで大森くんのファンになってしまったわたしは、後楽園ホールや武道館のみならず、彼が保持していたアジア・タッグの選手権が開かれるたびに、地方まで遠征し、我が家の財政逼迫の原因を作っていたのですが、アジア・タッグもウルフ・スミス組にとられ(現在は、泉田・本田組が保持)、いまは無冠の彼。今年こそはブレイクだぁと、ずっとずっと思っているファンの気持ちも知ってか知らずか、評判の悪かった(わたしだけか)口髭もそって、今シリーズはなにか期するものがあるよう。
 ところで、わたしが後楽園ホールで座っているのは、リングから2列めのリングサイド。大枚はたいて、年間ボックス指定席を購入した甲斐があるというもの。この至近距離から、独身貴族のIさんが支給してくれる紙テープを投げるんですが、この距離でも失敗してしまうことも何度か。一番恥ずかしかったのは、大森くんの試合で、投げたら真上に上がって、自分の頭の上に落ちてきたこと。紙テープをそのとき投げたのは、わたし一人(しかも2列め)だったため、とにかく目立って目立って……後楽園ホールの失笑を買ってしまった思い出が……。それ以来、わたしはけっして一人きりでは紙テープを投げないことにしています。つまり、大森くんのコールのまえに、すばやく相方&隣の友人に頼んで、一緒になげてもらうのです。ああ、姑息な手段。でも、おかげで、後楽園での大森くんのコールのときは、たいてい紙テープが飛びます。ほっ。
 本日の大森くんの試合は6試合目。それまではごく気楽に5試合を観て、いよいよ大森くんの入場。きょうは川田とのコンビで、ジョニー・スミス/スタン・ハンセンと対します。
 いつものように黒いジャンパー(というのか、いつ見ても江戸火消しの半纏を連想させる代物。浅草あたりに売られている、外人向けの和風テイストで、わたしはあんまり好きじゃないけど、本人は気に入ってるらしい)を羽織って登場。川田はおニュー・デザインの自分のTシャツ。
 きのう、川崎でハンセンとシングル勝負して、ラリアットで真っ向やられた大森くんの雪辱なるか……などと自分で観戦テーマを決めながら、頭の大部分を占めているのは、きょうはテープ投げ、成功するかななんてことだったりします。で、テープですが、へろへろとあがったのち、なんとかリングの隅っこに着地してくれました。
 試合のほうですが、ハンセンはいつものハンセン、スミスは相変わらず職人芸、みょうに目立たなかった川田というところでしょうか。え、大森くんはどうしたって?もちろん、彼なりにがんばってました。最後は大森くんがスミスから3カウントとって勝利したのですから。
 ただ、彼、いまのままじゃいけないんですよねぇ。この10月で29になるし。なんといっても、下からどんどん生きのいい新人があがってくるし……。がんばってもらいたいよなぁと思いつつ、家路についたのでありました。
 あ、この日のセミは小川良成・三沢光晴対本田多聞・田上明。今シリーズから三沢とヘビー&ジュニア・タッグを組んでいる小川が、三沢の好アシストをうけて、見事、ヘビー級の田上を押え込み、スリーカウント。小川、すっごく嬉しそうでした。メインは、志賀賢太郎・秋山準・小橋健太対垣原賢人・高山善廣・オブライト。高山の小橋への疑惑の金的蹴りもあったけど、最後は小橋が決めて、おしまい。

10月13日(火)
 きょうの東スポに、11月1日のみちのくプロレスの幕張大会に、全日本プロレスからレスラーが参戦のニュース。なんと、そのなかの一員に大森くんも入っている!というわけで、明日さっそくチケットを買わねば。これで彼もブレイクしてくれるかしら。ちなみに大森くんは新崎人生(みちプロ所属だけど、今シリーズは全日本に参加)と組んで、現・アジアタッグ王者の泉田・本田組とあたります。ノンタイトルだけど、白熱した試合展開が予想(ほんとか)できそう。

10月14日(水)
 さっそく、渋谷・東急文化会館の1階のチケットぴあで、みちのくプロレスのチケットを購入。アリーナS席で、1枚1万円。いつものリングサイド2列めではないけど、前から8列めだから、そんなには遠くないはず。さすがに1万5千円のチケットは買えませんでした。


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