●ネタばれ注意 2
堂島大佐師弟の登場は、この本だけでなく、このシリーズ全体のコンテキストを、一気にマンガチックで薄っぺらいものにしてしまった。
いろんな学問体系のパラダイムそのものを、メイン・トリックのネタにしてきた力わざも、今回は、わりと小さなトリックで、そのぶんアクションが派手めになった感がある。下巻半分近くになるまで、話の輪郭が霧の中、それが呈示された仕掛けによって、辻褄があってくる。これまでの話にくらべて、安っぽいところはあるけれど、それが単発の事件であるなら、まあ、かまわない。
光の京極堂と闇の京極堂というのはねえ。
まだ出ぬ謎のお師匠、明石先生との関係も含めて、構想自体は以前から抱えていたようにも見えるのだけれど、なんかこれまでこのシリーズが漂わせていたふくよかな香りの大きな部分を吹き飛ばしてしまったような無念さがある。
可か不可か、一応の結論は次回作まで保留するとして、とりあえず今回の時点では、「なんでこんなことしたんだよう」というのが偽らざる感想である。