みだれめも 第259回

水鏡子


○近況(3月)

 パソコンのWEB機能が壊れる。修理に来てもらって、ついでにとんでもなくとろくなっていた予備のパソコンも直してもらう。〆て12万円。元のパソコンが6万円台で買った中古なので2台分にあたる。全体的にオーバーホールもしてもらったわけだし、まあデータを載せ直した新品を2台買ったと割り切って良しとしよう。

 書籍3冊長期保有5冊の優待に惹かれてスターツ出版の株を購入する。女性向けweb小説の出版社である。なんと届いた優待が選択式でなく出版社が選んだ恋愛小説3冊である。食指をそそられないジャンルであるので持っている本とダブらなかったのは幸か不幸か。毎年同じ本を送ってくることはないだろうからこの出版社の本を買わないことにしておけばまあ良しとできるか。

 ひさしぶりにバックナンバーを買い求めた雑誌『昭和39年の俺たち』が届いた。週刊誌風の安っぽい紙質の悪い造りの本で出版社在庫を置かないタイプのものではないか、数冊入手できれば御の字と思いながら注文したが、創刊号こそ品切れながら残り2号から22号まで揃って手に入った。こうなると創刊号も手に入れてコンプリートにしたくなるのはコレクターの業である。創刊号は2020年6月号。概ね隔月刊のペースで、より下種い内容と思しき雑誌『50代からの男のゴラク』の増刊号として刊行されている。そちらにまで手を伸ばす気はない。
 題名からも2009年に創刊されたレトロ雑誌『昭和40年男』の後追い企画であることを露骨に標榜しているが、あちらが『ブルータス』風紙面構成であるとしたら、オタク系『アサヒ芸能』『週刊大衆』というべき方向に差別化をしていっている。
 ちなみにこの種の雑誌は意外といくつもあるようで『昭和の謎99』『昭和の不思議101』などが書店の棚に並んでいたが、三面記事系の内容が主で、まあ100円なら古本屋で拾ってもいいかな。
 巻頭に毎回巻頭にヒーローものの特集が組まれていて、「ヒーロー最後の日」「ヒーローが敗れた日」「悪党の言い分」「悪の陰謀大百科」など斜に構えたテーマ設定を行う。基本は「ウルトラマン」「仮面ライダー」世代だが、こだわりのルーツ確認に宣弘社の初期作品など昭和30年代始めの少年作品に目を配っていくのが琴線に触れた。秀逸だったのは「令和の学園案内」で、過去のコミック、ドラマの舞台となった学園(名)を紹介する形で「青春とはなんだ」「若大将シリーズ」「中学生日記」などをとりあげる。若干(10年)の世代差を感じるのは、「必殺シリーズ」や「月影兵庫」にたびたび言及するわりには、「隠密剣士」を除くと「新諸国物語」を始めとした少年向け時代劇や、一世を風靡した「西部劇」「動物もの」の洋画ドラマ、「宇宙船シリカ」や「チロリン村」といった人形劇への言及がほとんどないところか。繰り返し同じ番組が取り上げられているところなどなんとなくDVDによる後追い視聴のように思える。
 誌面構成は当初からほぼ一貫しており、特撮とアイドルネタを中心に、裕次郎や勝新、宍戸錠などを紹介する「昭和スター極太伝」、女優の濡れ場シーンの供覧、プロレス、お笑い、玩具、ヤクザ・過激派事件などなどを、毎回ほぼ同じ順番の書き割りで半ば連載的に掲載し、統一感を醸していく。全部集めても、今なら定価で一万五千円足らずなので個人的にはお買い得。

 3月の購入数303冊。購入金額40,753円。クーポン使用2100円。
 web小説54冊。コミック28冊。だぶりエラーと買い直し26冊。新刊本は前述『昭和39年の俺たち』22冊、『りゅうおうのおしごと⑱』『TRPGプレイヤーが異世界で⑨下』『ここはすべての夜明けまえ』計24冊17,517円。
 今月は、比較的値の張るものを拾っている。
 DVD『TV西部劇のヒーローたち』2,940円は「ローンレンジャー」「幌馬車隊」など5つのTVドラマの抜粋集。『岩波書店 雑誌「文庫」復刻版』セット箱入り10巻本で2,000円。文遊社『鈴木いずみ1949ー1986』1,500円。『別冊新評 野坂昭如の世界』『骨飢身峠死人蔓』『死屍河原水子草』『かさぶた食いの思想』合わせて1,300円。
 で、残り15,000円で270冊買っている。
 先月触れた古本市場閉店の50円均一セールで34冊、30円セールで20冊。最終10円セールで75冊。普段は買わない文庫本時代小説、角川ホラー文庫中心に大量買いする。100円50円では買えなくても10円なら買える本というのがあるのだ。青山文平とか風野真知雄とかSFでない田中啓文とか。佐伯泰英は買わない。あれを買うと棚がふさがる。そういえばくびきが外れたように池田大作本があちらこちらのブックオフの220円棚をふさいでいる。事情はわからなくもないのだけれど邪魔なんだよね。
 株主優待本とか頂き本とか寄稿本とか0円の本が何冊かあるので、セールを除くと80冊しか買ってない。ブックオフの値上げのせいで本当に買う気が失せている。ちなみに高槻、関大前、吹田のブックオフは比較的品揃えがよく、文庫本110円のまま。長田、三宮、西宮、難波、心斎橋が220円に値上げしている。
 web系、ラノベ、コミック以外の主なところは、単行本で岡田貞三郎『大衆文学夜話』、高橋康也編『逸脱の系譜』、澤井繁男『魔術の復権』、蓮見重彦『齟齬の誘惑』、木村敏『自己あいだ時間』、C.℉.v.ヴァイッツゼガー『科学の射程』、菅野礼司他『科学と自然観』、岩波講座社会科学の方法『⑨歴史への問い歴史からの問い』、矢代梓『年表で読む二十世紀思想史』など。すべて300円以下である。

 最終更新まで読んだあらたなweb小説は10作ほど。書籍化の速度が上がったのか3日くらいでweb部分を読み切れてしまうものが増えた。

○ 雪車町地蔵『回復術士だと思っていたら、世界で最初の衛生兵でした! 勇者パーティーを追放されたヒーラーは、戦場の天使と讃えられました』(宝島社)

 内容紹介(「BOOK」データベースより)
 ヒーラーとして独自の治療を続けていた少女エイダは、勇者のパーティーで力を尽くすも、戦力外通告を受けて追放されてしまう。しかし、いかなる死地からも生還する彼らの躍進は、実はエイダの治療技術があってこそのもので…。彼らが落ちぶれていく一方で、追放されたエイダは誰かを助けたいという思いから従軍を決意し、地獄の最前線へと配属されることに。そこで彼女は、自分の独自の治療技術を施すことができれば、もっとたくさんの命が救えるのではないかと行動を始めてー。のちに“戦場の天使”と呼ばれる少女の奮闘劇、ここに開幕!第10回ネット小説大賞の金賞受賞作。

 物語は粗くご都合主義がひどいが、書きたいテーマが明瞭で熱意がある。メッセージ性が強いもののメッセージの道具立てとして物語が使われることなく、あくまで物語が主体性を保っている。ここ数年のネット小説大賞はこういうタイプの作品が評価されることが増えてきている気がして、サイト的には上位に推しているカクヨム系の受賞作品よりむしろ興味深くなっている。

◎ Roy『神達に拾われた男』(HJ NOVELS)

 内容紹介(「BOOK」データベースより)
 日本の中年サラリーマン・竹林竜馬の生涯は、病死という形であっけなく幕を閉じた。決して恵まれた人生ではなかった竜馬だが、死後、三柱の神に協力を求められ、剣と魔法の異世界へと子どもの姿で転生することに!神々から手厚い加護を貰い受け、ひとまずは森で一人、のんびりと暮らし始める竜馬。魔法に狩りにと精を出す中、竜馬が最も熱心に取り組んだのは、使役したスライムたちの研究で!?多種多様なスライムたち(新種含む)を従えて、優しい人々と触れ合いながら第二の人生を謳歌する異世界スローライフファンタジー、開幕!

 しばらくぶりでたまっていたweb版を読みに行ったら、全く話に記憶がない。1、2冊読んで中身がまるで思い出せずに、初巻から読み返すのはままあるのだが、書籍版を10冊読んで、その数倍量の続きをwebで読んだはずなのに、書籍版を含めて話の内容が思い出せないというのはこれはどうなのか。記録している個人的評価点ではC(並の上)をつけてるにもかかわらず。なんか釈然としないので、最初から読み返したら初心者テイマーしか扱わないスライムを育て進化させ、比類ない能力を生み出していくチート系スローライフなのだが、そこに前世の鬱々とした重い想いが述懐されて読み応えがある。評価は高いが、お勧め作品に選ぶには少しだけ物足りない。

 それにしても、なんかほんとにきれいに忘れていてほとんど初読に近い感触。 
 最初はこれも老化の進行かと嘆いていたりしたのだが、それも少しあるにしても、大本は違うところにあるのでないかと気がついた。
 つまり書庫を作って、整理して、いつでも気軽に取り出して読み返せることができることに安心して、記憶に刻む努力を怠っているのではないか。Web版を合わせると書籍換算2,000冊レベルを毎年読んでる日常での自己防衛機能という側面もありそうだ。年に100冊前後しか読めなかったそれゆえにSFに限定せざるを得なかった学生時代の読んだ本の心に刻み込まれ方とはどうしても異なるものになっているのではないか。読み方としては、あれもしあわせ、これもしあわせかもしれない。

★ Roy『TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す 9 上下』(オーバーラップ文庫)

内容紹介(「BOOK」データベースより)
 馴染のマルギットと共に辺境の地マルスハイムで冒険者となったデータマンチ転生者エーリヒ。彼らは同じく駆け出し冒険者であるジークフリートとカーヤの二人組と共に“忌み杉の魔宮”に挑み、二カ月にも及ぶ冒険の果てに帰還した。しかし疲れ果てた彼らをマルスハイムで待っていたのは、厄介ごとの匂いがぷんぷんする組合からの呼び出しだった。元雇用主に相談することで難を逃れるエーリヒだったが、この先も自らが望む冒険者であるために厄介ごとを振り払えるだけの力を付けようと決意し…!?ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、第9幕スタート!
 幼馴染のマルギットと共に辺境の地マルスハイムで冒険者となり、盟友のジークフリートらと共に氏族“剣友会”を立ち上げたデータマンチ転生者エーリヒ。彼らはマルスハイムに蔓延しつつある麻薬“魔女の愛撫”の出所を追う中、刺客に襲われる情報屋のシュネーを救出する。彼女から得た情報を元に調査を進める中、エーリヒ達は麻薬組織の親玉に辿り着くため一計を案じ…?一方、シュネーを取り逃した刺客の一党は、計画の妨げとなる存在としてエーリヒ達を標的に定めて動き出すのだった。ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、第9幕フィナーレ!

 web版の少年期から青年期への移行に際して書き急いで(?)飛ばした部分を埋めるための書下ろしオリジナル。少し前にも似たようなことを言っていた巻があり、web版からの書き足し部分は2000頁以上あるのではないか。物語の展開からあり得たかもしれないもう一つの異なるエピソードを毎巻掲載していく心憎い仕掛けもあり、web版を最終更新まで読み継ぎ、なおかつ書籍版を書店で定価で買っている唯一の作品である。
 作品の完成度は高く、文章力、世界構築、キャラ設定や絡ませ具合、圧倒的に強力な敵を配して毎巻死地に赴く激闘シーンと、Amazonのレヴューや読書メーターの評価は激賞だらけであるのだが、『このライトノベルがすごい』ではほとんど無視に近い扱いである。ランキング上位陣より小説の格は一段上だと思うのだが。


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