みだれめも・出納記録

21年1月・初春

水鏡子


 あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。
 コロナ禍の一年は、一日椅子に座って株とコロナ情報となろう読みしかしなかったせいか、1年の経過がいつもより早かったような気がします。みだれめもの執筆も、後半さぼってしまったし。
 とりあえず、3か月分の近況と、恒例になった20年の総括、21年の目標を。

○10月の近況

 関西の代表的な古本市が1年ぶりくらいでやっと復活した。
 10月3日4日と、株主優待券でホテルに泊まって四天王寺の古本市とその界隈のブックオフ、古本市場を回る。最近は託送便で買った本を送ることが常態となって、段ボールひと箱20㎏の上限いっぱいまで埋まるように200円100円の単行本を買って詰めるのが当たり前になっている。上巻だけとか下巻だけとか半端なものもそれなりにあるが、内容が立派なうえにブックオフの単行本210円よりも安いのだ。どっちみち読まないわけだし(たぶん)。
 面白いといっていいのかどうか。前回ちょっと開高健に触れた後、200円の棚で見つけた開高健の単行本を拾ってしまう。『新潮日本の文学・開高健』は月報を小松左京が書いているため(『読む楽しみ語る楽しみ』(集英社文庫)所収済)。『最後の晩餐』は文庫版しかもってないため。全集に収録されなかった『渚から来るもの』は美本だったのでつい2冊目を。『日本三文オペラ』もあったが、これは保存状態がわるかったので、パスした。
 次の週は京都の2か所で同時開催の古本市が開かれたが、こちらについては過去の経験だと、安いものでも300円くらいの値付けであり、210円縛りの方針には敷居が高く断念する
 その次の週は天満宮の古本市。ここの100円コーナーは四天王寺より充実しており、加えて歩いてすぐのところに天牛書店がある。ここの100円コーナーも充実している。
 「本の雑誌」が数百冊並んでいた。うちには100冊程度あるけれど、何を持っているかわからない。とりあえず二桁の若いナンバーを30冊ほど買い込んで、あとは家にあるバックナンバーをリストアップ。再度最終日に行くことにする。
 最低でも百冊、1万円分買おうと思っていたら、なんと、100円コーナー小さい段ボールひと箱詰め放題送料込み1800円という最終日バーゲンをやっていた。ひと箱50冊入ったので、とりあえずバックナンバーとのダブりを無視して200冊買い込む。実際家に帰って並べてみると、元々持っていた号は保存状態が悪いものが多く、買い替えと考えればいい。60冊のダブりが生じたけれど、それを除いて約300冊。これで本の雑誌もコンプリート案件に昇格した。
 SFのペーパーバックが大量に、たぶん300冊くらい並べられていて、一律500円の値付けであるので、買うのは論外だったけど、そのほとんどがぼくが集めた時期と重なる。放出者がぼくと知り合いの可能性があるかなあと思う。ここのコーナーにはきれいな状態の早川SFシリーズも50冊ほど並んでいて、300円もしたけれど、とりあえず『宇宙戦争』『月と太陽の滑稽譚』などの未所有のものを4冊買う。これで未所有本は『最初のレンズマン』とか『観察者の鏡』とか30冊を割り込んだ。他にも100円コーナーで保存状態の悪い『夏への扉』(講談社SFシリーズ)、『石の血脈』『進化した猿たち』『新・進化した猿たち』の初版本、元々社、創元推理文庫の買い直しなどSF関係を合わせて17冊拾う。
 10月の購入冊数は、488冊。2019年10月の573冊には及ばないが2020年の最高冊数になる。ただしそのうち235冊は本の雑誌なので、それを外すと例月よりもむしろ少な目。なろう本も50冊程度に留まっている。購入金額は45,000円余り、クーポン使用は8,000円ほどである。
 本の雑誌も含めると、ダブり本に買い直し、さらには持っている文庫本の単行本版合わせて、重複本は100冊の大台に乗った。こんな買い方ができるのも巨大書庫様様である。
 雑本系も収穫の山。ほとんど100円、いくつか3冊500円が混じる。皮肉なことに、ブックオフで買うなろう系の210円本が一番高額だったりする。
 ラルース『社会学事典』、マックス・ウェーバー『儒教と道教』『青年時代の手紙 下』、講座記号論『記号としての芸術』、富田仁『フランス小説移入考』、服部幸雄『変化論 歌舞伎の精神史』、渡辺豊和『天井桟敷から江戸を観る』、フランシス・ヒッチング『キリンの首』、アンリ・ミショー『精神の大試練』、平野威馬男『伝円了』、太陽コレクション『地図 江戸東海道』、岩波講座現代中国『文学芸術の新潮流』、J・ホスパーズ『分析哲学入門③ 科学哲学』など。

○11月の近況

 11月は2日から4日まで二泊三日の京都旅行。知恩寺の古本市をメインにしたブックオフ回りで、今年唯一の京都での古本行脚。後藤象二郎寓居跡であるというホテルで泊まって、Gotoトラベルを利用する。株主優待券を使うと、1万2千円で泊まれたうえに3千円の地域共通クーポンがもらえた。古本市では使えなかったが、ブックオフで使えた。優待券が8千円分残ったので、11月22日の例会に合わせて大阪でも一泊する。こちらも地域共通クーポン1,000円。合わせて4,000円分只買いできた。
 購入冊数は331冊。前月より150冊減っているが、総額59,000円は前月より一万五千円増えてこの年の最高支出額。9月10月11月はSFベスト投票のため新刊購入費用がそれなりに上乗せされている。クーポン使用は4,000円。なろう本は91冊である。
 西村寿行の単行本が100円コーナーに大量に並んでいたので家の棚の記憶を辿りながら帯付きの35冊を購入。さすがに3冊ダブったが、単行本版しか出ていない自薦ベスト集成『残像』『執鬼』を入手できたのはうれしい。数えてみると88冊。文庫版で読み集めていたが、単行本もついに折り返し点を通過した。
 全集本の100円200円への値崩れは古本市の大きな魅力であるけれど、じつは不思議と時期により同じものが複数の会場でみつかるようになる。業者間で価格の格下げが共有されるためだろうか。
 数年前は『大航海時代叢書』(岩波)が200円で目に付いたのだが、今年よく見かけたところでは『日本近代文学大系』(角川)、『明治文学全集』(筑摩)、『日本思想体系』(岩波)、『日本近代思想体系』(岩波)、『総合講座日本の社会文化史』(講談社)などがあちらこちらで100円で並んでいた。最後のものは全7巻をすべて買った。つまみ食い的にいくつか拾ったものとして『明治開化期文學集』『明治政治小説集』『明治児童文学集』などがある。別に明治物に興味があったわけでなく、たまたま拾った面白そうなものに明治物が集中しただけである。『経国美談』とか『安愚楽鍋』など複数種揃った。
 原本の挿絵の入った文学全集系は技術的に印刷の汚れが目に付く。昔は載っているだけでわくわくしたのに贅沢になった。
 悲しいところでは、新刊で揃えた『金子光晴全集』が1冊100円で並んでいたこと、2000円ちょいで買い集めた『少年小説体系』33冊がセット3万円でみつかったこと。
 主な収穫としては『アラビアンナイト20冊中8冊』『ナスレッディン・ホジャ物語』『薔薇園』『鸚鵡七十話』など東洋文庫14冊、今村仁司『暴力のオントロギー』、紀田順一郎『出口なき迷宮』、グスタフ・ルネ・ホッケ『迷宮としての世界』、村瀬学『なぜ丘をうたう歌謡曲がたくさんつくられてきたのか』、アンドリュー・ブラウン『ダーウィン・ウォーズ』、松田修『日本逃亡幻譚』、宗教社会学研究会編『宗教の意味世界』、H・シェーラー『ガジュ・ダヤク族の神概念』、藤井康王『東西チャンバラ盛衰記』など。

○12月の近況

 忘年会や新年会がほとんど消えて、生活はますますシンプルになる。毎日曜日の梅田例会という青木社長と二人だけの株談義が唯一のアクセントで、古本屋と食品スーパー半額セール、優待券を活用した持ち帰り商品の購入をする以外、ひたすらなろう本を読んでいる。
 この数か月濃厚接触者は青木社長だけなので、コロナに感染したら感染元は青木社長だけである。
さすがに購入冊数も207冊と前月から大幅減。購入費用に至っては2万4千円と前月の半分以下である。クーポン使用が9,000円。なろうは77冊。
 いや数年前まではこれくらいが平均月別購入費用だったはずなのだが。だいたい年額30万円見当。
 別冊スクリーンというポルノ映画専用誌があったんですね。特集・SF映画、吸血鬼というのが気になって、77年6月号と7月号を300円で買う。ビニール封がしてあって中身が見られなかった。どちらもこんなものかというレベルだが、それよりつらかったのが写真印刷の粗さ。70年代はまだこういうレベルだったんだなあ。同じような時代の本である『日本映画戦後黄金時代』(全30巻)はそこまでひどくはないので、たぶん紙質次第ということかもしれない。
 その他の収穫は、当然ながらあまりない。
 宮部みゆき『ブレイブストーリー愛蔵版』、『THE FANTASUTIC WORLD OF GERVASIO GALLARDO』、ロバート・ヒューズ『西欧絵画に見る天国と地獄』、ノーマンド・バーリン『悲劇、その謎』、ラモン・ビラロ『侍とキリスト』、ドゥールズ『意味の論理学 上下』といったところか。
 なろうについては、これまで定番作品をweb最終更新まで追跡するという読み方だったのが、一歩進んで、1冊もしくは2冊程度の書籍を読んで続きを読みたくなったものを最終更新まで読み切ることが増えた。閲覧履歴の掲載限界が30篇ということで、パソコン2台で60篇まで登録している。完結したもの読み切ったものをどんどん削って入れ替えて、あとカクヨムとかにも行っているので前年からの継続分を含めてたぶん100篇以上に目を通した。
 お勧めの主なところはひるのあかり『異世界英雄譚』(完結)、家具付『追放された勇者の盾は、隠者の犬になりました。』(完結)、川崎AG『猫だってアイテムを収集すれば最強になれます!』、ショーン田中『願わくばこの手に幸福を』、じゃがバター『転移したら山の中だった。』、Allen『Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~』、百黒『エステルドバロニア』、玉兎『反逆のソウルイーター ~弱者は不要といわれて剣聖(父)に追放されました~』といったところか。
 あと書籍化されていない作品で、『ラピスの心臓』と並んで年に数回ペースでしか更新されない六羽海千悠『灰色の勇者は人外道を歩み続ける』、『無双系女騎士、なのでくっころは無い』(完結)を読み終えた赤木一広『誰だ、こいつら喚んだ馬鹿は』、以前に紹介したことのある『スキル『市場』で異世界から繋がったのは地球のブラックマーケットでした』(完結)の続編となる石和¥『マグナム・ブラッドバス ―― Girls & Revolvers ――』は、こまめに更新を待ち構えて読み続けている。

○2020年総括

年初の目標:

 ① 生活費270万(年金等220万、生計費50万)
 家屋設備費80万 計350万円
 ◎
 ② 2,400冊購入  △
 ③ 書庫 建設資金回収計画  △
 ④ 健康管理計画  △
 ⑤ 一か月食費現金1000円内  ◎

① 生活費270万(年金等220万、生計費50万) 家屋設備費80万 計350 万円 …  ◎
 コロナ禍での遠方でのイベント中止、テイクアウト中心による株主優待券1 食あたりのコストの低減などもあり、1,955,408円と数十年ぶりの支出総額200万円割れを達成した。18年2,835,392円→19年2,352,617円→20年1,955,408円と清貧生活に磨きがかかり、ついには年金その他の収入金額を下回った。100歳時点での資産蕩尽計画に黄色信号。風呂の改装計画も20年度も見送ったので家屋設備費は21年度には繰越額も含めて240万円まで詰みあがっている。
 内訳は概算で、税・保険料45万、食費・生活雑貨25万、通信・光熱水費40万、医療費9万、交通費18万、本代42万といったところ。これに中古パソコン2台、プリンター、布団乾燥機などの生活備品が加わる。

② 2,400冊購入 … △
 前年の購入冊数3,850冊に、これはさすがにいかんだろう、と定めた購入目標なので、目標1,000冊オーバー3,499冊というのはやっぱり△とすべきだろう。ただ、古書価220円縛りについては概ね順守できたので、購入総額は前年の52万から42万と大幅減。100円だったブックオフの単行本が10年くらい前から210円になっており、そんな200円本を1,000冊以上買っていることを考えると、昔の値段設定でいえば30万程度の支出ともいえる。株主優待や店ごとのクーポン券を合わせると8万円くらいになるのだが、これらは支出の対象には含めていない。
 なろう本は1,121冊。間違って買ったもの、買い直したもの、これに文庫本の単行本版などを含めたダブり本が今年はたぶん400冊を越えている。百円コーナーで見つけたハヤカワSFシリーズはよほど傷みが激しくない限りつい買ってしまうし。不思議なことにはるかに定価の高い新ハヤカワSFシリーズは、たとえ100円に落ちてもダブって買うことはない。思い入れというのはそういうものだ。
 書庫の一段揃えはかろうじて維持できているが、毎年単行本サイズで1,000冊増えるなろう系は年に3回くらい棚の組み換えをした。たぶん今年の夏ごろには二段揃えを含めた大規模改造を行うことになりそうだ。

③ 書庫 建設資金回収計画 … △
 外食とホテルの株主優待主体の株主なので、コロナの影響はモロに出ている。含み損は3割増え、解消までの道のりは遠ざかった。実は売買益がそこそこあるので、収支はややマイナスといったところで収まっているのだが、回収計画の目標はあくまで含み益二千万円である。
 80歳までに到達できれば資産蕩尽計画の一環としての母屋のリフォームを検討している。寿命100歳の前提でのリフォームの限界は80歳と考えている。90歳になってから残り10年のために家を住み良くするのではあまり意味がないわけで。

④ 健康管理計画 … △
 前年に比べて、コロナ禍で家を出ることが減った。テイクアウトで大盛無料サービスとかあると必ず選択したりすることもあって、体重が増加傾向にある。血糖値は服用量を増やして一応の横ばい。
 人間ドックについては、コロナ禍の状況を鑑み、パス。

⑤ 一か月食費現金1000円内 … ◎
 4月ひと月2,151円。一回だけスーパーの7割5分引きに負けて1,351円使ってしまった。株主優待券の消費の仕方が尋常でなく、これはやっぱりある意味逆に乱費に近いかなと。まあ、可能性は見えたということで、再度の挑戦はしないことにする。

○2021年の目標

 ① 生活費270万(年金等220万、生計費50万)
 ② 書籍購入額 40万円以内
 ③ WEB小説不完全リストの完成
 ④ 書庫 建設資金回収計画
 ⑤ 健康管理計画

① は昨年通り。なお別枠の家屋設備費が繰越を含め320万ほど確保できている。、空焚きによって追い焚きができなくなっている風呂の新調に十分なのだが80歳リフォームでの取り壊しを考えると少しづつもったいなさが生じてきている。

② については、冊数ではなく購入金額での上限制限に切り替える。古書の購入価格は、SFや風太郎関連を除いて220円を上限とした昨年の縛りについては古本市の状況に基づき300円まで拡大する。むろんクーポン使用分は購入金額には含めない。

③ は今年の最優先目標。

④ 書庫 建設資金回収計画は、株の含み損を今年中にゼロにする。たぶん難しいと思う。

⑤ 健康管理
 コロナ禍で、家にこもっていたせいもあり、体調は年齢もあり微妙に劣化しているはず。ただ検査数値はそれほど大きな低下はみうけられない。
 ワクチン接種の後、脳ドックを含む人間ドックの受診を検討する。

 そんなところで今年もよろしくお願いします。

○1月の近況

 緊急事態宣言再発令に伴い、1月10日(日)を最後に例会を再び休止。
 ただ1月4日までのブックオフ・ウルトラセールで受け取った10%引きクーポンの使用のため、たびたび来阪する。また株主優待のホテル無料券を使い切るため、1月16、17日、さんちか古本市(神戸)、ツイン21古本市(大阪)を目的に大阪で一泊する。
 岡本俊弥『千の夢』の解説を書く。眉村卓「インサイダーSF文学」の向こうを張った「リタイア―SF文学」である、というフレーズを今になって思いついた。
 ツイン21古本市がかなりの収穫。
 300円と高額だったが「まんだらけ」「まんだらけZENBU」はあったので、25冊総ざらいにする。同じく300円で「岩波講座・現代思想」全16巻中8巻、金子隆一『新世紀未来科学』、ジョン・バクスター『ウッディ・アレン』、カルヴィン・C・クロースン『数学の謎』、ショタ・ルスタヴェリ『虎皮の騎士』などを買う。
 1月の購入冊数308冊。購入金額41,013円。クーポン使用3,500円。なろう系121冊。
 文学及び雑学系の主なところ。
 ラッセル・ホーバン『エミットとかあさんの歌』、田島隆雄『WEB小説ヒットの方程式』、ボルヘス&カサーレス『ドン・イシドロ・パロディ六つの難事件』、ポール・ポースト『戦争の経済学』、『亀井俊介と読む古典アメリカ小説』、尾崎義 他『スウェーデン語辞典』、松田穣編『比較文学辞典』、ユートピア叢書『⑬バジリアッドまたは浮島の難破』、『広告批評2008年度』5冊など。
 その他、津守時生『三千世界の鴉を殺し』をまとめて18冊とか、椎名ほわほわ『とあるおっさんのVRMMO⑪~⑮』を、未購入本リストの字が汚くて、⑯~を⑩~と読み間違えて、まるまるダブり買いしたりした。


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