みだれめも・出納記録

16年初春

水鏡子


 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

 昨年は株で大変なことになって、超巨大な含み損を抱えてしまいました。こだわっていた株が下げ基調になり、下げるたびにナンピンするとさらに下げて傷口を膨らませることを繰り返しました。最初の買値1400円だったものが最終的に300円まで下げています。他にも3300円で買ったものが一時期2000円を割り込んだりもしています。落ちるナイフをつかむバカという格言を地でいっています。
 その割にへらへらしていられるのは、売ったわけではない含み損なので、マイナスとして確定したわけではないこと、過去3年間の貯えプラスをすべて吐き出したわけだけど、株歴の通算トータルとしてはまだマイナスではないため。ただ、書庫増築資金計画は一からやりなおしであります。
 本は書架からあふれ出している。一刻の猶予もならない状態なのですが。

○2015年総括

年初の目標:
@  総支出300万円(定常費250万円、臨時経費50万円)以内  ○
A  難しめの本30冊読破  ×
B  執筆200枚  ×
C  書庫建設資金積立計画  ×

@ 総支出額は2,838,015円 ○
 一応年間支出額は枠内に収まっているが、昨年より40万円以上増加している。定常費としては予算額をオーバー。税保険料等、昨年同様給与天引分があるのでそれを考慮に入れれば実質300万円を突破している。いろいろ理由はあるにしても、給与収入が発生したことが大きいのだろう。30年(+余力10年)で年金給付を勘案しながら動産資産を定額で消費し尽くす予定なのが、これだけ使っても資産は前年よりもわずかばかり増えている。どうせ生きてるうちに使い切るのだからと、金が入ったぶん贅沢になったということである。ギャラクシー誌100冊10万円などというのも、一昨年ならたぶん手出しをしていなかった。贅沢を端的に表しているのが食糧費の伸び。12年からの推移をみると、21万→18万→26万→32万と激増している。給与が一昨年4月からだから、関連性は明らかである。ちなみにこの費用には、仲間との喫茶・会食費は入っていない。たとえば、地元の喫茶店で2時間弱居座ってラノベ1冊片付けるといった習慣が定着したのも昨年に入ってからのことである。そのせいでパチに行かなくなったのだから、良い習慣と言えなくもない。贅沢と呼ぶにはせせこましい気もするけれど。
 まあ、株の含み損を加えれば大幅資産減なのだが、あくまで収支は売買損益ということで、過去の含み益の時も計算に含めていなかったので、今回もそこからは眼をそらしている。

 本代が468,600円と過去最高の高額出費。前年の286,758円から20万円近い増加である。
 その前2年間は40万平均だったことだし、洋雑誌に12万円使っていることからすれば、一応許容の範囲内。なろう系の制圧に燃えた一面があった一方、収納スペースの消滅に動きが鈍ったところもある。コミックなど100冊切っているのではないか。
 それなりにバラエティに富んだ1年だった気もするので月別にトピックなどを再度記入してみた。

1月  39,192円  392冊  平均 100円 ※地元ブックオフ閉店セール、グインサーガ80冊など
2月 8,529円 74冊 116円  
3月 14,717円 89冊 166円  
4月 47,836円 196冊 244円 ※パルプ・マガジン6冊購入 SFシリーズが100円であったので6冊全て購入。全部持ってる本だとわかっていたが。
5月  132,755円 270冊 492円 ※洋雑誌130冊購入 SFセミナーの東京ではファンジンをいくつか。古書店回りでは収穫なし。
6月 16,665円 93冊 180円  
7月  16,708円 107冊 157円  
8月 32,072円 176冊 183円  
9月 44,880円 173冊 260円  
10月 44,127円 179冊 247円  
11月 36,274円 235冊 155円  
12月 34,845円 184冊 190円  
 468,600円  2,168冊 平均取得単価 217円  

 1月の閉店セールの100円平均での400冊購入からすると、意外と例年並みの冊数に留まった。洋雑誌130冊の特別出費もあるわけで。平均単価の上昇も、これに起因するところが大きいが、あと2つ理由がある。ひとつは、「なろう系」の制覇に本腰をいれたこと。「みだれめも」である程度まとまった発言をしたり『SFが読みたい!』の年間ベストに「なろう系」を入れるには、100円本ではこなしきれず、やむなく半額本、新刊本の購入を余儀なくされた。9月10月の平均単価の跳ね上がりは追い込みに向けた出費である。
 もうひとつの事情は、ブックオフや古本市場の安売りセールの自粛である。これまでセールは店ごとにやっていて、しょっちゅう値札の半額にするところがいくつもあったのに、昨年あたりからセールは全国一律で、それも20%引きくらいしかやらなくなった。そのくせウルトラセールなどと謳っている。さらに本の値付けも強気に転じてきている。単行本の最低価格を108円ではなく200円にした店が増えているのはここ数年の傾向で、1,000円出しても5冊しか買えない。積み上げたら半分の高さにしかならない。あたりまえか。そのうえ「なろう系」は安っぽい造本でありながら、他の小説本より値付けが高く定価の8割の本がごろごろしている。1,200円の本が960円である。
 前回150冊くらい読んだところで一応の総括をしたわけで、その後もかなり読んでいるけど、総括した意見に付け加えるところはほとんどない。異様に安定したレベルのB級小説の宝庫というのは前に書いた通りだが、さすがに数をこなすとC級D級もちらほら混じる。こんなものを本にするなよとときおりぼやきながら1日1冊強のペースで読み続けている。
 読んでて居住まいを正したA級評価は現在のところ1名だけいる。
 『ログ・ホライズン』橙乃ままれ。現在10巻目まで出ている。次の「みだれめも」はこの人を中心に、再度「なろう系」の追加読書報告をするつもりだが、まだこの人のもう一つの代表作『まおゆう』を1冊目100頁くらいで中座していて、書くのはもうしばらく先になりそう。全5巻+αが2段組みで全篇会話だけという趣向が、面白くないわけではないが読むのに疲れる。

A 難しめの本30冊読破 ×
 年の始めには、家にある三木清か中村雄二郎の全集を皮切りに鎮座している哲学系に向かう予定で、実際鞄に入れて持ち歩いていたのだが、「なろう系」に走ってあえなく挫折。今年は「なろう系」と比較するとか口実をつけて、年前半はその他のライトノベルも相当数読んだ。『カンピオーネ』とか『星刻の竜騎士』とか。十文字青や鎌池和馬とか。100冊は越えたと思う。後半はそれすらやめてひたすら「なろう系」潰しに邁進した。コミックはほぼ中座。『アオイホノオ』『銀の匙』『マギ』あたりをまとめ買いまとめ読みした程度。新刊で買ったのは、『甘い関係』『乙嫁語り』『大奥』『とめはね』くらい。

B 執筆200枚 ×
 予定では、「出納記録」を3か月ごと。そのあいまに「みだれめも」を毎月載せて、1回15枚くらいでクリヤーする心積もりでいましたが、やっぱり書けない。さぼりまくって五、六十枚程度でしょうか。それくらいなにもしなかった年なのに、協力本が3冊も出た。一つはSFマガジンの特集が、あっという間に本になった『ハヤカワ文庫SF総解説2000』。『デューン』と『故郷から10000光年』『砂の中の扉』をやっています。ひとつは「本の雑誌のリレー連載をまとめた『この作家この10冊』西村寿行をやりました。最後が『海外SFハンドブック』。大きくコンセプトが変わった中で、最初の『SFハンドブック』に書いた「年代別SF史」が生き残りました。それにしても25年も経って『SF雑誌の歴史A』を読んだ後でも、ほぼ改訂なしでいけたのは福島正実伊藤典夫浅倉久志といった先達の引いた図面がいかにきちんとしていたかの証左であるのだと思う。
 年末に『デューン』の解説をやりました。12年ぶりの刊行ということで、つまりは『デューンへの道』の時に重版されて以来ということで、そのときも、『砂の惑星』しか重版されなかったはずである。たぶんシリーズすべて目にすることができたのは『砂丘の大聖堂』の出版時点が最後だったと思えわれる。第2部『砂漠の救世主』を古本屋以外でみかけることができたのは30代以上の人間だけだというのはこれはある意味驚くべき話である。
 読んだことのある人も是非手に取ってみてほしい。デヴィッド・リンチの映画デザインやイスラム知識が否応なく身についてしまった今から見ると、過去に比べて思い切りわかりやすさが増している。

C 書庫建設資金積立計画は×
 冒頭に書いたようにふりだしに戻った。というか今年に入ると、中国のサーキットブレイカーのせいでさらに悲惨なことになってきて、ふりだしどころかマイナスに転じかねない事態である。苦笑がひきつりかけている。

○今年の目標
 昨年の年初の目標のうち、@総支出300万円(定常費250万円、臨時経費50万円)以内、C書庫建設資金積立計画を踏襲。Bの執筆は削除。
 Aの読破は昨年と合わせて「なろう系」の500冊読破を目標とする。たぶん今の勢いなららくらく達成できそうである。問題は買い集めた本の置き場所である。


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