SFを少し離れて

第1回

菊池誠


 SFをあんまり読まなくなった。まあ、もともと読書量は減っていたのだけど、東日本大震災が起きて、ちょっと「SFの想像力」を信じられなくなったのがいちばんの原因かなと思う。震災以降、早川のアンケートにも答えてない。あれ、震災の前からだったかな。そうはいいつつ、「パシフィックリム」も見たし、先日は久しぶりに「ブレードランナー」を見て、やっぱりすばらしいやと思ったりしたんだけどね。

 国際SFシンポジウムというのを行きがかり上、手伝って、うーん、たぶんイベントとしてはそこそこ面白かったとは思うものの、SFの閉塞感みたいなものもまた感じてしまって複雑な気分。成功したイベントだとは思うんだ。でも、ちょっと距離は感じる。何かを言ったことにはなっていないと思う。「小松左京から復興を考える」みたいな話も、ちょっと乗りようがない気がする。そういう一歩引いたメタな視点を持てなくなっている。実は、震災後にSFと想像力と震災をテーマにした論集に寄稿を求められたのだけど、結局、何も書けなかった。そういうことを大上段に言えるって、みんな身に詰まされてないんじゃないかという気がする。アートに何ができるかとか、SFに何ができるかとか、愚問だとは思うんだよね。災害に向き合い過ぎるのも向き合わな過ぎるのも違うかなという気がする。

 もちろん、みんなわかってると思うけど、震災被害のほとんどは津波によるものだ。宮城と岩手は特にひどかった。先日、仙台の閖上にいったとき、住宅がすべて流されて、瓦礫も片付けられて、そこにはただただ広い更地が広がっているのを見て、本当に呆然とした。天気よかった。いっぽう、震災から二年以上過ぎて福島の富岡町(ここは区域再編で避難指示解除準備区域になった)を訪ねたときには、津波被害がまったく手つかずなことに驚いた。放射性物質汚染がなければ、ここもとっくに更地になって、復興の準備がはじまっていたはずだ。

 今、友人と放射線の本を書いてる。放射線の話にもまだ需要はあるのだと思う。教科書的でもなく、ただの解説書的でもなく、ちょっと変わった本になる予定(易しく書いてあるけど、でも、異常に詳しい)なので、首尾よく出たら、手に取ってみてください。すごくパーソナルな書き方の本。僕のというよりは共著者のパーソナルな部分を強調したというべきかな。客観的な話を敢えて個人に引きつけて書いている(編集者はそこを薄めようとしたがっているのだけど、がんばる)。これが「SFの想像力と災害」に対する僕からの答のひとつになるかなと思う。SFはひとつも出てこないけどね。たぶん、メタではなくて個人的な視点で語ることが必要なんじゃないかな。これが出たら、またSFが読めるかなという気はする。わかんないけど。

 SFを読まなくなった代わりに、音楽をやってる。いろんなところにライブしに行った。2013年には神戸・大阪・岡山・広島・東京・仙台・福島でライブをした。テルミンがめちゃめちゃにうまい児嶋佐織とふたりで、変拍子でサイケでプログレな音楽を演奏してる。オリジナリティは結構高いと思う。CDも作ったので、興味があったら、ぜひ聴いてみてください http://andmo.thyme.jp/CD.html で通販もしてます(試聴もできます)。ZABADAKの吉良知彦さんと小峰公子さんにも参加してもらっています。2014年もいろんなところで演奏するので、機会があったら見にきてください。癒されないプログレですけど。

 また、できるだけ頻繁に書きます。それじゃね。

(2013/12/29)


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