みだれめも・出納日記 13年6月

水鏡子


 出納日記を3時間ほど書き込んだところで、突然パソコンが再起動。書き加えた部分が全部消える。どっと疲れたのと同じことがまた起きるかもと不安になって10日近く棚晒し。遅くなりました。「みだれめも」今月もおやすみです。

〇5月の結果
支出計:366,903円。前年5月515,157円。148,254円減。
入手書籍:341冊 46,350円。累計1,360冊。前年累計918冊

 大幅減。といっても昨年はこの月冷蔵庫とエアコンを買っているので実情としては大幅増。SFセミナー、浜松旅行、同窓会とイヴェント3つ。購入書籍数300超えは初めて。

5月29日(水)〜6月30日(日)
【トピック】
 5月29日。姫路で高校同期の集まりがある。駅から歩いて30分の距離にあるブックオフが半額セールをやっていて往復する。青木祐子の本を見つけてこれで全作ゲット。集まりは学校の後輩が経営している地元で一番いい肉を使っていると評判の焼肉屋に行き、自宅と職場にワインセラーを作っている医者が持ち込んだ高いらしいワインをがぶ飲み。貧乏舌にはもったいない。2次会のスナックで終電に乗り遅れ、代行車を呼んでいた参加者に超遠回りで家まで送ってもらう大名旅行。

 6月に入る。
 『オール・クリア(2)』を頂く。『ブラックアウト』を読みだす。
 株が下がる。下がる。下がる。下がる。下がる。下がる。すごい。
 いきつけの古本屋で保存状態の悪い哲学系本とサンリオ本が大量一律100円で並ぶ。哲学本はドゥルーズ、ガタリ、デリダ、フッサール、レヴィナス、柄谷行人、山口昌男などのこわもて組。サンリオ本はディック全冊にガイドブックやクラークその他少々で持っているものばかり。哲学系はかっこつけに何冊か買ったが、サンリオ本は保存状態が悪さと帯つきとで、かなり迷って『アルファ衛星の氏族たち』と『エンパイアスター』だけ拾う。

 6月9日。例会前に半額セールをやっている大阪今福鶴見のブックオフとその近くの古本市場に行く。600円の交通費と5qの徒歩、収穫貧弱。例会に行くと、荒川ジュニアが引き継ぎを終えて正式に会社をやめたとのこと。ごくろうさま。

 6月15日。神戸大SF研の新歓コンパ。昨年は在学生5,6人のところに14人の新人が入ってなんだこれはと驚いたのだが、その大半が居残って、そこに今年の新人は20名を超えている。昨年同様遊戯王世代が大学生になったことが原因らしい。席上、3年近く療養中のOBの見舞いに行くことで話がまとまる。6月で還暦を迎えて会社の籍がなくなるのだ。しかし明日は株主総会なのだが。徹カラに参加せず帰路に着く。

 6月16日は朝から強行軍。8時過ぎに家を出て、10時から大阪でマルシェの株主総会。青木社長と会う。懇親会で只飯を食らう予定が、質疑応答が長引いて、弁当だけをもらって、懇親会は断念。タクシーを梅田まで飛ばし、1時に三宮で待ち合わせ、バスで30分の神戸市北区の療養施設に。1時間ほど滞在する。リハビリの効果はゆるやかながら回復傾向が見受けられるが、おたく的意欲は減衰したまま。見舞い組でお茶をしたあと三の宮の古本屋を回る。ロードス書房が8月末で店じまいとのこと。全店半額セールを始めていた。「少年小説体系」を1冊1050円で24冊譲ってもらう。あっという間に残り7冊。でも残りを1000円台で揃えるのは難しそう。そのあと大阪例会に。大野万紀が来る。

 6月末期限のゼンショー系列株主優待が5000円近く残っている。500円単位で片付けていては間に合わないので、1000円ずつ使用する。ココス、牛庵、ジョリーパスタ、ビッグボーイなどを歴訪する。

 コミック本の棚がとうとうあふれだす。完結済みの長期本を中心に箱詰めを検討していく中で立原あゆみの再読通読にとりかかってしまう。『本気』『仁義』『弱虫』『あばよ白書』『恋愛』『東京』『地球儀』などなど。10日潰れる。これは読んだ本に入れるべきではないだろうな。

 お土産目当ての株主総会行脚は、関西に本社がある会社に限定されるうえ開催日が集中してあまり行けない。6月22日の例会で失業中の荒川ジュニアにダブリ分を譲って、懇親会のあるイートアンドと土産が豪華と評判の王将フードに行くことにする。

 6月26日。イートアンドの懇親会はめちゃくちゃ立派。系列店で出している全商品をバイキング形式で並べて試食し、採点させるという企画。腹いっぱい食べて、土産をもらい、弁天町ORC200の古本市に。ここはHSFSが毎回相当量放出されるが、ぼくの購入基準より少し割高。300円縛りに合致した何冊かを拾う。

 翌日は京都まで王将フードに行く予定だったが寝過ごす。しかたがないので神戸のコーヒー商社、石光商事に行き、コーヒーパックを15袋もらい、ブックオフを回る。

 6月30日。例会に堺三保が来る。訪米作業に区切りをつけて当分日本にいるとのこと。

【読んだ本】43冊(内、漫24冊) 累計313冊(内、漫158冊)

 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』
 鬼気迫る秀作がひとつ。遺作となった「荒寥の地より」は自伝的要素を交えながら時間旅行者との半年間の交流をたんたんと描いた「裏たんぽぽ娘」ともいえる逸品。時間旅行者が男性で、ロマンス物の衣装をまとえないところに作家の絶望の深さを感じた。
 通して読んで感じたことは、ヤングがよく社会にコミットした生活を続けることができたものだという思い。現代日本に生まれていたら、文句なしに引き籠りだろう。
 文明批評というレベルではない。子ども時代の記憶と読んだ多くの書物とを混ぜ合わせた自分にとってのユートピア、教養的で優雅でもある古き良き幻想のアメリカを心のふるさととして、現実のアメリカ社会をまるごと拒絶していた作家であったのだと、本書を読んで初めて思った。そんな心のふるさとを象徴するのが作者にとってつごうのよいロマンス世界のヒロインたちだったのだと思う。
 彼女たちの非在性について、ヤングは相当に自覚的な作家だったことが今にしてわかる。現実的な存在としての女性に対してはむしろ嫌悪感を先行させる文章が過去にもあった。「サンタ条項」や「花崗岩の女神」の違和感は本書のなかではむしろ作風と呼べるまでに色濃くなる。伊藤さんはその原因を女子高での校務員生活に求めているけど、それよりむしろフェミニズムのへの拒絶感に起因しているように思える。彼女たちの蔓延はヤングにとっての心のふるさとの象徴である非在のヒロインを破壊する冒涜的存在だったのではないか。アメリカの現在性を意味する、商業、企業、グローバリズム的風潮への否定は「心のふるさと」のアンチテーゼとして、作風の一部として常に横たわりつつ徐々にイデアリズムとして熟成されていくのだけれど、「神風」や「スターファインダー」でみせる呪詛にも似た現実女性への拒絶は感情的で毒々しく他の要素の文明批評とは一線を画している。
 「エミリーと不滅の詩人たち」「神風」「たんぽぽ娘」「「荒寥の地より」の4作が並べられた順番も含めてベスト。順に読んで、読後感を重ね合わせることをお勧めする。

 コニー・ウィリス『ブラックアウト』、『オールクリア(1)』保留

 九月文『銀の竜騎士団(8)』★★
 九月文『鳳龍国彩華伝(1)』
 著者の別レーベルでの作品。設定は面白い。

 青木祐子『霧の街のミルカ(3)』★★
 お金持ちの家の少女の話し相手に雇われた少女が、その屋敷の隠された秘密を暴きだすミステリ仕立ての連作で、3作目も同趣向かと思っていたら、まるでちがう方向に急展開。
当初からこの流れが構想されていたようで、その意味で評価は高まった。ただラノベの頁数で3冊でまとめるには内容がありすぎ、粗造りな印象が残る。

 青木祐子『タム・グリン(1)(2)(3)』
 初期作品。妖精使いの少年と人間から妖精になった少女と、妖精になることを渇望する人間の王と魂を持つことに執着する妖精の王の物語。コンセプトは格調高いが文章技術が拙い。現在の作者の技術力ならすごい本になると思える。

 青木祐子『左ききのマイボーイ』
 夕鷺かのう『子守り魔王と姫騎士団長(1)(2)(3)』
 北方謙三『岳飛伝(5)』★★★★

 十文字青『最果ての東(1)』★★
 十文字青『灰と幻想のグリムガル(1)』★★
 十文字青、新レーベル、新シリーズの第1作。『最果ての東』は第二次大戦中のスペイン風邪がじつは吸血鬼禍であったという設定。人類再生教団の新人として主人公が派遣されたのは、人類と吸血種とが併存する最前線の街だった。
 『灰と幻想のグリムガル』はわけもわからずRPGの世界に放り込まれた落ちこぼれ組の物語。
 どちらも十文字青の作品としてはある意味オーソドックスすぎる設定。小説を作ることへの絶対的な自信が感じられる。初期設定さえきちんと作れば、いくらでもエキセントリックに面白く話を紡いでいける境地に辿りついたみたい。

 鎌池和馬『インテリヴィレッジの座敷童(3)』★★
 成田良悟『デュラララ(12)』★★
 八街歩『騎士の国の最弱英雄』

(漫)は
 弓月光、八木教広、久保帯人、曽田正人、他。
 ジャンプ系が多いかな。

【買った本・拾った本】主な本20点内

 「少年小説体系」全27冊別巻5冊資料編1冊中、24冊。各1050円
 加藤謙一『少年倶楽部時代』420円
 賀川豊彦『空中征服』(教養文庫)210円
 筒井康隆『48億の妄想』(日本SFシリーズ)300円
 『新潮社八十年図書総目録』262円
 縄田一男『捕物帳の系譜』262円
 山田風太郎『忍びの卍』(新書・報知新聞社)150円
 山田風太郎『おんな牢秘抄』(新書・双葉社)150円
 ジャック・デリダ『ポジシオン』、『雄羊』、『声と現象』各100円
 ドゥルーズ&ガタリ『アンチ・オイデプス』100円
 フッサール&デリダ『幾何学の起源』100円
 アーネスト・サトウ『一外交官の見た明治維新 上下』200円
 レヴィナス『全体性と無限 上下』200円
 ディレーニ『エンパイア・スター』100円
 コニー・ウィリス『オール・クリア(2)』頂き本
 榊一郎『スクラップド・プリンセス(2)〜(7)』各20円
 大泉貴『ランジーン×コード(1)〜(5)』各52円
 『かっぱらいたちの夜』(エロDVD)105円
 など。

【株式成績・等】6月28日まで

「報道等での連日の株のニュースで参入を考えている人もいると思うけど今はやめておくほうがいい。かなりの確率で大口機関投資家のこやしになる可能性が高い。現にぼくの場合それまで抱えていた株が儲かっているのであって、1月2月に買った株では50万円近い損を出している。
 山高ければ谷深し。新規参入を目指すなら、大暴落を待ち構え、そこから一、二週間様子見したうえで過去の安値と照らし合わせながら参加するのがベストと思う。買えなかっても儲けそこなっただけで損はしない。その際も投資資金の3分の1はナンピン等のリカバリー資金として保持しておくこと。投資資金の設定上限は死守すること。信用取引はしないこと。これに仕手化したもの、日経平均、TOPIXから距離を置き、9月権利の株主優待系を考慮した銘柄選定を進めたら、大儲けはしないかわりに大きな損はないというのが、実際ぼく自身の中期戦略だったりする。」(出納日記3月)
「こんな状態がいつまでも続くわけないと思うのだけど、ブラック・マンデー、リーマン・ショックの経験値を重ねた株をやっている連中だれもが警戒感をあらわにしている状況は、意外と冷静に見切り千両で逃げ切る客が多そうで、結果的に大暴落につながらずソフトに調整が進む気もする。いやいやたぶん最悪の選択は、まだ下げないと思い直して再参入することだろう。撤収!撤収!6月中旬までは目星をつけている2銘柄を除いて売りに徹する。」(出納日記4月)

 こういうことを書く人は、ほんとにえらいと思う。

 実際やったことはというと、持ち株ほとんど売ることができず、例年通りの下げはないのでないかと欲張り、5月権利銘柄や、短期勝負で日経平均、TOPIX銘柄に手を出し、そのまま暴落相場に突入し、手ひどい目に遭わされた。3月4月のぼくの言葉に素直に従っていたらなあとつくづく反省する。

 4月の末で240万円含み益があった。
 5月半ばに値が下がり、含み益が150万円に減った時、やめときゃいいのに値が下がったから買い場になったと勝負に出て、大量に買いを増やす。

 そして、23日の大暴落。すぐ回復と読み込んで下げた株のナンピン買いに走った結果、資金を上限いっぱい使い切る。

 24日の週末は85万円の含み損。
 1週間後の31日の週末は150万円の含み損。
 月曜6月3日の含み損は200万を大きく超してしまった。
 火曜日4日は前場でついに400万を超す含み損、後場にはなんとか値を戻し、300万の含み損に落ちついた。

 5日水曜日。前場含み損は200万円までに圧縮、やっと落ち着いたかと思いきや、安倍首相の成長戦略発表失望売りで、平均株価は500円を超す下落。含み損は再び300万円の大台に。

 6日木曜日。下げ基調はさらに拡大。年初来安値更新が200銘柄、ストップ安が80銘柄を超える。買いたい株がたくさん出てくるが資金がないので買うに買えない。含み損はついに終値で400万超え。

 7日金曜日。欧米で円が95円台の高値。それを受けて大幅下落。年初来安値更新が500銘柄、ストップ安が100銘柄超え。年初来安値更新はまだしもストップ安が毎日これだけ出るというのは初めて見た。含み損500万円を越える。

 9日月曜日。米の雇用統計が好感され、円も98円台。1日で200万の大幅回復。含み損300万円台に。その後はじり安。週末14日は再び450万円のマイナス。

 次の週には何とか300万円の負けにまで回復したものの、DENAが年初来安値を更新する下落っぷりで月末時点で350万円マイナス状態。
 売買益とのトータルがかろうじてプラスなので笑って報告できているけど、1ヶ月で勤め人時代の年収を摩った計算になる。資金を使い切っているのと購入額より安値で売れない性格なので、当分塩漬け生活が続くことになる。


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