岡本家記録(Web版)(読書日記)もご参照ください。一部blog化もされております(あまり意味ないけど)。



 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

 もはや5月ですね。今月はブックレビューです。
 なお、下記の本は現在(2009年5月3日)Amazonでは入手不可になっています。BK1他での入手をお勧めします。

Amazon『神戸70s青春古書街図』(神戸新聞総合出版センター)

野村恒彦『神戸70s青春古書街図』(神戸新聞総合出版センター)



デザイン:MASAGAKI

 著者はミステリ系のファングループ《畸人郷》の主催者で、古くからミステリのセミプロレビュアー、古書のコレクターとして知られている。本書は、その趣味の奥深さをまとめた自費出版なのだが、コレクターに普遍的な内容でもあり、そのスジでは注目の1冊なのである。160頁ほどで薄いけれど、索引も完備している。

 大都市の古書店というと、神田神保町のように特定の地域に密集しているイメージがある。ところが神戸の場合、繁華街のど真ん中に大きな古書店があったりして、少し事情が異なっている。著者の野村恒彦と個人的な接点はないが(趣味がミステリとSFでは違うし、そもそも評者はコレクターとはいえない)、年齢的に全くの同世代だ。したがって、本書で書かれた古書店の多くは、かつて評者の馴染みの店でもあった。三宮周辺の後藤、あかつき、元町商店街のこばると、黒木などを経て神戸駅に至るルートは、およそ2キロほどの典型的なコースだった。1970年代当時は新刊、重版ともミステリ/SFの種類は少なく、本を入手するためには古本屋の渉猟が必須だった。まだ農耕文化ではなく狩猟文化だったのである。

 本書の中では、どの書店でどんな本を収穫したかのエピソードに交じって、古書店主との交歓が少しだけ書かれている。ネット書店でも古書は入手できるが、誰が売ってくれたのかは不明のままだ。Amazonなどで買うと、そもそも書店がどこにあるのかさえ、送られてくるまで分からない。本を買うのに、人間とのコミュニケーションは不要かもしれない。しかし、本書のように購入時のエピソードが鮮明に記憶できるのは、やはり現実の店舗(売ってくれた店主)との結びつきがあったからともいえる。こまめにチェックリストを埋めるだけでは、コレクションの面白みも半減する。

 なお、本書でも触れられている、神戸の古本屋旗艦店、三宮センター街の後藤書店は、2008年1月に閉店している。

 

 

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