暦年英米ＳＦ解説者推移（作品名ゴシックは訳者あとがき）

水鏡子

１９４５〜１９６６　１９６７〜１９６９　１９７０〜１９７４　１９７５〜１９７７　１９７８〜１９８３　１９８４〜１９９０

（２）福島正実後期・伊藤浅倉前期

　　だいたいこのへんの時代からぼくはＳＦを読み始めたのだけど、いまこうやってリスト化してみると、たったの３年間だけどとんでもない時代だったのだなあと驚く。英米ＳＦの現在状況の紹介の軸が、福島正実から伊藤・浅倉に移行し、しかしなお「現代ＳＦ全集」を立ち上げるなど、まだＳＦ出版の枠組みでは福島正実主導の印象が強い時代ということで、福島正実退社（ＳＦＭ６９年８月号）の年と、早川ＳＦ文庫創刊の７０年との間で区切ったわけだけど、それ以外にもいろんなことが集中的に起きているではないですか。
　社会的には７０年の大阪万博や、未来学の流行のなか、小松左京を中心にＳＦが学際的に評価される流れが生まれた時期であるのだけれど、まあそのへんの話は置いといて翻訳ＳＦ出版状況に限定しよう。
　スペースオペラ、通俗冒険ＳＦを中心にした久保書店QTブックスが出現する。また角川文庫からは、創元文庫とほとんど内容の重なるＳＦ作品が刊行される。６８年には現代ＳＦ全集の刊行が始まる。新人物往来社から６９年本格怪奇幻想アンソロジーの刊行がはじまる。伊藤・浅倉主導のＮＷ紹介が本格化する。６９年には立風書房の参入もあった。　もうバラバラですな。ほとんどわけがわからない。
　こんな時期にＳＦを読み始めたのは、すごくしあわせだったなとあらためて思った。
　周辺領域の活性化も、ほとんど６６年ころからだったんですね。こわもてのする世界異端の文学（桃源社）の刊行と岩波児童文学の大攻勢、白水社の新しい文学などもほぼこの時期に重なっている。ＳＦ以外のマニアも発生しているはずだ。

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