みだれめも リストいろいろ古本散策 1

水鏡子


 不定期番外篇を発進します。
 読んだ本の感想を中心にした本篇から離れて、どんな本をなぜ買ったかというレベルで記録をしていくつもりです。読まないと書けない本篇とちがうかたちで話を続けられるかなと。ほかにも気まぐれな蔵書整理や頭の整理を兼ねたいろんなリストを作れたら、それも載っけてみようかなと。

 購入時期 2000年12月〜2001年1月

 【総評】忘年会や新年会で遠出することがあったせいもあり、相当の収穫。

  1. 『近代劇全集35 南欧篇』、『近代劇全集38 中欧篇』、『近代劇全集39 英吉利篇』(第一書房)箱入300円
     忘年会帰りの京都で入手。昭和初期の全集本。愛蘭土篇にダンセイニが入っていることで有名。
    学生時代にボロボロの愛蘭土篇を500円くらいで買った。20冊くらい平積みにされているのをみつけて慌ててチェックし、3冊買った。70年前の本なので、さすがに黄ばみはあるけれど、パラフィン紙がけの良好な保存状態で300円とは。『南欧篇』はピランデルロ、ダヌンチオなど、『中欧篇』はチャペック、モルナールなど、『英吉利篇』はバーナード・ショーだけの1巻本の分である。
  2. 『このミス 96年版』100円
     ときどき買うのがむなしくなるので、『このミス』は4年分ほど欠けている。この号は持っていなかったと思って買って帰ったら、ダブった。
  3. 『パノラマ島奇談』、『化人幻戯』、『幻影城(正・続)』、『探偵小説四十年(上)』、『探偵小説四十年(下)』(講談社江戸川乱歩全集)月報付、3冊箱入。各巻95円
     近所の「古本市場」で入手。ここの安価本は消費税込で1冊99円75銭。近所にあるもうひとつの郊外型古本屋「ブックワン」は税込105円。5円安いのだけれど、500円単位でもらえるスタンプサービスは「古本市場」の値づけだと、5冊で499円で、6冊買わないとスタンプがもらえない。トータルでどっちが得か少し悩んでいる。
  4. 『ヴィヨン詩集成』江口雄輔『久生十蘭』A・フランス『クランクビーユ』M・トゥルニエ『黄金のしずく』(白水社)、R・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』カネッティ『眩暈』(みすず)、M・バンソン『シャーロック・ホームズ百科事典』(原書房)、D・スポトー『アート・オブ・ヒッチコック』(キネマ旬報社)、B・シュリンク『朗読者』(新潮社)、A・ライス『彷徨者アズリエル』(扶桑社)、浅羽通明『天使の王国』(JIC) 各300円
     前述の「ブックワン」で、定価半額本の300円セール時に買った本。
  5. 『貧乏は正しい!』、『同 ぼくらの最終戦争』、『同 ぼくらの東京物語』、『同 ぼくらの資本論』、『流水桃花抄』 67円〜100円
     ふしぎなことにこの『貧乏は正しい』4冊は、ここ2ヶ月間で続けさまにゲットした。手にいれた場所も神戸、京都、近所とバラバラ。『東京物語』だけが文庫版であとは全部単行本。残りは『ぼくらの未来計画』だけだ。橋本治の場合、文庫で持っている本が100円単行本でみつかるとつい買い直してしまう。そういえば『窯変源氏 1〜5』(単行本)合わせて200円なんて買い物もしている。(まだひもを解いていない)
  6. 集英社世界短篇文学全集『フランス文学中世・18世紀』、『フランス文学19世紀』、『ギリシャローマ文学・南欧古典』、『南欧文学近代』、『中国文学』月報箱入りスリップ付各250円
     この全集は古今の名作ファンタジイが大量に混じっている貴重品。たとえば『フランス中世18世紀』にはヴォルテール「ミクロメガス」が、『同19世紀』にはゴーチェ、ネルヴァル、リラダン、シュオッブなどが並ぶ。『南欧近代』にはボルヘスの名前がみつかる。
     ただし定価390円で部数も相当出ているようで古書価は総じて安い。
     神戸でほぼ全巻揃って見つけたけれど、飲み会の前だったので、泣く泣く5冊に絞った。何冊か既に持っているのだけど何巻目かよくわからなかったからでもある。家に帰ると『フランス中世』がだぶっていた。
  7. 『岡本綺堂読物選集(4)異妖篇上』、『岡本綺堂読物選集(5)異妖篇下』、『岡本綺堂読物選集(7)翻訳篇上』、『岡本綺堂読物選集(8)翻訳篇下』(青蛙房)箱入 各300円
     これもたくさん並んでいるなかから4冊だけ買った。
  8. 200〜250円本 文庫版『フーコーの振り子(上)(下)』、『G・0・D』、『昴(3)』
  9. その他100円本:『血みどろ臓物ハイスクール』、『世界文学のフロンティア2 愛のかたち』、『言葉の落葉 I』、『動物たちの心の世界』、『物語治療論』、『マイン(上)(下)』、『夢やぶられて(上)(下)』、『幸福な無名時代』、『ゴルフ人生』、『近代日本の文豪 I』、『疎外される人間』、『反抗的人間』、『自由意志について』、『現代日本文学年表』、『夢先案内猫』、『オリーブの森で語り合う』、『フランケンシュタインの末裔たち』、『書剣恩仇録1』、『わたしのメルヘン散歩』、『ドーム郡ものがたり』、『戦う都市(上)(下)』

 なんだかなあ。

 ここにきて急激に目につくようになってきたのが、旧来型古本屋での保存状態のいい全集ものの分売ワゴン売り。世界文学全集や日本文学全集については以前から邪魔物扱いで投売りされていて、くせのある巻だけ拾っていたのであるけれど、最近はそこに上述のような個性的な全集や個人全集まで加わってきた。三田村鳶魚、柳田国男、折口信夫といったところも400円くらいでみつかるところまで落ちてきている。しばらく前にも三木清の全集(これは箱入ではないけれど)十数冊を一冊百円で拾ってきた。上述100円本中の『疎外される人間』、『反抗的人間』なんかも平凡社から出ていた「現代人の思想」という箱入りソフトカバーの叢書で、ルフェーブルとかメルロ=ポンティとかが入っているすぐれもの。『自由意志について』も100円の棚でみかけると買わずにいられない法政大学出版局から出た本。こういうつい買ってしまう出版社というのがいくつかある。みすずとか国書刊行会とか。出版社としては古本屋で買われてもちっともうれしくないだろうけど。もう読むことはないにちがいないと思うのだけど、高校や大学時代にちょっとあこがれたことのある立派な本が缶コーヒー一杯の値段だと思うと衝動買いを抑えきれない。逆にこれだけの本が300円で入手できるとなると、自動的に、よほどへんな本以外、上限300円という心理ブロックがありがたくも成立したのであるけれど、それでもごらんのとおり、面白そうな本がどんどんみつかる。(ここにあげた以外にも、100円コミックや新書、YAをいっぱい買っているのである)。 

 300円以上出して買ったへんな本の例:『日本探偵小説代表作集2 佐藤春夫集』(小山書店)500円 


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